夏休み-初日-
------------------敦の家---------------------
「はぁはぁ由紀ちゃん今日もかわいいねぜひ俺の味噌汁を「ぶん殴るぞ、っていうかなんでお前が俺ん家にいるんだよ」」
俺は自分の家、田中家に帰ってきていた。なんかおまけも。
俺には妹がいる。名前は田中 由紀。由紀と書いてユキ。
ふっつううううううの名前だが容姿はほかの子よりも2倍くらい可愛い。 決してシスコン的意見ではない。絶対に。しかしまだ幼稚園通いということもあり神という変人に目を付けられてしまった可愛そうな妹である。
絶対こいつの手には渡さん。手を出してみろ。一瞬でナクドナルドのゴミ箱行きにしてやる。15分ごとに食べ物が追加されるいい場所だぞ。
「お兄ちゃんその猫さん拾ったの?」
「ん?ああ、この雨ん中じゃかわいそうだなと思ってな、ほれ」
「な~ん」
「か、かわいいっ!もふもふしたい!湿ってるけど」
「俺は由紀ちゃんをもふもふした「ふん」ぐはぁあああ!」
神の腹に一発お見舞いした俺は髪を乾かすため子猫と一緒に風呂場へバスタオルを探しにいった。
出来るなら猫を隠しながら進みたいところだ。
スネ○ク!お前ならできる!
「えっとバスタオル……どこだ?」
「そこのかごの中に入ってない?……あれ?その猫は?」
……ミッション失敗だ大佐。
「いや、これは事情があってだな、あの豪雨の中じゃかわいそうだと思ってだな」
「なんでそんなに慌ててるの?もしかして……飼いたいとか?」
おおーっと!母さんの声のトーンが一段下がったー!これは飼ってはいけないフラグがビンビンですね。
「あ、あの、その、少し保護したいな~なんて」
「絶対にダメに決まってるわよ!……って言おうと思ったけど……。はぁ、そうねぇ、餌も散歩も猫のトイレも自分で賄うならいいわよ」
「……え?」
まじで?
「絶対にダメって言うと思ってたんだが」
「私もいうつもりだったけど……なんか小さい頃のあんたに似てるのよ。顔とか目とかがね。それとあの人も飼いたいって言ってたしね。特別、ね」
「小さい頃の俺……ねぇ」
「な~ん?」
俺の視線に「なんだ文句あるか」と言うように猫が鳴く。やっぱこいつ俺に似てないと思うんだが。
そんなこんなでバスタオルで雨をふき取り着替えた俺と子猫はリビングで妹にセクハラしている神を沈め自室へ戻りベッドに潜った。
「は~……厄日だと思ったらお前にとっては吉日だとはな、うらやましいわお前」
「な~!」
……くそ~かわいいなこいつ。うりうり。
「なっ!なあああ~」
そんな感じで猫と一緒に遊んでいると急に眠気が襲ってきた。
「雨の後ベッドに入ったのはまずかったか……ってやべっ、まだ神が……さすがにあいつも常識人だろうし……帰るよな?ってもう駄目だな……おやすみ、猫」
「ぅな~」
そのまま眠気に身を任せ意識を手放した。
---------------朝、田中家の庭---------------
神はやっぱり昨日のうちに帰っていたらしい。
俺は飯を食っているときに居なくなった猫を探しに庭に来ていた。
あ、いた。
猫は我が家の開かずの物置の近くにいた。100人乗っても大丈夫的なあれだ。
別に幽霊が封印されているとかそういうのではない。ただ鍵を無くしてずっと放置していただけのものだ。別に中に必要なものはないしな。
猫はずっとその物置を見ていた。
気になった俺はそれを物陰になぜか隠れるようにみていた。
そうしているうちに猫は物置の扉にかわいらしい肉球を置き
「な~な~、う……な~!!!!」
どごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!
とけたたましい音を立て扉をぶち破りやがりました。
……え?
「のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
思わず出てしまった俺の黄色い悲鳴に猫はビクリと体を震わせこちらに気づくと体を俺に摺り寄せてきた。
ああ、やっぱりこいつかわいいな……って。
「バカか!お前は!ばっかじゃないの!?何扉ぶち破ってんの!?……ってあれ?お前どうやってぶち破ったんだ?普通できるわけがないだろこんな事…」
「ふヵ~」
ふか~じゃねえよ何欠伸してんだ。
ともかくぶち破られた物置見てみるか。
……うん!きれいなぶち破りだな。あれだな。映画とかでよく窓の外から熱で窓を切り抜いた感じに似てる。ここまできれいにやられると惚れ惚れするな。うんうん。ってそういえば中大丈夫か?別にいるものはないがぐっちゃぐちゃとか困るぞ。
……ふむ。大丈夫そうだな。ちょっと中に入ってみようかな。こういう穴があると入りたくなるのが人間ってもんだよな。
「よいしょっと」
中々広いな。小さい頃だったらここを秘密基地にしても……うん?
「なんだここ?めちゃくちゃ光ってるんだけど」
そう。なぜか床の一部だけこれでもかというほどに光っているのだ。すのこに隠れてあまり気づかなかったが。
すのこをどかしてみると光がちょうど人が通れるくらいの面積だとわかる。
「……これ、どっかの世界につながってたりすりゃいいのにな。んでいったい何がこの光をはなってるんだ?」
気になった俺はそこにある物体を取ろうと身をかがめ
「なーん!」
頭に飛び乗ってくる猫。それに驚いた俺は猫を振り払おうとして
がくん
「えっ?」
光の中に、落ちた。