魔王戦
魔窟の入口に着くと、教会の(多分?)偉い人とそのボディガード風の4人と、警邏隊長と部下2人の8人が待っていた。
「では行きましょう!」
20階層迄は僕等が先頭に立ってサクサク降りた。鞘と巨大な魔晶石があった20階層は、僕等が浄化したままだったので、スルーで下へ進んだ、21階層も上とセットで迷路の役になっているだけなのでここもスルー。
22階層は黒い力で、真っ暗。
「ここは我々が!」
警邏隊長が名乗りを上げて前に出た。
「落とし、、、」
『、、、穴に気を付けて!』って言い掛けたけど、間に合わなかった。
「では、私が!」
教会の偉い人は、第三副教皇と言う役職で、教会のナンバー4との事。何かお祈りをすると黒い力が徐々に薄まって来た。視界が確保出来るようになると黒い魔晶石が見つかった。大きいけど20階層のモノと比べると大した事はなく、拾って浄化した。すっかり浄化が済んだ頃、警邏隊が追い付いた。
「業務分担が必要ね!」
円さんは、警邏隊長を視線で叱って、役割と作戦を提案した。
階層が黒い力で真っ暗な時は、教会組のお祈りで浄化して、魔晶石を見つけたら僕が浄化、大きすぎる時は、耐魔バッグに収納。魔物が出たら基本、結界と飛び道具で対応、接近戦が必要な場合は警邏隊が担当。おっちゃん達は、警邏隊のサポート、師匠、弥生さん、円さんは教会組のガード。
作戦は上手く機能して、まずまず順調に35階層迄降りた。これまでに浄化し切れずに耐魔バッグでお持ち帰りの魔石は4つ。この階層になると空間がグッと広くなり、お祈りでの浄化に時間が掛かった。視界が完全じゃない中、剣を操る魔物が襲って来た。副教皇の周りの黒い力がやや薄まった所だけは何とか結界を張れたけど、少し離れると魔法も使えない。暗い空間に、黒い魔物だとなかなか厄介だ。愛菜のセンサーでは6匹いるそうだ。愛菜は結界の中から白い霧で浄化を手伝い、僕も地面を触って浄化、何とか魔法が使えるまで浄化すると、姉貴の結界で機動力を削られた魔物はおっちゃん達の餌食になっていた。おっちゃん達、師匠が1匹ずつ、音と僕で1匹、警邏隊の3人で1匹で全部やっつけた。残っていた黒い力を全て浄化すると、副教皇はフラフラしていた。
「お昼にしましょう!」
弥生さんは、お弁当を配って、副教皇にこっそりヒールを掛けていた。教会の人って、魔法は魔族の力だって考えなので、魔法で回復とかってご法度なんだよね。お祈りの最中も結界で護ってたんだけどそれはオーケーなのかな?一休みして36階層に降りた。
今度は巨大な犬?デカ過ぎて犬かどうか解らないけど、噛み付く動作は犬っぽいかな?お祈りと、僕の浄化で黒い力を薄めると、ベルは飛竜に黒い力を纏わせ槍にして犬の魔物を貫いた。致命傷にはならなかったけど、あきらかに動きが緩慢になった。猫達が元のサイズになりカトリーヌも竜に戻って戦った。大型犬の仔猫との戦いの様な感じだけど、ヒットアンドアウェイで確実に犬の力を削いで行った。スッカリ視線が下を向いた所、カトリーヌが上空から喉笛を切り裂いた。倒れた魔物は巨大な魔石を吐いて、黒い煙になった。魔石は浄化しきれるパワーじゃ無かったので耐魔バッグに仕舞った。残りの黒い力はお祈りに任せ、バッグから溢れる黒い力を浄化した。一段落して、
「こんな魔物一杯の所に、魔王を封印するって危ないかもです!」
「教会の力が1番届く、魔物が寄らないスペースだったのよ。封印されていても、魔王の力で環境が変わったみたいなのよね。」
姉貴が教えてくれた。
37階層は猛獣系の魔物が色々。黒い力は薄かったので、猛獣狩りに専念。数だけで大した事はなく、時間は掛かったけど無事クリア。
38階層には黒い力は全く無かった。魔王のせいで魔物が集まって来ている筈で、多分次の階層が最下層なのに、段々と黒い力が弱くなるってどうなんだろう?しかも魔物も大した事なかった。浄化のお祈りが要らないので、副教皇のお供の4人が聖剣を掲げて参戦。数が多いので、分担して捌いたけど、聖剣のお兄さん達は劣勢と言うか、いつ倒されてもおかしく無い。副教皇が防御術を使っているみたいだけど、あんまり効いていないみたい。急いで助けに行って、どんな強敵かと思ったら、今何匹も倒した魔物で1匹だけ。サクっと斬り倒した。副教皇は何とか立っているけどお兄さん達は、意識が無い程のダメージだった。副教皇は、聖水で部下の手当てをしたけど、立ち上がる事は出来なかった。
「ヒールしましょうか?」
風香の申し入れを、気まずい雰囲気で受け入れ、お兄さん達を回復させたけど、副教皇は痩せ我慢。魔物も片付いたので、フラフラでも大丈夫かな?
浄化し切れずに耐魔バッグに入れていた魔石も自然と浄化されていた。残りを完全に浄化して最下層に降りる。階段を降りると蜘蛛の魔物が巣を張って通せんぼ。日光で斬りつけあっさりクリア。奥に進むと祭壇の様な所に、魔王を封印してあると思われる黒い水晶玉とその両脇に日光と月光。円さんが作ったレプリカが置いてあった。消滅の手順を確認して、祭壇に近付こうとしたけど、あと少しの所で手が届かない。何が悪いのか、何かが足りないのか解らないけど、今日はあきらめて引き返す事にした。
帰り道は黒い力の影響は無く、スイスイ登った。出て来る魔物も、ややこしい攻撃とか、攻め方が解らない様なヤツはいなかった。魔石やアイテムは結構な豊作で、巨大な魔晶石とか、お土産になりそうなアイテムや、武器にセットするのに丁度良い石を残してもなかなかの上がりだった。日光と月光の鞘にセットして、武器に付いていたものもより鮮やかな石に取り替えた。虫メガネで見ると、それぞれかなりのパワーアップが出来ていた。
ご機嫌で宿に帰ると、ヨレヨレになった第三副教皇と、きっと彼より上位のおじさんが待っていた。




