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死の後の  作者: よっしー
第一章
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乾燥機2

一方でたっちゃんは興味深々といった顔で中を見回していて、不意に「学校の体育倉庫みたい」と言った。それを聞いて、たっちゃんの小学校にはまだ昭和が漂っているんだなと勝手に想像しながら、「あれが乾燥機。あの中であっためて乾かすんだよ」と指差して言った。するとたっちゃんは乾燥機の中がクルクル回っているのに気付いたみたいで、乾燥機に駆け寄って言った。


「お兄ちゃん、回ってるよ!」


「そうだね」


「洗濯物が、回ってるの?」


「そうだよ」


「あ、反対にも回ってるよ!」


「あ、本当だ」と声を出してから思ったのだが、反対に回るのは考えてみれば当然の機能であって、何だかたっちゃんと乾燥機を楽しんでいるみたいで恥ずかしかった。


それに、「その赤いのは何?」と七セグメントタイプの赤ランプ表示を指差して言ったので、見るとそこは普通残り時間を表示する場所なのだが、そのときは十の位のところに英単語のc、一の位のところにこれまた英単語のdみたいなのが表示されているようで、何の意味か分からずしどろもどろだった。


「え、何これ?たぶん数字じゃないし、英単語のcとdに見えるけど。何だろう、全然わかんない」


「シーとディー?」


「英語のアルファベットは分かる?」


「アルファベット?」とたっちゃんの頭にはてなマークが浮かんだので、「エービーシーディー、ってやつ」とABCの歌を歌ってあげると、今度はたっちゃんが、「うん、分かるよ!エービーシーディーイーエフジー、」と乾燥機に向かって歌い始めた。


しかしブイまで来るとそこでつっかえたので、僕は流暢に「WX、Y and Z」と続きを歌ってやると、たっちゃんは「あ、そうだ、ダブユーエックス、ワイエージーだ!」と言い、一応歌の続きを思い出したようだ。


すると直後に目の前の乾燥機が回転を止めたので、僕はハッとして表示部の周囲をよく見てみると、そこには「cd…クールダウン」と書いてあり、つい「あっ!」と大きな声を出してしまった。


「たっちゃん、クールダウンだよ」


「クールダウン?」


「そう。たぶん乾燥が終わって、洗濯物を冷ましていたんだよ」などと興奮していると、後ろからおじさんに「すみません」と言われてすぐ我に返った。でもたっちゃんは意外と鋭いというか、何でも率直に聞くところがあって、そのあとすぐに「何でクールダウンするの?」と尋ねてきたので、「たぶん乾燥させてすぐだと、熱くて火傷しちゃうからじゃないかな」と言った。


しかしたっちゃんがまだ煮え切らない表情だったで、「じゃあ、あとで本当に熱いのか確認してみようか?」と言うと、たっちゃんはパッと笑顔になって快諾した。


それで次に洗濯物を乾燥機に入れようとしたとき、そういえば姉妹の下着を近くで見たり、直に触ったりするのは初めてだなと思ってちょっと罪悪感を感じた。でも部屋を出るとき二人は気にしてないようだったので、たぶん問題は無いだろう。たっちゃんも問題ないはずだ。


「さ、洗濯物を中に入れるよ」


「うん!」


たっちゃんは元気に返事をすると、洗濯カバンに手を突っ込み、手際よく洗濯物を乾燥機に入れ始めた。乾燥機は初めてのはずなのに、その手付きには迷いがないというか、洗濯物に慣れてる感じがしたので、「洗濯は家でよくするの?」と聞いてみると、たっちゃんは得意げに「洗濯は僕の当番なの」と言った。


僕は姉妹の下着を次々に放り込むたっちゃんを見つめながら、自分が小学二年生より劣っている気がして悔しくなったけれど、やっぱりたっちゃんはすごいと認めざるを得ないだろう。


桜によると三百円分乾燥機を回せば良いそうなので、たっちゃんに三百円を渡し、たっちゃんの身長でギリギリ届くコイン投入口に入れてもらった。乾燥機は百円で十分だから計三十分回ることになるので、その時間を潰すためにたっちゃんと公園に戻った。


公園は十字路の角にあり、道路に面した部分は綺麗なつつじの生け垣になっている。二か所ある入口のコインランドリー側から中に入ると、ちょうど真っすぐ視線を伸ばした先に中央の東屋があり、何組かの親子と小学生の男子グループがいたが誰も東屋を使っていなかった。たっちゃんはそれに気付くとすぐ東屋に走っていき、四人がけの机の上に荷物を置いた。たっちゃんは東屋が好きなのだ。

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