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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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愛果と愛葉

 愛菜の放った魔力刃は黒いボスの剣を砕いて、そのまま首を落とした。魔法が使えるようになり、風香は、這って寄ってヒールを試みるけど、縦に真っ二つになったカラダがくっ付くことは無かった。皆んなの力でヒールを掛けても何も起こらない。

 会ったばかりの教皇様や、僧兵さんが亡くなった時だってかなりのショックだったのに、まさかこんな事になるなんて、泣くのも忘れてヒールを掛け続けた。愛菜がそれぞれの手に持った二振りの東雲が虹色に輝き、愛菜の手に伝わり、全身が虹色に輝いた。眩しくて目を開けていられなくなったと思ったら、ぼんやりした光になり、収まると愛菜が2人並んで寝ていた。

「愛菜、愛菜!」

シフォンは号泣しながら、2人の愛菜を揺り起こした。息を確かめると、スヤスヤ眠っているようだった。皆んなもボロボロなので、テントを張る事にした。

 心臓のドクンドクンと、呼吸は正常っぽい愛菜()だが、昏睡状態が続いていた。お薬のレシピを調べて、胃に直接流し込む流動食って言うか栄養剤を作って細い管で注入した。

 姉貴は何か工作を始めると、

「うん、これで良し!『都合の良い鎖』出してくれる?」

ポーチから鎖を出して渡すと、スルスル伸ばして、3本の鎖を作ると、狼達に首輪を付けて、鎖で木に繋いでいた。

 ずっと交代でヒールを掛け、僕の番が丁度日の出の時間だった。

「「おはよう、慈子。あの黒いボス、片付いたのかしら?」」

二人の愛菜が目を覚まし、同時に喋り出した。シフォンが愛菜()に飛びついて、号泣しながら頬擦りして愛菜()も戦いのあと、眠っていた事を悟った様で、サンドウィッチでシフォンを甘やかせていた。皆んなが起きて来るとシフォンはパッと離れて、

「面倒なヤツが2人になるなんて迷惑ですわ!」

愛菜()はお互いを見つめ、

「「私のニセモノが居ますわ!」」

見事にハモった。

「黒い魔力刃に斬られたんたけど、東雲がね、分身魔法を覚えた時の虹色に光ってそのまま、半分になった身体を包んで光ってたの。で、いつも通りにお日様と一緒に目覚めたの!」

皆んなそれぞれ、傷みのマシな戦闘服を姉貴が繕って取り敢えず着ていて、愛菜()もセーラー服とメイド服を手直しした物を着ていた。診察代わりに虫メガネで覗くと、『愛菜 Fランク』と見えた。何事も無かったように立ち上がった愛菜()だっけど、ふらつくとシフォンは猛獣サイズになってクッション代わりに愛菜()を受け止めた。何とか椅子に座らせて朝ごはん、いつも通りに食べていた。

 風香、あらた、ベルが偵察に出た。愛菜センサーは効かないので、あらたの勘を頼りに森を進んで行って、残った僕らは、魔力アップのお薬を調合した。足りない薬草は(どれみ)と姉貴が探しに行った。お薬はまだ時間が掛かるので、四季の姉さんに貰ったレシピから、体力回復に効きそうなメニューを選んで、ランチの支度をした。薬草組は直ぐに戻って早速、薬壺に投入。ヒールをかけながら偵察組を待った。

「騎竜で逃げてもうた!」

魔王復活にあたって、四天王と十二鬼将を再生させていたらしく、魔王が想定した魔力を回復していたら、部下達も本来の力で僕らを待ち受けていたんたろうね。それと愛菜を斬った漆黒剣と脱出に使った騎竜がこの島に用意していた装備らしい。魔王の証とも言える漆黒剣を折られ、護りの四天王、攻めの十二鬼将を失い、着の身着のまま騎竜で逃げたチョエンと魔王の雫は、まだ力を取り戻して居ない筈だし、復活と手駒も全て失ったと思っても良さそうだ。

「おっちゃんに報告して、日の出国に行こうよ、愛菜も診て貰いたいし、狼達も戻れるかもしれないでしょ?」

「えっ?狼、ここに放して置いたら?」

風香は聞こえる様に言うと、狼達は捨て犬の拾ってアピールを頑張っていた。


 船着き場に戻ると、執事風のオジサマが待っていた。

「高嶋家の執事でございます、当家の若様が貴女達を追って行ったのですが、お会いになって居ませんか?」

「タカシマさん!」

狼に声を掛けると1頭が『ウー』と返事をした。

「狼の魔物に噛まれて変身したみたいなんです、日之出国に連れて行って診てもらおうと思ってたんですけど、返却しますね!」

リードと渡すと、

「日之出国に行けば戻れるのですか?当家のクルーザーでお送り致します!」

上陸ボートでクルーザーに乗り込み、一旦漁港に立ち寄り、お迎えをキャンセルして、自警団の事務所からおっちゃんに連絡すると、魔族の森掃討作戦の準備中で、チョエンと魔王の雫の情報を伝えた。騎竜で逃げたなら、魔族の森に違いないと、支度に気合が入ったみたい。


 漁師さんに挨拶しに行くと、

「ああ、あのデカイ船な!」

島の様子と雫が逃げた事を報告すると、

「逃げたのは残念やけど、海の平和は取り戻してくれたんやな、ありがとな!」

集落の長もやって来て、屋敷に招待され、海の幸満載のご馳走とゆったりお風呂と、目一杯リラックス出来そうなお泊まりが用意されていた。

 翌朝、出国の手続をしに行ってクルーザーで日之出国に向かった。

「「私が愛菜で、貴女がニセモノよ!」」

ライセンスプレートをどうするかで揉めていた。

「どっちかだけ愛菜だと不公平だから、二人とも新しい名前にしたら?」

シフォンが建設的な意見をすると、

「「おままごとの時、双子の妹って設定してたわ!」」

愛果(あいか)愛葉(あいは)。どっちがどっちか揉めるのは目に見えているので、コイントスで決めると姉貴が決定していた。

 皆んなのダメージは回復していて、愛果と愛葉はEランクになっていた。ライセンスプレートを新規に発行して貰って出国の手続きをした。


 港で待つクルーザーに乗って海へ出た。執事さんの他、操縦担当のオジサン2人とコックのオジサン、コックの助手兼掃除や雑用のオバサンか2人。それと狼が3頭。ゆったり寛げる船室で優雅な船旅を楽しんだ。前回一緒じゃ無かったベルとあらたも船酔いは大丈夫だった様で、無事日之出国に到着。蛍先生の病院に近い宿をとっていたので、真っ直ぐ宿に向かった。

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