始まり
やっと土台ができました!
自称魔王に説教を続けていた女性……というよりは女の子が私に気がついて頬を染めた。
「ごめんなさい気がつかなくて! まーちゃん案内してくれたんですか? ありがとうございます! お茶でも飲んでいって下さい」
私は案内なんてしていないけど、勘違いしたまま教会の奥に案内される。
「まーちゃん、お客様くるなら先に言ってよ最近お掃除してなくて汚れてて恥ずかしいじゃない」
「私は悪くない! えらいんだぞしかもやつを連れてきたのはお手柄なのだ後で誉めるの事になるぞ」
こそこそ話しているつもりなのだろうが真後ろにいるので駄々漏れだった。
教会のような場所は内装もほぼ教会だった。
長椅子が二列で並んでおり奥には教壇のような所とその奥に玉座のような椅子ともともと白かったであろう女神様の像が子供の持っていそうな油絵の具で黒く塗り替えられている。
礼拝堂のような所を抜けると10畳ほどの白を基調にしたリビングに着く。
「すこしお座りになってお待ちください。お飲み物コーヒーと紅茶どちらがお好きですか? 」
「私ココアなのじゃ! 砂糖もいれたの! 」
丁寧に対応してくれていた女の子がまた恥ずかしそうに俯く。
「あっあのココアもありますけど……」
「じゃあ私もココアで」
甘いものは正義だ 甘ければ基本なんでもいいといっても過言ではない。
「お待たせしました、熱いので気をつけてくださいね」
自称魔王と女の子、私の三人分のココアが揃い全員が着席すると会話が始まる。
やっぱり甘いものが正義なのはこのテーブルの上で証明されている。
「まーちゃんを助けて頂きますありがとうございます。申し遅れました私ベルカと申します。よろしくお願いします」
ベルカと名乗る女の子は綺麗なロングにすこし派手なピンク色の髪と青色の瞳、緩く垂れ目で人柄の良さそうなのが見てとれる。口調はすこし大人っぽいけど年はまだ中学生位だろうか?
そしてこの子も羊のように巻かれた角が生えていて、全体的な派手なことも相まってコスプレイヤーさんのような印象で纏まりがあり、私のようなはちゃめちゃ感はない。
「助けた訳じゃないのごめんね、ここの前で魔族か?って聞かれて連れてこられて」
「なぁベルカこやつも、魔族じゃぞ! これで五人目じゃ! ほめろ」
どや顔の自称魔王の表情が絶妙にむかつく
「えっ? でも角が……」
「前髪で隠してるから、ワックスとか使って上手い感じに、めんどくさいけど」
私の自慢のぱっつんをぱっかんして角を見せつける。
「かわいらしい角で羨ましいです。私のはザ・悪魔って感じなのでまーちゃんのよりはましですけど」
「何を言う私の角が一番かっこいい! でかい! 強い! 長い! の3拍子じゃ」
「でも邪魔そうじゃない? 良くぶつけてて折れてるじゃない、昔は1メートル位あったのに今30センチくらいでしょ? 」
でかっこわっ!
「いいのじゃいずれまた延びるのじゃ」
「だからお客様の角が羨ましくて……あっ! お名前お聴きしてもいいですか? 魔族なら仲間ですしお客様って言うのも……」
「新沼 咲だよごめんね言うの遅れてよろしく」
「ふっ! ダサいのじゃ」
こんなにストレートな子供も珍しい、私はたまちゃんとか顔面爆発とか呼ばれてたから、咲って呼ばれるのめちゃくちゃ嬉しいのに……
「やめなさい! まーちゃん! 」
「安心するのじゃ、ベルカの名前はかっこいいのじゃ」
「それは前魔王がつけて頂いた名前ですから……」
「魔王? につけてもらったの? お母さんとかじゃなくて? 」
「魔族は生まれてすぐに捨てられることも多いのです、なので私や他の魔族も名前がないことが多くて……」
「そっか……ごめん」
「いえいえ! 気にしないで下さい! 私ここでの暮らし大好きですので! 」
「そっか、ならよかった。そういえばそもそも魔族ってなんなの? 私その辺良くわかってなくて」
「そうなんですか!? 珍しいです。魔族っていうのは」
「待つのじゃ! 私が先生をやるのじゃ! 」
「え? まーちゃんだと不安なんだけど」
「新沼咲! まーちゃんってよぶでない! 魔王様とよぶのだ」
「新沼咲様まーちゃんで大丈夫ですよ魔王のまーちゃんです」
「まーちゃんってホントに魔王って認識されてるんだね」
「はい、魔族の中で魔王がここを出るときに次期魔王を襲名するのです。基本は魔力の量で決まります」
「そんなんだぁ、魔力の量ってどうやってわかるの?」
「私が最強で、新沼咲が最弱じゃな」
「なっなにおう! 私だって魔法少女に憧れたんじゃい! プリティーでキュアキュアだよ! 」
「新沼咲様魔力の量は角の大きさで決まるのです……」
角の大きさ……ベルカちゃんはくるくるしてるから40センチくらいはありそうだし、まーちゃんはもともと1メートルくらい……私は2か3センチしかないけども
「まっ魔力なんかあったって何に使えるのさ」
「ふむ、魔力量にもよるが1~10個位魔法が使えるな、私は爆発魔法と火の魔法が得意じゃ! 」
「ふっ、ふ~んベルカちゃんはどんなの使えるの」
「私は服や体を綺麗にする等の日常魔法や、水魔法、加護になるのですが運がすごくよかったりします」
「かっ加護ね! 私もそっちタイプかも」
「ほほぉう、どんな加護があるのじゃ? 」
加護があるって言ってしまったものの人より恵まれているものは一つしか、思い付かなかった。
「犬とかにめっちゃなつかれる……」
「ばっはっばっはぁ~なんじゃそれぇ ぶぶぅ~いらんのじゃ~」
「フフッ新沼咲様ふっ、あの、お気になさらずまだ気がついてないだけで、他にもあるかもですし」
「そんなことない! 猫カフェ行ったりしたらヒーローだよ! マタタビより集まるし、集まりすぎて出禁くらうくらい! 」
「出禁くらうくらいならいらないのじゃ」
「くっ! そんなことないどうでもいいの! 魔族が何か聞きたかったの! 」
「ふむ、魔族とは神に何かを捧げた者が魔力を賜り人ならざる者に与えられる名称じゃ、昔はよくいたと聞くのじゃが今はほぼいないのじゃ、私は自分以外は20人ほどしか会った事ないの」
違和感がある、私は何かを神に捧げた事もなければ祈ったことも初詣くらいだ
「神に捧げたって私はなにもしてないけど」
「ならば新沼咲家族が捧げたのではないか?」
「捧げたってなにを! お母さんとか、大丈夫なの!? 」
「それはしらぬ、捧げるもので一般的なものは寿命や体の一部などかの」
両親は元気だし障害もなかったはず、それでも安心できない、不安で頭が黒くて嫌な感情で埋め尽くされる
「そう、心配するな新沼咲ほどの魔力ならそんなに捧げてはないはずだ。寿命を5年ほど捧げれば十分なはずじゃ」
5年なんてかなり大きい気がするが、すこしは安心できる、帰ったら両親を問いたださなければ
「ごめん、取り乱した続けて」
「わかった捧げた者は角と瞳に身体的な変化が起こり魔族に変わる。身体的な変化が必要なのじゃなので成人して体が完成している大人が魔族に変わるという話は聞いたことはない」
「だからベルカちゃんもまーちゃんもまだ子供なのか、ここの施設は大人の人はいないの?」
「施設ではない! 魔王軍日本支部じゃ! 」
「支部ってことは他にもあるの? 」
「しらぬ、魔族の事をあまり広めていいものじゃないと教わったのだ、魔法を研究?というものに使われると危ないらしい。だから大人の魔族は仲間を探しに旅に出るのじゃ」
「そっか、だから大人が見当たらないのね」
「うむ、だが一人だけおっさんの召し使いがおる、いるか? コタロウ! 」
「まーちゃん、いるよお帰り」
コタロウは思っていた感じとは違かったセバスチャンと呼ばれていそうな白髪老人を期待したのだが、メガネの黒髪で知的イケメン枠か勘違いストーカー枠でいそうな20歳位で私と同世代らしき男だ鋭い瞳は狩人のようで、まーちゃん達の危険を感じる。
「ベルカちゃん大丈夫なのこの人、襲われたりしない?」
コソコソ不安でベルカちゃんに確認をとってしまう。
「えぇ魔族はないのですが、小さな頃から私たちと一緒に育った人なので大丈夫ですよ」
「コソコソしないでよ聞こえてるよ、この家の前に捨てられてたのよ俺一緒に育った妹たちには何も思わないよしかも、安心して俺ホモだから」
「しかもめちゃくちゃバカじゃしの」
「しゃーないよ学校いってないし戸籍?もないらいから?まともな場所じゃ働けんしね」
なんかめちゃくちゃ気になる事を言っていた気がするけどスルーする
「するとここの支部は残りの人が大人だったり、稼いでたりするの? 」
「他のメンバー……私達の家族は双子で私たちと同世代なので稼いだりは……」
「そしたら食べ物とかどうしてるの?」
「スパチャじゃ」
「は?」
「私が一度動画を出せば下界の者がお金を投げるのじゃ」
「俺がプロデューサー! コスプレ配信者として押してんのよ。スマホ買うのは苦労したけどね」
「だからお金の心配はないのじゃ我々は、お金を貯めて魔族の復興、世界征服を企んでいる! 」
「おうよ! 」
「そうです! 頑張りましょう! 」
「は? 」
魔族の復興はわかるけど世界征服は全くわからん、もう怖い
「コジロウが魔王は世界征服をするものだと調べてくれたのじゃ、古の魔王の意識は私が継ぐのじゃ」
「えっ? ベルカちゃんも? 」
「はい! 魔族ってだけで隠れて生きるのは嫌なのです! 」
「コジロウは? 」
「ふっ! 立案者おれ! 」
まじか……私はバカだ、バカだけど学校にはいったし今この子達よりは考える力はある。
そして、まーちゃんは、初めて外に出たと話、ベルカちゃんは隠れて生きるという。
魔族は外に出ないようにしているのだと思う。
そして唯一出れる大人は男のコジロウ
女の子に対する配慮も足りないだろう。言い出せなかったが服装も絶妙にダサい気がする。
コタロウチョイスなのかな。
私が助けないと初対面の相手だけど私が魔族だと教えてくれてしかも、同じ魔族助ける理由としては十分だ
私はもう頭打ちの頭脳だけどこの子達が世間を知れば……
「私があなた達の先生になります! 」
最後まで読んで頂きありがとうございます!