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「あっしくんだったらいけるよ。あっはっは」

「いい買い物しましたねマスター」


 横で一緒に歩くタマがつぶやいてきた。だがその表情は何とも言えない微妙な顔だ。

 そりゃそうだ。客観的に見た俺なんて[はかまを着て銃を持っているゴーレム]だしな。この組み合わせは生涯生まれることはないだろうな。

 そんな事を思いながら俺たちはアクセサリーを探すためにバザールを見て回っていた。しかし最初のはかまの時のような幸運は無くアクセサリーを扱っている店は一向に見つからない。

 ……いや。正確にいうと”凪商店”以外すべての店が消えていた。


「ふっふっふ。さあ、おいであっしくん!」


 その中の一人のなぎさんが興奮気味に俺を招いてくる。

 それを無視し突き当りの道を右に曲がる。そこにあったのは……やはり凪商店だった。


「ふっふっふ。第1のなぎがやられても第2第3のなぎがいるんだぞあっしくん」

「やられるってなんやねん。ただ素通りしただけだ」


 そのなぎさんも振り切り道を行ったり来たりするがやはり凪商店しかない。

 だめだ。逃げ切れる気がしない。どこを見ても大勢のなぎさん以外の人は俺とタマしかいなかった。


「観念したほうがよさそうですマスター」

「そうだな……。で、何が目的なんだ、なぎさん」


 こんな初心者に分身の術まで使うんだ。何かあるに違いない。


「くっくっく。あっしくん……新しいアクセサリー入荷したんだけど買わない?」

「…………はい?」


 俺は絶対なぎさんが何かしてくると思って身構えていたがその言葉を聞き拍子抜けしてしまった。


「なんでこんな分身の術を使ってまで?」

「んーただ私が君を気に入ったからだよ。あと分身じゃなくて幻影だよこれ」


 なぎさんはそう言った後指を払う。

 すると俺と話しているなぎさん以外のなぎさんが一瞬で消滅した。

 便利だな。いつかは俺も幻影とやらを使えるようになりたいな。


「さて、アクセサリー買うかい?てか買わないとだめ。お金置いてけ」


 なぎさん!見えてる!本心みえてるー!

 なぎさんは黒い笑みを浮かべていた。

 でもまあアクセサリーか。ほしかったのは事実だし、せっかくなので見せてもらう事にしようかな。


「アクセサリーおすすめとかありますかね」

「よくぞ言ってくれたあっしくん。私のおすすめはこいつだ!」


 ばんっ! と音を立てながら商品台に何かを叩きつける。

 なぎさんっ!それ商品だから!俺買うかもしれないんだからね!?

 心配しながらなぎさんの叩きつけたものを見てみる。……うん?


「なぎさん、これ女性用なんですが……」


 そう。なぎさんが叩きつけたのはオンゲーではよくある女性専用アクセサリーの”花飾り”だった。

 いやまあ……すごいきれいだけども。


「あっしくんだったらいけるよ。あっはっは」


 なぎさんがわざとらしく笑う。

 いけてたまるか!この人絶対遊んでやがるな。

 ……ならば俺も遊んでやろうではないか!


「ください」

「ええっ!?」


 なぎさんが驚きの声を発する。

「ついにそっちに目覚めましたかマスター」というタマの呟きなんか聞こえない。聞いちゃダメ。


「で、何Gですか」

「せ、1000Gでいいよ」


 無言で財布から1000Gを取り出し叩きつける。

 ここからが本番だ。俺は出来るだけ顔をイケメンに装いなぎさんに言う。


「よかったらなぎさん着けてみませんか?着けてあげますよ」


 BLゲーの登場人物のような声が完璧に決まった。

 俺のイケメンボイスを受けたなぎさんは


「いやー着けてもらえるのはやってほしかったけど在庫7個あるからねえ」


 ひきつった笑顔でそう返してきた。

 ……撃沈。やはり俺には主人公のような配慮は出来なさそうだ。

 俺はいつもの顔に戻しこの花飾りどうしようかと悩んだ。……そうだ。


「おーいタマ来てくれ」

「なんですかなんですか?」


 タマが甘えボイスで近寄ってくる。


「ほれ、花飾りつけてやるからじっとしとけ……ほい、完了」

「あ、ありがとうございます!に、似合ってますか?」


 タマは自分の姿を見せるようにくるくる回る。


「似合ってるよ。すごい可愛い。」


 これは素直な感想だった。猫耳だけの時もかわいかったが花飾りをつけたタマは妹に匹敵するくらいのかわいさだった。


「えっへっへっへぇ」


 にへらぁっとした顔のままタマが回る。回る回る。おい、それ以上回るとログアウトしそうだからやめなさい。


「ほんと、女の子の扱いうまいねえ。今度は私にもそういうのを頑張ってくれないかな?」


 にやにやしながらなぎさんが言う。無理です。童貞16年。女性経験なんて保育園の職業体験くらいしかありません。

 そう思っているとチャットログが開く。どうやら神からのようだ。


『あっし、装備大体買ったぜー。鈴音もいるし町のリスポン地点で待っとけばおk?』

『おk。俺もすぐ向かう』

「んじゃなぎさん、友達待ってるんで行ってきます」

「うん、行ってらっしゃい。頑張ってね」


 なぎさんとの別れを軽くすましピョンピョンするタマと一緒にリスポン地点へ向かうのだった。

 あいつらはどんな装備を買ったんだろう。そう思うとわくわくして自然と足が早足になっていた。


 ”田中 敦” HP260/260 種族 ゴーレム Lv14

武器 【[最古の小銃Lv4]、STR+13 DEX+6(DEXブーストLv4)】       

頭 なし

腕 なし

胴体 【風来のはかまLv1、DFF+32 VIT+8(虫の知らせLv1)】

足 なし

アクセサリー なし

CP24/24                     

所持金 2150G

最終能力値

STR 24+13,DFF+32、INT 6, VIT 32+8, DEX 12+6

PET タマ(ねこ)【[花飾り]、?、(?)】

ステータス何か変だなと思ったらコピーしたところ間違ってました。訂正しました。

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小説家になろう 勝手にランキング ←押してくれるとうれしいのです by水戸 感想とかくれたらうれしいな~。
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