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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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いい夫婦の日

 途中にある集落で一泊、その次がいよいよじいちゃんとばあちゃんを連れて来たかった温泉。長い登り坂を制覇したら、湖の大パノラマが目に飛び込んで来た。今回は、峠の茶屋も開いていた。揚げイモは、宿で特別に作ってもらったのよりも美味しく感じられた。景色と森の香りがスパイスになっているのかな?

 急な下り坂を慎重に降りて温泉街に到着。前に泊まった宿に行ってみると、丁度良い空室が有って即決。新婚さんの部屋には、客室露天風呂。他に4人部屋を3つ、風香・(どれみ)・ベル・あらたで、円さん・姉貴・愛菜・僕、あとはおっちゃん達。おっちゃん達の部屋はちょっと広くって、宴会場にしてご馳走をセットした。温泉に浸かってのんびりしていると、男湯からおっちゃんの声がした、

「おーい、チー坊!今な、女湯覗こうとしているヤツがいるんだけど、八つ裂きと縛り首どっちがいい?」

「おまかせです!」

僕が答えると、

「うわっ!」

変な声と、ドスン!バシャン!おっちゃん達の笑い声。塀をよじ登っていた覗き魔が慌てて落ちて、そのまま浴槽まで落っこちたらしい。

「未遂だし、天罰で痛そうにしてるから、放って置いていいか?」

「うん、いいよ!」

覗き魔は慌てて逃げ出したそうだ。


 おっちゃん達の部屋で宴会をしてもうすぐ花火の時間になったので、師匠と弥生さんを追い出した。折角の客室露天風呂なので、ぜひとも花火を堪能して欲しかった。

 花火が終わると、姉貴と円さんは内職だと言って部屋に帰った。明日はのんびりなんだけど、どうせ日の出で起きちゃうので、早寝する事にして宴会はお開き。テーブルをズラして、おっちゃん達の布団を敷いて部屋に帰った。

 部屋に帰ると、姉貴達はお洋服のボタンを付け替えていた。

「あら、もうお開き?」

「うん、1番の呑兵衛がリタイアしたからね!」

 お洋服は、おっちゃん達の作業服?普段支部にいるときに来ているような濃紺のズボンとジャンバーで、生地は耐魔繊維でひかりさんのデザイン。ボタンとかベルトのバックルとかを魔力補助になる素材のモノに替えて、しかもデザインでもその効率を上げているそうだ。

「おっちゃんとナベさんは作業服でいいけど、バラさんはスーツの方がいいかもです!」

「そうも思ったんだけどね、本人に聞いたらこれがいいって!」

 それならいいね。まだ作業するみたいだけど、僕らは直ぐに眠ってしまった。朝まで頑張ったみたい。

 朝起きるとハンガーラックには、作業服、事務服と何かな?枚数から行くと僕ら用の新作だよね?相変わらずスカートは短いな。上は長袖なんだね、大きな衿が可愛いかな?

「おはよっ、ちー!」

「ゴメン、起こしちゃったね。」

「いえいえ、折角の温泉なんだから、お布団よりお風呂よ!」

姉貴は円さんも起こした。愛菜はもう目覚めていて、シフォンと遊んでいたので、揃って朝湯に向かう。部屋を出ると、ほぼ同時に風香がお隣りから出て来て、皆んなで温泉を楽しんだ。

 温泉に浸かっていると、弥生さんも入って来た。

「なんだか照れ臭くってね、じいさんは、いつもより無口だし。」

「えっ?『じいさん』って呼んでらっしゃるの?」

愛菜の質問に頷く弥生さん。じいちゃん

も『ばあさん』と呼ぶそうだ。

「それ、禁止ですわね!『主水さん』でいかがかしら?」

愛菜がグイっと責め、弥生さんは真っ赤になって『無理』アピール。ベルが助け舟を出した。

「知り合いの多くは、奥方に『あなた』と呼ばれておったな、それならどうじゃ?」

赤面しながらも小さく頷いた。

 食堂に集まって朝ごはん。愛菜は師匠に『ばあさん』呼びの禁止を言い渡し、

「なんて、お呼びになるのかしら?」

「じゃあ、名前じゃな。『弥生』って呼ぼう。」


 食後、おっちゃん達の部屋で作戦会議。円さんは、古そうなノートにギッシリ書き込んだ、封印関係の資料を見てくれた。おっちゃんは、

「ちっちゃい字か勘弁してくれよ!」

10年位前から徐々に、近いモノにピントが合いにくくなって来たそうだ。ナベさんもバラさんも頷いて、

「そういえばアタシも針に糸通すのカンだけでやってたわ!あと体力はどうなの?魔王の所迄行けそう?」

魔力は加齢による衰えってほとんど無いけれど、体力は魔術師も人間なので当たり前に衰える。おっちゃん達は正直に話すと姉貴は、

「この前、ローズちゃん、黒い力にやられ時、パンツだけじゃ足りないから、ブラも欲しいって泣付いてたわよね?」

「いえいえ、シャツとか、、」

バラさんの反論は無視して、ハンガーラックから持って来た作業服を配った。

おっちゃん達は衝立の向こうで着替え、

「腰回り、足らねえぞ!」

所謂、中年太りらしい。

「仕方が無いわね!アタシの目測が間違ったみたいね。」

メジャーでウエストを測ると、

「手直ししちゃうと防御力が激減ね、中身を合わせた方がいいわ!」

ポーチから紙袋を取り出し、その中から薬包紙を数え、4つずつ配った。

「1包で約5歳分若返るわ、30台なら目もおなかも大丈夫でしょ?」

おっちゃんは、薬を飲むと、

「おう、ノート読めるぞ!ハラは変わんねえな。」

効果の現れるタイミングを説明して、普段の服に着替えてもらった。

 作戦会議を再開、現地で調達するものを確認して、もう一泊のんびりする。湖で釣りをしたりお土産屋さんを覗いた、またまた温泉に入ったりして暗くなるのを待った。ご馳走を食べて、弥生さんの発する『あなた』を聞いてドキドキが伝染したりして、花火を見上げた。

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