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死の後の  作者: よっしー
第一章
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乾燥機4

それで僕とたっちゃんが戻ったときには乾燥機の残り時間は一分で、近づいている間に表示が「cd」に変わった。僕たちは急いで乾燥機の前に行った。


「お兄ちゃん、まだ回ってるよ!」


「ああ。でも開けてもたぶん大丈夫だ」


幸運にも僕たち以外は誰もいなかったので、乾燥機の丸いふたに手をかけてそれを思いっきり開けた。すると間もなく回転が止まり、洗濯物がどさっと下に落ちたので、同時に暖かい空気が顔にふわっと当たった。外気に冷やされた顔が何とも心地良い。


「どっちから触る?」と聞くとたっちゃんは少し不安そうな顔をしたので、僕は「じゃあ」と言ってジーンズの端に触れてみると、そこそこ暖かいだけで特に熱い感じはなかった。


「あっつい?」


「ううん、大丈夫。触ってみなよ」


たっちゃんもジーンズに触れて熱くないことに気付くと、僕をまじまじ見て「本当だ!」と言った。それで次に好奇心に駆られ、僕は両手を洗濯物の中に突っ込んでみると、まるで冬の日の温泉に浸かったような感じで、つまり自然に「気持ちーっ!」と叫んでいた。


するとたっちゃんも右手を入れ、僕と同じように「気持ち―っ!」と叫んだので、しばらく二人して姉妹の下着も気にせずに洗濯物に顔を埋めたり、両手いっぱいに洗濯物をかかえたりしていた。どうやら乾燥機の楽しみが一つ増えたようだ。


乾燥機も終わり、そろそろ家に帰ることをたっちゃんに告げた。するとたっちゃんも一緒に帰ると言ったので、洗濯物の心地良さが消えないうちに家路に付いた。しかしその道中、僕はその心地良さにもかかわらずモヤモヤと落ち着かなくて、おそらくその理由はたっちゃんの普段の行動、特に家事手伝いについての行動が気になったからだと思う。


別にたっちゃんに対抗意識を燃やし、ライバルの一挙手一投足が目に付いたりするように気になったわけではなく、実際に家事という奉仕活動に関わってみて(といっても始めてまだ一日も経っていないが)、純粋に突然現れた小さな先輩の行動原理みたいなものが気になったんだと思う。


公園で読書に集中できなかったのもきっとそのせいだろう。それでも僕がたっちゃんに何も聞かなかったのは、結局たっちゃんに何を聞きたいのかはっきりしていなかったし、聞いたら聞いたでたっちゃんが考えをまとめて言葉にできるか疑問だったからだ。それで僕が色々考えながら歩いていると、十字路辺りでたっちゃんが不意に言った。


「お兄ちゃん」


「ん、何?」


「お父さんとお母さんは、乾燥機してあげたら、喜ぶかな?」


「そうだね、喜ぶかもしれないね」


するとたっちゃんは笑顔になって、「じゃあ、今度乾燥機してあげよ」と元気よく言ったので、その様子を見ただけで今日は来たかいがあったなと思った。

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