「……イエスマム」
「ガアアアアアアアアッ!」
硝煙の臭いと同時にビックベアは俺に腕を振り下してくる。
俺はそれを”ジェット”で避けようと試みるがこの速さじゃビックベアが腕を振り下ろす方が早い。
……あ、これまずいかも。
「――ナギ!あつしを」
「分かってる!”レント”」
黒フードの男はそう叫ぶと歪んでいた空間からナギさんが飛び出し聞いたことのない魔法を唱える。
すると今まさに俺を切り裂くであろうビックベアの腕は誰かに引っ張られているかのようにノロノロとした速度で降下していた。
おかげで簡単に避けられホッとため息を吐くがその瞬間、降下速度が戻りビックベアの腕が空を切る。あ、あっぶねえ……。
「うおおおおおおおおおお!!!」
同時に気合の入った声が響いた。
声が聞こえた方を見ると俺と戦った時よりも10倍ほどの速度で俺の撃った弾丸を超えんとばかりに追いかける黒フードの姿。
そのまま弾丸を追い抜いた男は空中で体をひねりながら得物を振る。
するとブオッという音と共に真空破のようなものが発生。俺が放った弾丸を軽々と切り裂いてゆく。
……えげつねえな、おい。
そう思ったのはどうやら俺だけでは無いようで神やスズ、ビックベアに小熊まで口を開けてしまっていた。
「ふぅ……」
「あ、ありがとう、ナギさん」
俺は一息ついているナギさんにお礼を言っていた。
それを聞いたナギさんは満面の、それはもう向日葵のような微笑みを浮かべながら、そして、どす黒いオーラを浮かべながら言った。
「手間かけた分のお金は頂くからね」
「……イエスマム」
俺は反射的に地面に頭をこすりつけながら服従の言葉を呟くのであった。
……やっぱ賭けごとは儲からんな。