童話の世界をぶち壊してみようぜ!~不思議の国のアリス編~
メタ成分とキャラ崩壊が多めですのでお気を付けください。
概要は大体あらすじの通りになります、暇つぶしに鼻で笑う感覚でお読みください。
むかーしむかしのそのまた昔。
ある所に金髪で青い瞳に青いリボンに青いワンピース、白のエプロンドレスに白いニーソックスと黒い靴を履いた「アリス」という少女が居ました。
少女は顔に大きな火傷の痕を持ち体や腕に手術紺のような縫い傷があり、常に拳銃と予備マガジン、そしてウイスキーの入ったスキットルを持ち歩いていました。
常に周囲に敵意を持つようなその目つきは持ち前の可愛さを全て薙ぎ払うように色んな人を怖がらせ、一度自分にたてつこうものなら全裸にして土下座させるかぶん殴るまで許さないという始末。
そうして少女は『火傷顔』や『やさぐれ売女』と呼ばれていまし―――――。
「おいこらてめぇ」
そんなアリスはとある晴れの日―――――
「てめぇ一回呼ばれたら返事ぐらいしろやぁ!!」
え、あの……もしかして私のこと言ってます?
「あたりめぇだろうがてめぇ以外誰いんだよ!? つーかどこにいんだてめぇ、さっきから声ばっか聞こえてんだよ」
申し訳ありませんが私「ナレーター」なので姿を現すことはちょっと……
「あぁ!?」
ひぃ!?
「ちっ………まぁいいや。てめぇ今何やってんだよ」
わ、私は今、あなたの物語をナレーションしているところですが。
「あたしの物語だぁ? どんなんだよ」
それはその……教えることは出来ないものでして……
「いいから見せろっつってんだよ!!」
は、はい!! こちら台本になります!
「どれどれ……『アリスは読書をしている姉の横で退屈して寝ころんでいると人の言葉を話す白いウサギを見つけた。それを追いかけているとアリスは樹の根の洞窟へ落ちてしまう』だぁ!? それから? ………うーわめんどくさっ! あたしこれからこんなことしなきゃいけねえのか? つーか第一姉なんかいねぇぞあたし」
それは……その、作者の都合と言いますか何と言いますか………
「……これもしかしてキャラクター間違えたんじゃねえのか? 絶対これミスキャストだろあたし、なにこの駄作、作者無能じゃねえのおら出てこいや作者ぁ!!」
ちょっと! 好き勝手にしないでください! 作者だって、お風呂に入っている時に唐突に思いついただけで書いてるんですから!
「完全にその場のテンションじゃねえか!? ふざけんじゃねえぞ………なんでこんなのに巻き込まれなくちゃいけねぇんだ! はぁ………もういいや、もう本物のアリスちゃん出せよあたし帰るから」
いえ、この物語ではあなたが本物のアリスですよ? ただ単にキャラクター変更しただけで物語は本家と変わりなく進む予定ですし。
「じゃあなにか? 本家の物語をこのあたしのキャラクターのまんまやるってのか? 作者頭悪いんじゃねの?」
それ以上は作者の硝子のハートに傷が付くので止めてあげて下さい。
「ちっ………よし分かった、やってやろうじゃねぇか。物語は本筋通りなんだよな?」
えぇそうですが……いいんですか?
「あぁいいぜ? ただし条件がある」
条件?
「よしじゃあその条件を言った後の物語までスキップ!!」
あっ……ちょっと! 勝手にストーリー進行しないで―――――――。
△▼△▼△▼△
「おら白うさぎぃ! さっさとバカルディ持ってこいや!」
「た、ただいまっ~!!」
あの、アリスさん? 言われた通りお茶会の場面までストーリー飛ばしましたけど……何やってるんですか? ていうかバカルディってそれお酒ですよね? ラム酒ですよね? あなたまだ未成年じゃないですか!? お茶会なのに酒盛りなんですか!?
「ごちゃごちゃめんどくさいこと言ってんじゃねえよ、黙れ」
あっはい、すみません。
というかそろそろ本業の方に戻ってもよろしいですかね? 全然ストーリー伝わってないんですけども。
「好きにしろ」
では進めさせていただきます。
鏡の国でバカルディをラッパ飲みをしているアリスのもとへ、白うさぎが慌てた様子でやってきました。白うさぎはアリスにこう言い―――――
「うさぎ、わけ忘れてんぞ」
「すみません、ナレーター通りに進んでしまいました!」
………ごほん。
アリスのもとへ、お酒を持ってきた白うさぎが慌てた様子でこう言いました。
「大変だよアリス! 女王が……ハートの女王が、アリスを差し出せって凄い剣幕で起こりながらこっちへ来てる!」
「あ? 誰だそいつ?」
「この国の女王様で、凄いかんしゃくもちなんだ」
アリスはしぶしぶ白うさぎに連れられて酒瓶片手に外へ出ると、そこには真っ赤なドレスに身を包んだ四~五十代くらいの険しい顔をした如何にも偉そうな女性が大量のトランプ兵を引き連れていました。
「悪かったわね険しい顔して偉そうにしてて」
白うさぎやチェシャ猫たちはアリスの後ろに隠れるようにしてびくびくと怯えていました。
「やいばばあ! 要件をさっさと言って帰れ!」
「だぁれが…………だぁれがばばあですってええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
ああもうまた物語が本筋とずれていく。
「大丈夫だ、元々作者は本筋通りにやるつもりはない!」
それもそうですね、私もなんだか疲れてきました。
「じゃあもう好きにしていいか?」
どうぞお好きにしてください、私は状況描写でもやってますから。
「ちょっと! あたしを置き去りにするんじゃないよ! 小娘が、私をコケにして……ただで済むと思っているの!?」
女王は激怒した。必ず、かの傲岸不遜な小娘を懲らしめなければならないと。
女王はトランプ兵たちにアリスを捉えるように命令した、その直後、女王の足元の地面へ一発の銃弾がめり込んだ。
誰がこんなことをしたか、そんなもの聞かなくても分かるでしょう! そう、我らが人間代表のダーティーハリー小娘、アリスです。
「誰がダーティーハリ―だ」
「ちょっと!? 銃なんて聞いてないわよ!?」
「うるせぇババア、こっちはいきなりこんなとこ連れてこられて困ってんだよ。おらナレーターもういいだろ、さっさと戻せよ」
いえ、それがまだ条件を満たしていないので……
「あぁ? 条件だぁ!? てめぇんなこと一っ言も言ってなかっただろうがよお!!?」
い、いやですね……これでも一応原作通りに進んでいただかないと色々とまずいんじゃないかと……
「知ったことかぁ!!!!」
……ええい、もうこんなのどうにでもなってしまえ!
やってやりますよ! お望み通りものと世界に戻してあげましょう!
さぁいくぞ! セルフナレーション!!
ナレーターは、もうどうにでもなれという気持ちで強制的にアリスを元の世界へと戻した。後に残った白兎や女王たちには突然アリスが消えたように見え、何が起こったの変わらないという様子だった。
というか、最初っから最後まで、何が起きているのかあまり理解できていなかったのだろうが。
元の地上へと帰還したアリスは唾を吐き捨てて「あ~……だるかった~」とぼやきながらすたすたとどこかへと消え去った。
えーっと、とりあえずこの辺りで終了ですかね?
大丈夫ですよね? これからまたあの子に目を付けられたりして変なことに巻き込まれたりとかしないですよね?
……私はそんな不安を抱えながら、この散々な物語の幕を下ろそうと思います。
それでは皆様、めでたしめでた――――
「おぅいこらちょっと待てや」
で………
「で? なんだよ?」
出たああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
「てめぇこらなんだその化物が出たようなリアクションは!! 喚いてねぇでちょっと面かせ! これからリングファイトあるからお前に実況頼みてぇんだよ」
嫌ですよそんな物騒なの! こちとらやっとあなたから解放されたと思っていたのに!
「知るか! いいから来い」
だから嫌だってるじゃないですか…………えっ? 作者命令?
いやいやいやいや、手違いですよね? そんな頓珍漢なことがあってたまるものですか! ていうか作者命令って何ですか! なんで作者が短編小説の中に介入してきてるんですか! オチの終着点でも見失ったんですか!?
「おら、ごちゃごちゃ言ってねぇでさっさと来い」
ちょ、ちょっと待って、引っ張らないで、ていうかあなた一体どうやって私のこと引っ張ってるんですか!? どうやってるんですかそれ!?
さ、最後にきっちり仕事終わらせて締めますよ!
謎の力によって引っ張られるナレーター、それを当たり前のように平然と目的地までたばこの煙を漂わせながらアリスは颯爽と地上を歩いていく。
果たして、ナレーターは無事で済むのか。そしてリングファイトという名前からして物騒なものは何なのか。そして作者命令なる謎の強制力とは一体何だったのか。
その行く末は、作者のみぞ知る。
もう………嫌だ………
私のその独り言の嘆きは誰にも拾われることなく、アリスと共に薄暗い街に吹くそよ風に攫われて消えてしまった。
かくしてアリスは特にあの世界のことを気にすることもなく今まで通り自由に伸び伸びと暮らし、新たにナレーターという相棒を手に入れて自由に暮らしましたとさ。
めでたしめでたし?
いかがだったでしょうか、今回のお話は。
またいずれ、ご縁があれば他のキャラクターのお話でもお会いいたしましょう。
そしてこの後書きを読んでくれているということは、このめちゃくちゃな作品を最後まで読んでくれたということかと思います。
お読みいただき、誠にありがとうございました。