小鬼退治
F++になって初出勤。依頼を選ぼうとロビーをウロウロ。Dランクの依頼は小鬼退治だけだった。僕らは迷う事なくそれを選んだが、受付嬢は受理したがらない。おっちゃんが来て話を付けてくれてなんとか仕事にありついた。
「チー坊なら大丈夫だ!」
お姉さんが心配してくれたのは、相手が小鬼だって事。魔族に犯された人間の母体で育ち、母親を喰らって産まれる小鬼は、物心つくと、食欲と性欲だけで行動するようになる。だいたいが身長1メートル前後で子供サイズだけど、30センチ位の『尺鬼』から、小鬼とは言い難い2メートル級迄様々。身体能力が高く、一筋縄では倒せない。成長すると数匹で行動し武器を扱うようになったり、たまにリーダーが現れ、群れで活動する。群れが大きくなると、Aランクが連携して討伐隊を組んで対応する程になってしまう。
被害は、畑や家畜それに食料倉庫を荒らされる事と、レイプ被害。お姉さんはこれを心配してくれていた。小鬼はオスしか居ない。メスは人間の子宮では成長出来ないと考えられている。相手が居ない小鬼達の性欲は人間の女性に向けられる。小鬼ハーフは、母体を喰らわずに産まれて来て、殆どが小鬼だが、極々少数、人間の姿で産まれて来る。人間の姿の小鬼ハーフ(魔族クォーター)は、彼等だけで群れを作っているらしいが、実在しているのかさえ確かなものではない。
おっちゃんの口添えで、依頼を受けて現場に向かった。目撃情報は、人里からそう離れて居なかったので、すぐに到着。小鬼の足取りを辿った。木の実を食い散らかし、あちこちに排泄の跡があった、数匹のグループみたい。更に進むと、犬が倒れていた。
「まだ生きてる、風香、ヒール出来る?」
音が駆け寄る。
「待って!」
2人を制して、メス犬だと確かめてから首を落した。
「ち、慈子!なにするのよ!」
愛菜が叫んだ。
「もう助からないし、小鬼の子を孕んでいる可能性が高いから、安楽死させたんだ。」
小鬼の性欲は何でもアリで、動物のメスでもOK。魔獣が産まれて、暴れるか、魔族に使役される。僕も嫌な仕事だけど、おっちゃんが、自分の妹達のお腹を割かなければならなかった事を思うと余裕で我慢できた。
「万が一の時は、生き残った人が処分しようね。」
3人は神妙な顔で頷いた。
メス犬を火葬して、小鬼の追跡を再開した。5分も歩くと、火葬の煙に気付いた小鬼達が戻って来た様だ。
ノーマルサイズの小鬼が6匹。音の魔法を纏わせた短剣でサクサク5つの首を落とし、最後の1匹は片脚を膝辺りで切り落した状態で逃がした。倒した5匹の耳を報奨金の成果物として回収して、残りは他の魔物のエサにならないように焼却してから残りの1匹を追った。
ケンケンの足跡を追って行くと他の足跡に紛れて消えた。
「仲間が助けに来たとなると、かなりの群れだよね?」
皆んなに注意を促すと、周囲から藪をかき分ける音が聞こえ、武装した小鬼が十数匹、奇声を上げて攻め込んできた。風香はすぐに結界を張り、中からの飛び道具で数を減らした。ボスらしいのは、かなりの大型で、2メートル近くあり、人間の鎧を着けている。魔力耐性のある鎧らしく、愛菜の魔力弾は一切効果無く、魔力を纏わせた矢も、魔法の恩恵は無くかすり傷程度のダメージしか無さそうだった。雑魚を全て片付けた事を確かめ、風香の結界をボスを拘束するように張り直した。鎧で魔力を打ち消し、結界で完全に自由を奪うまでには行かず、動きが緩慢になる程度の効果だった。それでも、露出部を狙うには都合の良い遅さになったので、両脚の膝当ての上を斬り、四つん這いにさせた。
「愛菜、トドメ!」
剥き出しの尻から脳天を貫く魔力弾で決着がついた。
「こんな、はしたない攻撃させないで欲しいわ!」
愛菜はソッポを向いた。確かに決まり手に名前を付けるとすれば『カンチョースペシャル』って感じだもんね。
「ゴメンゴメン、防具で大きく露出してるのあそこだけだったからね!取り敢えず、後片付けしようね!」
耳と武器の内、人間が作った物を回収、剣と槍、ボスの鎧を剥ぎ取った。
巣を攻めたいところだけど、明るいうちに戻りたいので、今日の進捗報告と、戦利品の換金に協会に戻った。
鎧と武器は結構な金額になり、提出した耳の数と大きさに驚かれた。騒ぎを聞き付けたおっちゃんは、
「騎士団を襲った群れだな。討伐隊を組まなきゃならんから、チー坊達の依頼は、ここまでで達成って事になるな。」
討伐隊に志願したけど、Bランク以上が参加資格なので、叶わなかった。
「悪いな、こればっかりは上に逆らえねえんだ。」
なんとなく、手柄を横取りされた気分だったけど、
「明日は、Aランク限定でそこの下見の依頼を出すんだけど、きっと下請け探すと思うんだよな。しっかり装備して来たらいいんじゃないかな?」
おっちゃんが小声で呟いた。
文句を言っても仕方が無いので、取り敢えずお風呂。のんびり浸かって、お湯に浮かぶ風香の膨らみで目の保養をした。いつもの食堂で晩ごはんを食べて、アパートに帰った。
「明日、偵察の下請けでいいかな?」
皆んなに相談すると、二つ返事でOK。早めにベッドに入った。




