第一章(3)英雄の証
間違えて消しちゃったので再投稿です。
血を流して死にかけているレクタリアを助けたのは、木材を購入しに戻ってきたナナセとエルミナだった。
ナナセ―――俺は、死にかけのレクタリアを見つける数分前、馬車で再びこの街に向かっている最中、燃え盛る森を見て駆け付けたのだ。
「す、すまない……ど、どうしてここに…?」
「はいはい、話は後にして回復するわよ」
浅い呼吸を繰り返しながらそう問うレクタリアの胸に手を翳し、回復の魔法をかける。傷が癒え、流れる血も止まって行く。
が、回復が完全に終わっていない中、俺たちを取り囲む無数の獣が血に飢えて俺たちに襲い来る。
「俺が殺る!エルミナは回復頼むぜ!」
迫りくる獣に立ちはだかり、息を吐いて構えを取る。
「ラ・フォイア!!」
詠唱に呼応して周りに火球が出現し、俺の思うままの方向に飛んでゆく。獲物に餓え走る獣にはこれを避けることはできず、正面から炎を受けて地面を転がる。その獣に続いて四方八方からレクタリアを狙う獣が突進をしてくる。
「ッ…クロ!!!」
さすがに分が悪いと感じ、腕の刻印に眠る精霊・クロを呼ぶ。声に反応して刻印が光り、光の中から相棒のクロが出現する。
クロは少し息を吐いてから辺りを見渡し、エルミナとレクタリアを見て状況を理解する。魔力を開放し、臨戦態勢に入る。
「クロ、周りの奴を一掃する。エルミナとレクタリアを頼むぞ」
「うん、わかった。」
「よし!行くぞ!」
そう言い、クロは後ろに、俺は前に出る。大きく息を吸い、獣がこちらに来るのを待つ。獣に囲まれ、俺たちを狩り、食糧とするために突っ込んでくる獣に向かい、叫ぶ。
「フォイア・リフォルム!!」
「ファイア・シールド!!」
詠唱とともに辺りは炎に包まれ、クロの魔法により治療中のエルミナとレクタリアは守られ、俺の魔法により迫る獣は焼かれ、塵となる。
すでに火に包まれていた地面は抉れ、燃える森の中、青い空が見える開けた空間が生まれていた。
「ふぅ……とりあえず傷を塞いで痛みも消しておいたけど、無理はしちゃダメよ。王都に戻ったらちゃんと治療してもらうのよ?」
立ちあがるレクタリアにエルミナはそう言い、火竜を見つめる俺の隣に立つ。
「で、あれは今倒す?」
「もちろん。ここで倒さないとな」
ここで火竜を倒せなければ、街も壊れる。人々も殺される。世界最高峰の剣士と魔法使いがいるこの場で、死して罪を償ってもらう以外あり得ない。
静かに魔力を高める俺たちの横に回復したての体で並ぶレクタリアも同じ気持ちだ。
「火竜を……ここで」
腰に収めてある剣を抜き、腰を落として戦いに挑む。俺も呼吸を整えて火竜に向き、いつでも魔法を出せるように用意する。
クロとエルミナもそれに続き、火竜との戦いに挑む。火竜もこちらを見つめ、やがて口に炎を含み始める。
「僕が前に出て斬ります。エルミナ様とナナセくん、援護を」
「わかった。危なくなったら近接代わるから、無理せずさがれよ」
「ありがとう…では、いきます」
火竜に走って近づき、腹部に狙いを絞って攻撃を始める。
「おし、行くぜ!!ラ・フォイア!!」
戦闘を開始するレクタリアに続き、俺も遠距離から魔法で攻撃を開始する。火球が火竜を襲い、頭部に直撃して爆発する。が、火竜は倒れず、レクタリアの剣撃を尻尾で防御する。
「うーん…火竜は火属性だからね…エルミナなら属性有利で戦えるけど、今回はナナセの魔法じゃ大ダメージは難しいのかも」
クロはそう言い、エルミナに視線を飛ばす。エルミナもクロの言葉を聞いて首を縦に振り、俺の前に出る。掌を前に出し、詠唱を唱える。
「アクア・キャノン!!!」
前に出した掌から水が放出され、火竜に真っ直ぐ放たれる。それを見てレクタリアは後ろに飛び下がり、火竜から距離を取る。
水の砲撃を受けた火竜は悲鳴を上げ、耐性を崩す。倒れ、地面に頭部を打ち付けてダウンし、空に向かって吠える。
「今だ!やるぞ!!」
俺がそう叫ぶと、下がっていたレクタリアも攻撃に向かう。
「ソード・オブ・ファイア!!!」
走りながら詠唱を唱え、具現化された炎の剣を左手に握りしめる。光り輝く炎の剣は走ったルートに紅い軌跡を残して光る。
「僕は首を!ナナセ君は足を切って行動を封じてくれ!!」
俺の後ろで走るレクタリアがそう言い、俺は火竜の足に向かって走る。倒れたまま俺たちに火を吐き、迎撃しようとする。が、それを俺は剣で逸らし、レクタリアは飛び上がって回避する。なんとか火竜が体制を立て直し、大きな翼を使って飛び上がろうとする。
「させるかよ!!」
瞬時に炎の太刀を振り、翼を切りつけて離陸を阻止する。離陸を阻止された火竜は落下し、地面に再び身を打ち付ける。
遅れて火竜に接近して剣を振りかぶるレクタリアは首を狙って飛び上がる。今まで数々の修羅場を潜り、たくさんの血を浴び、重い覚悟を背負い続けたその剣を今、火竜の首に振る。斬った首から血が吹き出し、火竜の体から力が抜ける。力なく倒れ、血を流して動かなくなる。
その目から光は消え、魔力も抜けてゆく。
血を被り、紅く染まった覚悟の剣を掲げ、空に向かって剣先を向ける。その剣は太陽の光によって輝き、眩い光を出す。街を救い、たくさんの人々を救った剣士は、ここで新たに強い覚悟を持つことになる。
最近ネタが出なくて困っていますが、あと少しで第1章は完結です。よければブックマーク、感想等頂けると嬉しいです(更新頻度に繋がりますw)