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夢の中の俺と現実の中の彼  作者: 私様
日常:伊藤 源の場合
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第一話 スタートはいつも最悪

そういえば、誰かが『人の上に人を造らず』とかなんとか言ってたっけ。

うららかな河川敷で俺はふと、そんなことを思った。

あと少しもしたら、待ち合わせの時間だったがそれでもぐちゃぐちゃな思考を続けたかった。

あの温かな太陽の日差し。布団を乾かしたら太陽の匂いがするのだろうか。

緊張のせいなのかやたらねばつく口内。

人の上に人を造らず……言ったのは、カエルがボチャンの小林一茶だったっけ………?

ああ、そんなことよりこの服蒸れるなぁ。


そんなくだらないことを考えていると、平和な河川敷に騒々しい音楽が流れ始める。

まるで、日曜朝七時に流れてそうな音楽だ。そう、具体的に言えばヒーローが登場するときに流れているアレだ。


「颯爽登場! 正義の味方! ジャスティス仮面ッ!!」


そんな検索エンジンで調べたらたくさん出てきそうな名前を叫びながら唐突にヤツは登場した。

その姿は、まさに変身ヒーロー。オレンジの全身タイツに要所には金属製の装備が付けられており、顔面はヘルメットで覆われ正体不明でミステリアス。

昭和臭たっぷりだ。


「貴様らアクダーの野望はッ! 私が打ち砕く! いくぞっ!!」


そもそもアクダーの野望ってなんだろうな?

アレか。世界征服か。そんで、税金でも下げんのか。それかCO2削減か?

まぁ、そんなことより今はジャスティス仮面だ。

まさか上司(かいじん)を初っぱなから出すわけにはいかない。何事にも順序というものがあり、お約束というのがある。

………それでも人間、危ないところに近づきたくないという心理がある。

お約束だからとはいえ、殴られたら数十メートルぶっ飛び、かかと落としで地面にめり込み、アッパーは宇宙旅行への片道切符。それが雨あられだ。

そんなとこ逝きたいか?

おっと失礼。行きたいか?

俺はやだね。絶対にノーだ。俺はノーと言える人間なのさ。

でも、上司の言語じゃ俺の『ノー』は『はい、よろこんで!』らしい。

そんなわけで俺はあの地獄へ突入する。

なぁに、所詮は握りこぶし。しっかり見極めりゃ避けられるもんなのさ。


「ジャスティスアッパーッ!」

「見切っグボアッー!!」


か、加速とか……反則だろ!

……ぁあ、空がこんなにも近い───




◆  ◆  ◆  ◆




「………」

手探りをしながらピピと規則的な電子音を出す時計を止める。

「………はぁ」

おはようございます。朝です。ベッドです。トゥデイは平日だよコンチクショウ。

平日なので、さっさとこの温もりから脱出して朝飯を食べて高校に行かなければいけない。イヤになるね。

よし、いちにのさんで出よう。

「いち……にの……さんっ!」

奇跡的にベッドからの脱出に成功する。いつもだったら二倍の時間がかかっていた。新記録だ。

「さっさと下降りよっと」

俺の朝は一枚のパンとコーヒーで始まるのだ。




「今朝はベーグルと野菜ジュースでした」

健康的だね。でも、俺の朝が始まらないんだ。でも用意されてる側だからね、しかたないね。

「気を取り直して、歯を磨こう……」

シャカシャカ。

ミント味の歯磨き粉により、口の中は爽やかになっていく。心は爽やかにならないけどな。

鏡に写っている青年は、歯ブラシをくわえながら眉をひそめていた。歯磨き粉でもつけすぎたんだろうか。

まぁ、俺だけど。つーか、辛い。

ああ、そうだ。唐突だけど、俺こと『伊藤 (げん)』という人間にはなんかよくわからない特殊能力的な何かがある。

別に手首から糸が出るわけでもないし、最近見かけなくなった電話ボックスの中に入って超人に変身するわけでもない。

『他人の夢の中に勝手に入ってしまう』という実に面倒くさい能力だ。好き勝手に出来るわけでもない。しかも配役は常に脇役。夢でもモブなのか俺は。

ちなみに、今朝の夢の内容はヒーローにボコられるザコ戦闘員役になるというものだった。無双ゲーの無双される側の気持ちがよくわかった。

それでも無双するのはやめないけどな。



なにが言いたいかというとだ、俺はちょっと変わった所があるごく普通の高校二年生だってことさ。

この程度、クラスに一人か二人ぐらいいるだろ?


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