「ぶるぅぅうぅぅううううっぇぇえぇえぇぇぇえええええぇぇ!?」
「……糞ゲーだ」
俺は第一の村、カスラでそんなことをぼやいていた。
「ま、まあまあ!最初の道で死ぬことなんてよくありますよマスター!」
「よくあってたまるか!初心者の心を最初っからへし折るとか糞ゲーにもほどがある!しかもデスペナのせいで所持金減ったじゃねえかあああぁぁぁ!」
もとよりあった所持金3000Gは3分の1程減らされ2000Gになっていた。
多分この3000Gって俺たちみたいな初心者が防具や武器をそろえるためのお金だったのだろう。
そういう配慮を道中のモンスターのレベルに回してほしかった。
「はぁ……もう仕方ない。減った分はあとで取り返せるだろう。タマ、ここの情報を教えてくれ。」
「あ、はい、マスター!えっとですね、ここではプレイヤーの種族を決められるみたいです!あのシスターさんに話しかけてみてください~!それと、ほかにも武器工房などまさに本拠地といえるくらいの設備があるみたいです!」
おお!やっとオンラインゲームっぽくなってきたな。
初めての体感型オンラインゲームということもあり、俺はワクワクしながらさっそくシスターに話しかけることにした。
すると目の前に5つの種族と思わしきアイコンがでてきた。
「えっと…左からヒューマン、エルフ、ドワーフ、ノーム、ゴーレム…」
ゴゴゴゴゴゴゴーレム!?それって種族なの!?くっ!気になる!お兄さん気になっちゃうよぉ!
いや、でもヒューマン安定じゃないかなぁ、でもゴーレム……
いやいや、テクニック重視でいくんだったらエルフだよな~、空飛べそうだし、でもゴーレムが……
ドワーフはパワー重視なのかな。もしかしたら斧とか使えるんじゃないかな…、いや、ゴーレムだって……
ノームは謎だな。もしかしたら敵にマイナス効果を付ける技とかあるのかも、うむぅ、ゴーレム……
「ゴーレムですよねー」
この間0、02秒である。
仕方ないよな。うんうん、我慢はよくない、ゴーレムゴーレム。
ゴーレムのアイコンをタッチした俺は体の変化などを探ってみたが特に変化はなかった。
タマに聞くとどうやら種族は今後上がるステータスの意向を決めていたり、その種族だけのスキルを覚えたり出来るものらしい。
つまり今はただ名前だけのゴーレムだと言う事か。……なんか残念。
あ。
「そういえばこのゲームは職業とかってないのか?剣士とか騎士とかそういうの」
「はい。このゲームは自由度を求めたゲームなので職業で縛るのはやめようという事で職業システムはありません。その代わりに武器スキルというシステムが実装されています。そうですね…たとえばこの武器触ってみてくださいっ」
タマはそういうと何もない空間から一つの短剣を召喚した。
それに触れると短剣の情報が目の前に浮かんだ。
【[錆びた短剣Lv1]、STR+1、(盗むLv1)】
よ、よえぇ……。初心者ボーナス装備とか無いのか。
俺はずっとがっかりした表情だったがタマは無視して説明をつづけた。
「[]内の文字がその装備の名前です。この武器で言う錆びた短剣Lv1ですね。武器のレベルを上げればSTRなどのステータスが上昇します。そして()の中に書いているのが武器スキルです。この()内の能力はモンスターなどの戦闘によってその能力を使うことでレベルが上がります。レベルが上がるとその能力は威力が増大したりします。盗むの場合であればレベルが高くなるごとに盗める確率が上がったりします。武器スキルはその装備を付けていないと使えませんがレベルをMAX(Lv10)にすればその武器を装備しなくても付け外しできるようになります。ただ、MAXスキル一つ一つにはコストがあるので、自分のコスト制限を超えないように配置することが重要です。」
なるほど。ここまでの事を簡単にまとめると
・種族はレベルによって上がるステータス意向を定めている
・武器のレベルを上げればその武器の強さがあがる。ちなみに防具でもそれは適応されるらしい。
・武器についている能力はLvを上げれば付け外し可能。ただしコストがかかる
とまあこんな感じか。
よし、一度自分のステータスをみてみるか。
頭でメニューバーの形を想像すると、メニューバーがでてくる。簡単でいいやね。
”田中 敦” HP120/120 種族 ゴーレム Lv1
武器 【[錆びた短剣Lv1]、STR+1、(盗むLv1)】
頭 なし
腕 なし
胴体 なし
足 なし
アクセサリー なし
CP24/24
所持G 2000G |
|最終能力値
STR 12+1,DFF 0INT 7, VIT 16, DEX 8
弱い(確信)
さっそくレベル上げに取り掛かりたいがそろそろ神が家に来るころだろう。このゲームを神と一緒にやれればいいのだが……無理だろうか。
まあ、一旦現実世界に戻るか。
「おーいタマ、現実世界に戻るぞ。そろそろ神が来そうだし。」
「了解ですマスター!じゃ、私くっついてますんでログアウトボタン押しちゃってください!」
「こうか?」
メニューにあるログアウトボタンを押すと突然浮遊感が俺を襲った。
みると俺の体が地面から浮いている。そして
「ぶるぅぅうぅぅううううっぇぇえぇえぇぇぇえええええぇぇ!?」
回る。回る回る回る回る回る回る回る回る回る。
気分はまさに「よいではないか、よいではないか」の被害者側だ。スピードは圧倒的にこっちの方が早いけど。
あ、これ駄目だ。
俺はあまりの速さに意識を手放すしかなかった。