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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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討伐隊の下見

 翌朝、協会に行くと、おっちゃんが防具を着けて張り切っていた。おっちゃんが信頼するAランクの魔術師3人がパーティーメンバーで、下見の仕事を請け負っていた。

「どっかに、最近現場みてる人いないかなあ。」

おっちゃんが、鼻唄交じりで寄って来た。

「さあ、出かけるぞ!」

おっちゃんは、決定事項のように僕らを連れて協会を出た。

「支部長さん!」

愛菜が声を掛けると、

「おっちゃんで、いいって!」

「では、おっちゃんさん。」

おっちゃんは、拍子抜けして更なる訂正は求めなかった。

「なんだい?短髪の嬢ちゃん。」

「愛菜です!」

「おう、アイナちゃん。」

「先日は魔法のご指導、ありがとう御座いました。あれから魔力が回復物凄く速くなったの、どんな魔法つかわれたんですの?」

「あっ、わたしも!」

風香が驚き、

「じ、自分もです。」

音も続いた。

「イヤ、何にもしてないぜ!強いて言えば魔法同盟かな?お互いに魔力を補い合ってるのかな?」

「そうかもって思ったんですけど、3人でフルに使っても、即回復するんですよ!」

「解かんねぇけど、良くなったんならいいんじゃねえか?」

おっちゃん、何か知ってるような気もするし、ホントに知らないようにも見える。結局解らないまま現場到着。

「今日は下見だからな、でも向こうから襲ってきたら、攻撃は最大の防御って言うからな、そん時はそん時な!」

昨日行った所まで進み、そこからは足跡を辿った。しばらく進んだが小鬼の気配は感じられなかった。

「休憩だな。」

おっちゃんは、焚き火に鍋を掛けてミルクを温めた。一緒に来ているAランカーは、愛菜と同じ魔力弾を得意にしている人、風香と同じ結界を操る人、剣が得意で武器に魔力を纏わすのは音と同じ分野の人だった。それぞれコツとか練習方法なんかを伝授して貰っていた。

「チー坊は、実戦で強くなるか?」

おっちゃんの視線の先には小鬼が大量に現れていた。

「ちょっと集め過ぎたかな?」

剣に魔力を漲らせると横にサッと振るった。

太刀筋が光ったかと思ったら、光った幅の小鬼達が真っ二つ。3度振って、7、8割ほど斬り倒した。

「チー坊、これ使ってみれや!」

細身の剣、ちょっと短いかな?短剣よりはかなり長いな。2振りなので、二刀流って事ね?竹刀で稽古した時は、めちゃくちゃ褒められたんだよね、真剣ではスムーズに振れる物が無かったし、下請けが派手な剣を振り回すのも分不相応なので、ずっと短剣を使っていた。襲って来る小鬼達をバタバタと斬り倒し、武器を持った、比較的知能の高そうなヤツ等は、遠巻きに様子を見るようになった。

「離れた敵を斬る気持ちを込めて振ってみれ!」

さっき、おっちゃんがやった技だよね?『気持ちを込める』ってイメージ出来ない。色々試したけど剣は光らないし、小鬼も倒れない。

「実際に斬ったイメージで振るんだ!」

相手が僕の間合いにいることを思い浮かべ、それを斬る。小鬼の首が胴体を離れるイメージを頭に描くと、20メートルは離れている小鬼の首が飛んだ。同じ要領で残りの首を落とし、最後の一匹は膝下を斬った。昨日と同様、泳がせて巣を突き止める作戦だ。

 他の3人もAランカーの指導で腕を上げた様で、小鬼の死骸がゴロゴロしていた。急いで耳と武器を回収、残りを焼却して片脚を追った。

 ケンケンの足跡は山道を登り、洞窟に消えた。洞窟を屈んで進むとすぐに大きな空間が開け、小鬼が数十匹、代わる代わる土の塊のような所で腰を振っていた。昨日のデカイ奴みたいのは居なかったので、飛び道具で数を減らし、小さいのや残ったのを直接斬って片付けた。

 巣の規模から考えると、昨日と今日で駆除した分で全部だと思うけど、まだ外出している小鬼もいるかも知れないので、耳と武器を回収しながら待ってみた。おっちゃんが他の部屋みたいな所が無いか調べていると、小鬼達が、腰を振っていた土の塊から呻き声がして、小鬼の赤ん坊が出てきた。土の塊と思っていたのは、拘束されて汚れきっている人間の女性だった。他の3つの土塊も同様で、拘束を解いても、目は虚ろで、言葉に反応はしなかった。おっちゃん達は魔法で岩を穿ってバスタブを作りお湯を張った。傷や膿だらけの肌をヒールしてお風呂に入ると、やっと人間らしい姿になった。会話が出来るようになり、事情を聞くと、1年ほど前に消息を断った騎士団のメンバーで、男性はその場で喰い殺され、女性は監禁され性欲のはけ口兼、繁殖の道具にされていたそうだ。小鬼の胎児は1か月弱で産まれるので、既に数匹か産まされていることだろう。四六時中繰り返されるレイプも、口移しで押し込まれる生肉も、苦痛が何なのか解らない位に麻痺して、何も考える事も出来ずただ生き長らえていたらしい。風呂上りに、僕らの雨具を着てもらおうとしたら、

「こんな穢れた身体でお借りする事なんて出来ません!」

「イヤ、でも、おっちゃん達、目のやり場に困るから、お願い!借りるのがイヤならあげるからさ!」

固辞する4人を風香が結界で拘束して無理矢理雨具を着せた。風香を教えていたAランカーはドクターでもあり、まだお腹にいた小鬼を処分して、なんとか説得して連れ帰る事が出来た。

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