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学園カメレオン零/Before Chameleon   作者: ぽんきち
6/7

起源②

 残りは西宮、小島、躑躅森、そして姫路。

この四人の中で最も集団統率に優れた指揮官は誰か。

山崎は走りながら考えていた。




 捨て駒を使う作戦ということは、ある程度リスクヘッジをしつつも捨て身で挑んでくるということ、つまり完全に保守的ではないということだ。

最も確実にリスクを分散させるには、各階に均等に人員を割くこと。

今回ならば、2〜4階のうち、2.2.1と分担する。

そして最も隠れやすい場所か、または最も一階から遠い場所に多くの人員が行くようにする。

さらに一階に隣接する二階には一人以下がベスト。

ここまでは先程のゲームでわかる。

さらにここからは先程得た情報を使う。




 松川は、「予定よりも早く自分の役目が終わってしまった」という顔をしていた。

それがあの驚きに現れていたのを山崎は見逃さなかった。

そのことから、やはり今回は各が適当に散ったスタンドアローンの試合ではないことを山崎は感覚的に理解していた。徒党を組んだ集団的作戦。

型通りではない、型を捨ててきたのだ。

ならばこちらも、型を捨てる。

山崎は決心した。




 なんと山崎は3階もスキップしたのだ。

三階には物理準備室など隠れやすいスポットがたくさんあるにもかかわらず、だ。

やはりかくれんぼはこうでなくちゃ。

理性じゃない、本能を剥き出しにして己の赴くままにやるのが一番だ、と山崎は笑っていた。

高速で階段を駆け上がる山崎は、息荒くも4階にたどり着いた。

彼は今回、上から虱潰しにさる作戦を立てたのだった。



 

 「まずは美術室からだ」

美術室をのぞいてみると、膨大な量の美術品が並んでいた。

これは明らかに、普段自分達が使っている美術室の所有物の量を超えていると山崎は感じた。

西宮か...。

誰が隠れているかはわからないが、西宮の策略で美術品による物量作戦が展開されていることは自明であった。

人類の英知の一端を、金という物量でかくれんぼに使う。

なんと大人気ない、と山崎は呆れた。

それと同時に、これはブラフではないと思った。

膨大な作品をわざわざ雑多に配置するだけして、誰もいませんでしたではこの戦術を活かしきれていないからだ。

山のように置かれた高価な品々、壊せば即アウト。

自腹で弁償しなければいけない。

アウトというのは、それは社会的な死に直結するという意味だ。

これほど壁にうってつけなものはないだろう。

この部屋の中に、最低一匹は獣がいる。

山崎はそう確信した。




 おそらく、どの品が壊れたかをその場で見定めて、即勘定できる人間。

小島かお嬢様のどちらかだろう。

姫路も躑躅森もここに隠れるには身体が大きすぎるし、と山崎は筋道立てて考えた。

この部屋の人間を捕まえるのにはかなりの時間が必要だと山崎は覚悟した。

  



 それにしても、普通の学校では揃えられないような高価な品々が並んでいると感心していた。

何かの銅像、彫刻、絵画。ゴッホ、ピカソ、名前の忘れた昭和のキテレツなおじさん...。

山崎にとって、抽象画の類はどれも同じに見えてしまうので、知っている作者名を適当に並べただけでその人物の作品があるかどうかすら彼には判別がつかない。 




 その時、山崎は人型の巨大な像があるのを見つけた。

極限にまで細く彫られたそれは、禍々しい強さを体現していた。

山崎は何処かで見たことのある気がすると考えていたが、そのとき身体中から滝のように汗が噴き出した。

こ、これってオークションで歴代最高総額までいった、あの作者の作品なんじゃ...?

学のない山崎ですら知っていた、ネットサーフィンしていた時にたまたま、まとめサイトでみたのである。




 歩みを進める中、山崎はこの部屋に隠れている人間が一人に絞れた。

西宮以外あり得ない、そう確信した。

なぜなら小島達が隠れていた場合、作品に何かあったとき彼らにその弁償せきにんが取れるだろうかと考えたからである。




 美術品の山の中をかき分け、教室の奥の方まで来ただろうか。

窓の近くの備品の塔の中に、本を読んでいる少女がいるのを山崎は発見した。

「西宮みっけ」

疲れた様子で山崎は言った。

「あら、もう見つかってしまったの。残念ですわ」

西宮は何やら美術品のカタログを読んでいた。

海外のオークションにでも参加するのだろうか。

「これであと3人だ」




 「それにしても西宮、これだけの美術品よく持ってこれたな?すげー労力だったんじゃねぇか?」

呆れた声で山崎が聞く。

「全部じいやとその部下に運ばせましたわ。私、かくれんぼでは手を抜きたくないので」

入部当初は難色を示していたお姫様も、すっかりご執心のようだ。

「じゃあ俺は先に進むから、下で待ってろよ」

振り向いて右手を上げ、じゃあなの仕草をして立ち去ろうとした時、西宮が続けた。

「山崎さん、それらの美術品は全部レプリカですわ」

ドテッと倒れそうになるのを我慢して山崎は振り返った。

「はぁ〜?」

「流石に高価な美術品を全部ここに持ち込むのは無理がありますわ。例えば今ここで地震が来た時、まとめて全滅になるでしょう?」

それもそうだなと山崎も納得した。

「じゃあ今度こそ、俺は行くから」

山崎が駆け足で去ろうとしたその時。

「あっ、そういえばその人物像は本物ですわ」

ちょうど山崎がその像の真横に来た時であった。

「うわああああああ」

思わず山崎はその場に倒れこんだ。

時価総額数十億円の作品に傷でもついたら最期、末代に渡ってまで一緒奴隷として西宮家に奉仕しなければならない。

「それならそうと早く言ってくれ!」

「ふふっ」

西宮はお淑やかに微笑んだ。




 忍び足で美術室を去る山崎。

そうこうしているうちに、かなり時間を食ってしまった。

これも西宮の作戦なら、相当狡猾である。

校内のアラームは、残り時間を13分と宣言した。



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