表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
114/142

魔物退けし褒美

 さて登山の出発の日。新しい戦闘服を、着込み、(どれみ)の運転でレンタルの魔動車で登山口へ向かう。急いでも夕方なので、ゆっくり出発する。

「「お買い物がしたいわ!」」

愛果と愛葉がハモり、商店街で魔動車を降りた。二人は視線を合わせて悪戯っぽく笑って、何を買ったかは教えてくれなかった。


 魔動車の旅は快適で、何事もなく目的地に到着した。キャンプ場になっていて、他の登山者もテントを張っていた。姉貴は仔犬達を檻から出して適当な木に繋いだ。タカシマが何か言いたげに唸っていた。カトリーヌには通じるみたいで、

「犬のまんまでいいから、飼って欲しいって!」

「戻りたく無いならそれでいいけど、ここに放して行くわよ、大きい魔物のエサになるか、生き残って大きくなったら、有害魔獣で駆除されちゃうかもね!」

『くぅーん』

「やっぱり、人間がいいって!」

猫のエサをあげて、僕らは保存食ディナーを堪能した。

 皆んなが寝袋に潜ると、愛果と愛葉がまた戦っていた。シフォンがどっちの寝袋で寝るかが争点らしい。結局、毛布で3人で寝たようだった。今時期ならまあ大丈夫だけど、冬場とかは無理だよね?ちゃんとルール作って置かなきゃならないね。


 翌朝、清々しい空気を吸い込んで登山開始。途中、小さなピークがあり、そこまではハイキングコース。一旦荒れ放題の山道を降り、また少し登って、魔物化解除に効くと言われる滝が有る。ここまでは危険な魔物は出ていなかった。まあ、ハイキングコースに出られたら大変だから驚く事もないよね。

 滝の水を飲むと、魔物化解除に効いたり、魔力アップや回復に効くそうだ。愛果と愛葉が飲み水用に吹き出す様になった所で喉を潤す。仔犬達にも飲ませようとしたら、

「「犬のまんまの方が面倒が少ないですわ!」」

山頂アタックの帰りに飲ませることにした。犬達も同意の様で、そのまま山頂を目指した。

 急な岩場を登ること1時間。やっとなだらかな斜面になり、草木が生い茂っていた。

 ランチ休憩を挟んでから、獣道を漕いでしばらく登る。進んでいるのか迷っているのか解らない森の中を登り続けると、

「「魔物ですわ!」」

大きめのヤツが5匹。愛果と愛葉が2回素振りかと思ったら、魔力刃が飛んでいて、視界にも入っていない4匹を斬り倒した様だ。残り1匹、現れたのは猿鬼だった、猿鬼にしては小振りだけど、2メーターは有に越えるだろう。

「「黒い魔力刃を試すわ!」」

二人が東雲を黒くして振るとクロスした黒い魔力刃が猿鬼を4つに裂いた。断片は、生きているはずも無い状態にも関わらず、いつまでも苦しんでいる様子だった。東雲を虫メガネで見ると、『斬った断片が、長時間苦しみながら死に絶える』と見えた。鑑定結果を見た二人は、雷弾でトドメを刺した。

「「悪趣味ですわね。」」

不機嫌そうに東雲を鞘に収めた。報奨金の制度は日之出国では通用しないので、死骸は埋めておいた。

 その後は全く魔物に会わず、頂上付近迄登った。草木が疎らになり、大小の石で埋め尽くされた歩き難い斜面をひたすら登り続けると、岩場に変わり、洞窟を発見した。四畳半ほどの広さなんだけど、

「結界で誤魔化しているけど、まだ奥があるわ!」

愛葉が東雲を赤く光らせ、結界を破ろうとしたが、弾かれてしまった。

「だらしないわね!」

愛果もトライしたけど、結果は同じ。

「「貴女が私の魔力を盗むからいけないんですの!」」

シフォンが割って入り、

「一緒に魔力刃で斬ってみようよ!」

二人は視線を少し合わせ、プイとソッポを向いた。交渉決裂かと思ったら、並んで構え、息ピッタリに魔力刃を放った。クロスした赤い魔力刃は、結界を破り、洞窟の奥への通路が現れた。

 クネクネした坑道の様な通路を進む。魔物も居たが、二人のセンサーが捉え、視界に入った瞬間、魔力弾の餌食になる程度でスイスイ進んで大きな空間に辿り着いた。薄暗い空間を照明魔法で照らすと、半透明の塊がジワジワ寄って来ていた。スッと触手のようなモノが伸びて来て、愛葉が斬ると、斬られた先はイモムシの様に本体に這い戻る。どんどん触手が攻めて来て、斬り続けると、斬った先がある程度溜まると、小型の塊になりそこから触手が伸びる様になった。

「ウチの出番や!」

あらたが登鯉を振った。再生させず、斬り口から相手を蝕むはずだけど、デカイ本体は、何事もなかった様に、ただ登鯉が通過していた。

 外で待って居るように置いてきた筈の仔犬達が、触手に捕らわれた。触手は仔犬達を搦め、何かを探ってプイと投げ出した。

「オスには用が無さそうじゃな。」

って事は、メスにだけ用があるの?なんか、あのネバネバに捕まる事を考えたら、背筋が冷たくなった。

 氷の魔力弾を撃ち込んで、本体の動きを抑える。斬った触手が戻らない様に焼き払ったりしても、ほぼノーダメージで次々に触手が襲って来る。

「「これなら如何?」」

黒い魔力刃がクロスして飛ぶと、本体は4分割、それぞれ、今までに無い反応でプルプルと震えて触手の攻撃が収まった。

「どこかに核がある筈じゃ!」

東雲を黒くした愛果と愛葉は本体を切り刻む。

「「見つけたわ!」」

青白く光るモノを斬ると、辺りのネバネバは地面に染みて消えて行った。

空間の奥に祠が有り、櫛が置いてあった。

『魔物を退けし褒美』と書かれた紙に乗って居たので、有り難く頂いて、洞窟を出た。

 頂上を制覇して、少し降りると、日が傾いて来たので、テントを張って晩ごはん。結構キツイ登山とネバネバ戦で、かなり疲れて直ぐに眠ったみたい。朝起きると、寝袋にはカトリーヌとシフォンがいて、

「ここだと毛布じゃダメでしょ?私がどっちで寝るのか喧嘩するのが目に見えてましたから、こちらにお邪魔しましたの。」

シフォンは涼しい顔で2人を起こして、朝ごはんをねだっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ