プロローグ
いちにー、さんしー、ごーろく、しーち、はち。
7と8の間に若干の隔たりを感じさせながら、そのカウントは途絶えた。
夏の風物詩、公園でのラジオ体操だ。
国民的アニメの中でのような、まばらではあるが多くの年代の人が参加している光景などなく、ちびっこ数人が参加しているだけであった。
誰に言われるでもなく、ラジオ体操など時代遅れだという周りの冷ややかな目にも臆することなく、自発的に取り組んでいるこの数人の少年達は、きっと将来大成するであろう。
周りとは逆の道を行け、俺はそう考える。
今日は起きてからずっと体調がよくなかったが、少年達の熱心な姿を見ると少しは気分が晴れた気がした。
それにしても今日はいつになく暑い。
見つめていた蜃気楼の先から視線を上げると、真夏のどこまでも青い空に飛行機雲を見ることができた。
かくいう俺も、人とは違うことをやっている。
高校生にもなって、かくれんぼをやっているのだ。
幼稚だと思われるかもしれないが、部員はみんな真剣に取り組んでいる。
俺が初めて、心の底からやりたいと始めた部活。
俺が初めて、仲間と俺がゼロから作り上げた部活。
俺にとっての初めての、大切な居場所。
俺の---
物思いにふけりながら、視線が公園の時計台を向いたとき、思い出したかのように時間を確認する。
手元の腕時計を眺めても、それほど時間のズレはないようだ。
午前九時頃、そろそろ頃合である。
几帳面な姫路はすでに着いているであろうか、松川は今頃ドタドタと大急ぎで準備しているのだろうな。小島は登校ルートの最適化でも考えているのかもしれない、仮に西宮なら、遅刻したとしても自家用ジェットで飛んでくるのだろう。
そう考えると少し笑ってしまうが。
躑躅森だって負けちゃいない、彼は陸上部期待のエースなのだから。
神宮も円町も遅れてくる姿が想像できないな---。
結局体調が良くなることはなかったが、仲間たちのことを思い浮かべながら、ラジオ体操【自ら課した日課】も終わって家路につく少年達の後に続いて、俺は歩み出す。
学校に行くのだ、部活をしに。
今日も思いっきり楽しもう、俺の大好きなかくれんぼを。
あぁ、そういえばまだ名前を言ってなかったな。
俺たちの部活の名前を。
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