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悪夢の園  作者: 龍仁あゆん
5/12

迷走

「進む順番を変える。先頭からウチ、ノゾミ、ハルナ、スミレコ、マリの順で行く。嫌な人は居る?」

誰も反論する人は居ない。今までとさっきの一件で、これがベストだと皆思っているのだろう。

「それと、ライトは顔の高さに向けないで。鏡で反射して視界を塞いじゃうから、腰より下を照らすように心がけて」

4人が頷く。

「じゃあ、最後に一つ。怖がらせて悪いけどはっきり言うよ。スミレコもひとまず信じなくて良いから聞いて。『ミラーハウス』は確実に何か居る。この世の者じゃない何かかがね。ウチらはそれに閉じ込められた。いい? 絶対にはぐれないこと、これだけは守って」

うん、や、はい、と4人の肯定の返事が連なり、5人が1列に並んだ。

「行こう」

ヤヨイが歩き出し、ノゾミ以降も続く。

「ノゾミはこの迷路、簡単にゴールできる?」

ヤヨイが振り向かずに問う。

「えっと、この迷路ちょっと特殊で、中の構成を切り替えられる様になってて、定期的に変わるから正解の道はわかんないんだよね」

その言葉に少し落ち込むヤヨイに、でも、とノゾミが続ける。

「子供向けの迷路だから、私たちなら簡単にでられるよ。コツは何も映ってないところに行く。それだけ!」

なるほど、ヤヨイが止まった。そのままライトを腰の高さまで上げてゆっくりと360度回る。

「こっちか」

ゆっくりではあるけど、確実に続く道が分かる。あたりの鏡は5人の少女と5つの光を反射して、ヤヨイを混乱させていた。何十と人がいるように見える。でもこうして自分だけを探して周りを見れば、なんとか普通にクリアはできそうだ。

が、そんな余裕が心に芽生えた瞬間、ぎぃ、と後ろから音が聞こえた。

とっさに振り返る5人。何もない。

「今のは……なんですか?」

震えるスミレコに、マリが冷静に、しかし微かに震えながら答える。

「ミラーハウスの中で鳴ったね」

沈黙が続く。そこに、

――ぎぃ――

再度響く謎の摩擦音。

――ぎぃ……ぎぃ……ぎぃ――

徐々に近づくその音に、ハルナが限界を迎え、ライトを捨てて走り出した。

「あ、ハルナさん!」

横にあった分かれ道に入ったハルナを、スミレコが追いかける。

――ぎぃ……ぎぃ――

なおも接近してくる不快音に、ヤヨイが叫んだ。

「ああもう! ここホントやばい所だったわ! 5人で動けっつったスミレコもハルナの馬鹿追いかけてったっしょ!」

――ぎぃ……ぎぃ――

「どうするのヤヨイちゃん!」

「ノゾミ、マリ! ウチが一番後ろになるから、なんとか2人と合流する! 追いかけろ!」

「分かった!」

「う、うん!」

スミレコとハルナを追い、マリを先頭にした3人の少女が走り出す。床に残されたハルナのライトだけが、虚空を照らしていた。

――響き続ける不快な摩擦音。それから逃れるように駆ける5人の少女。地獄の足音が一歩づつ近付いてくるのを肌に感じながら、5人が足掻くその場所は、果たして一体鏡の中か、それとも外か……。

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