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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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南の島

 予定通り、一昨日の温泉宿に戻った。途中、商店街で風香の水着を探し、ついでに全員お気に入りを見つけた。ちょっと早めだったので、風香はプールより先に大浴場の周りを再調査して、安心して入れる様に結界を張ってくれた。


 プールでノビノビ遊んで、ご飯を食べて温泉でゆったり。一昨日と同じコテージでお喋りに花を咲かせた。

「お宝、鑑定せえへんの?」

あらたは、珍しい力があるんじゃ無いかと興味津々。

『扇子、風を起こす。』

思った通り、それだけ?(・・・・・)って判定結果にガッカリしたけど、風の規模が解らないので、室内で試すのは止めておいた。

 朝起きて、朝風呂に浸かり、ご飯を食べに行くと、ナンパのお兄さん達が再登場。それ程稼げないレベルで、罰金とか払って、ステータスプレートの再登録の費用と、それまでのブランクを考えたら、テント泊が身の丈に合っていると思うんだけど、キチンと宿に泊まっていた。僕等を見つけると、

「下請けで遣って下さい!」

「弟子にして下さい!」

「ご飯、ご一緒しましょう!」

当然全て拒否すると、土下座で頼み込まれた。それも無視して食堂に入り、ご馳走を取って奥の席を陣取って結界を張った。立入り拒否だけじゃ無く、中に居るのが解らない様にして、あきらめるのを待った。食事が済んでもお兄さん達はウロウロ探していたので、そのまま結界に隠れたままコテージに戻った。僕は、チェックアウトの手続きをしないとならなかったので、コッソリ係のお姉さんとお話し。

「船の件、漁師さんで引き受けてくれる方がいらっしゃれました、漁船ですから、乗り心地とかは、期待出来ませんけど。」

お兄さん達に聞かれると、追い掛けて来そうなので、小声で教えてくれた。朝の漁が終わったあと、島まで送って貰える事になっていた。


 漁港に行くと、お魚を積み出している最中で、どれも美味しそうだった。

「うわあ、美味しそうですね!」

「おお、味見してみっか?」

漁師のオジサンは、返事も待たずにキラキラの一匹をあっという間にお刺身にしてくれた。普段は塩焼きか、煮付けでしか食べた事のないお魚で、お刺身は始めてだった。とても美味しくて、

「朝ごはん食べたばかりだったのに、ご飯が欲しくなりました!」

「島に行きたいって、ネエちゃんってあんたらやろ?あっちに着くのが丁度昼や!昼飯にええやろ!」

オジサンは、宿のお姉さんが紹介してくれた漁師さんだった。

 積み出しが終わって、

「魔力注入して来るから、チョット待っといてや、」

魔動船の動力に使う魔石を外したので、

「それなら、アタシに任せて!」

姉貴は、魔石のケースを奪い取ると、フワッと光らせた。

「うっ!もう満タンか?」

オジサンは驚いていた。


 日之出国に行った時、まだ参加していなかったベルとあらたが船酔い大丈夫か不安だったけど、幸い二人ともヘッチャラな様子。ホッとして海の景色を楽しもうと思ったら、ショコラがまっ蒼な顔で苦しそうにしていた。

「カトリーヌに乗せて貰って、先に島に飛んだらどう?アタシも一緒に行くわ!」

カトリーヌも勧めたので姉貴とショコラは空路で島に向かった。


 少し進むと、

「こんなに近くの海じゃ滅多に出えへんけどな!」

突如現れたサメの魔物に銛を構えるオジサンは困った顔だった。船に突っ込んで来る魔物に、魔力弾を撃ち込んで衝突を回避した。

「もう一匹来ますわ!」

愛菜が指す方向から、勢い良く大波が押し寄せる。更に大きなサメの魔物だ!日光・月光を十字に構え、魔力刃を飛ばすと、上手い具合に命中して、サメは食物連鎖の頂点から、ほぼ最底辺に転落して行った。

「ネエちゃんらが追ってる『魔王の雫』っつうヤツのせいかも解らんな、船に乗って50年近いけど、こんなん初めてやなあ。」

関係無いとは思えない。チョエンと魔王の雫が島に渡った可能性は更に高まったと考えても良さそうだ。


 島の船着き場が見えた。焚き火かな?一筋の煙が立ち昇り、まだまだ届かない筈の、ご飯が炊ける匂いが漂って来た様に感じた。

 船を降りると、想像通り、ご飯が炊けていて、姉貴とショコラとカトリーヌは、ご飯支度の真っ最中だった。

「おう、魔王とドンパチするって娘やから、料理はアテにしてへんかったけど、ちゃんと出来とるやん!」

オジサンは、海産物の詰まった箱を降ろすと、お魚を捌いてくれた。ホタテはベルが開き方を教えてくれて、エビはあらたが得意だとスルスル剥いて、ゴージャスな海鮮丼が完成した。舌も胃袋も大満足、オジサンに船賃を払おうとしたら、

「雫だか何だか解らへんけど、物騒なモン、駆除依頼したら、ナンボ掛かるか頭痛あなるで、サメの駆除だけでも船賃以上や!金は無いけど、旨い魚はまだまだあるさかい、帰りも楽しみにしてや!」

更に、船着き場の側の小屋とか竈も自由に使わせてくれて、帰りはカトリーヌが知らせに行ったら、迎えに来てくれると上げ膳据え膳。お礼を言って船を見送った。

 地図を確認すると、島の反対側に人間が立ち寄らない森が在り、魔王を復活させるならそこだろうと目星を付けた。今からだと、夜中に森を彷徨う事になりそうなので、お昼食べたばかりだけど、晩ごはんの支度、五右衛門風呂の設置、テントを張って、小屋の掃除。簡易トイレもあったので、有り難く使わせ手貰う。

 夕日を眺めながらお喋りを楽しんでいると、島から少し離れた所に、大きめの船が止まった。ボートを降ろして誰かが船着き場にやって来た。

「お待ちどお様!俺達が居なくて寂しかったでしょ?」

ナンパのお兄さん達だった。僕が宿のお姉さんと漁船の話しをしているのを聞きていた別のお客さんを買収して、僕らの行き先を知った様で、パパのトレジャーボートで追ってきたらしい。船ごと沈めたい気分だけどそうも行かないので、僕等の居住スペースを結界で囲って相手にしなかった。彼等は、砂場にテントを張って保存食を齧っていたようだった。

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