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死の後の  作者: よっしー
第一章
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掃除5

リビング南西の角はキッチン近くのコンセントから一番遠い場所で、ダイニングテーブルも迂回するのでリビング西側の壁のコンセントに差し替えないと電源コードがぎりぎり足りなかった。でも差し替えが面倒なのでダイニングテーブルをずらしてコード長を稼ごうとしていると、桜が廊下からリビングに入ってきて言った。


「また横着してる」


するといつもの癖でつい、「いや、こっちの方がたぶん楽なんだよ」と言い訳が口から出てしまったので、それを示すためにダイニングテーブルをちょっとだけ動かしたがまだ微妙に奥まで届かなくて、もう一度ダイニングテーブルを動かすと今度は中の椅子が引っかかって重くなり、それでも強引に動かしてようやく奥まで掃除機が届いたとき、やっぱりコンセントを差し替えた方が良かったなと思った。


すると桜に、「リビングのこっち側は、そっちに差しかえてやった方が良いよ」と言われたので、普段掃除をしているだけあるなと感心して「次からはそうするよ」と返した。


リビングの次は、廊下、トイレ、玄関、洗面所の順でやることになっていて、廊下とトイレにはほとんど何も置かれていないのですぐに掃除機を終えてしまった。


それで次に玄関へ移り、テラコッタ調のタイルの上を掃除機で吸い始めたのだが、玄関には自転車が余裕で一台入るスペースがあるのに傘立てしか置いてなく、それをちょっと動かして吸うだけなので玄関もすぐに終わった。


ただ玄関のその綺麗さは完全に桜のおかげなはずで、僕や美香姉ちゃんはさすがに玄関までは手が回らず靴を脱ぎっぱなしにするのだが、気付いたら下駄箱にあるので桜がしまっている以外に考えられない。


洗面所には入ってすぐ右手にバスルームへのドアが、左手の壁一面に大きな洗面台が、正面の位置には洗濯機があるので、入ると中はだいぶ狭く感じる。それに洗濯かごやゴミ箱、足ふきマットもあるので、洗面所は何だかごちゃごちゃして掃除機がかけづらかった。動かせるものは動かしてその下も吸うよう桜にきつく言われているので、狭くて物の多い洗面所は意外とやっかいな場所だ。


洗面所も終えてようやく桜の指示を完了したとき、心地良い達成感がじわじわと湧いてきた。それにリビングへ戻る途中、何だか部屋の空気が澄んでいるような気がして気持ちが良く、まあ僕の達成感がそう思わせているだけかもしれないが、掃除するのも悪くないなと思うには十分な結果だった。


それで僕はリビングへ戻り、クイックルワイパーのシートを替えている桜にそのことを伝えたのだが、桜には、「それが続けばいいけど」と言われてしまった。なかなか痛いところを突いてくる。


なので僕は「続くよ」と自分に言い聞かせるように言い、巻き取りボタンを押して掃除機のコードを巻き取ろうとすると、始めのうちはシュルルルルっと素早く巻き取れたのだが、終盤になるとシュル、シュルル、シュルと減速し、残り五十センチからは全然巻き取れなくなった。


何度かコードを出し、勢いよく巻き取らせようとしたが上手くいかず、早速掃除を続けるのが嫌になった。すると桜は、僕が苦労するまで待っていたのか少し経ってから、「コードを手で押し込みながら巻き取るの」と言ったので、それに従ったら上手く巻き取れた。


それで僕は正直に、「まぁ、桜がいれば続くかな」と言い添え、ふとテレビの方に振り返ってみると、すでに美香姉ちゃんがソファーの上で寝始めていた。

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