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永遠になれない僕たちは、  作者: 栗しんや
第一章『そして、彼らは駆け出すように。』
6/13

 次の話のストックが出来たので、更新しました。


 日本サーバーでも三万人くらいいるんだから、こういうヤツだって居そうじゃないか! という感じに若干開き直りつつ書きました。


 では、本編をどうぞ。

 なぜ、輝夫が僕ら〈冒険者〉が死んでも生き返ることを知った経緯について教えてくれたが、僕の不安だとか緊張だとかがぶっ飛ぶような何とも間抜けな話だった。

 ナナのいる部屋を目指して歩き出しながら、僕は輝夫との念話内容を思い出す。ほんの少し前のことを思い出して笑う。

 はたから見ると不気味というかニヤニヤして気持ち悪い絵面だと思うけど、笑えてしまうのだから仕方がない。

 しかしまぁ、輝夫が無事でやっぱり良かった。

 ――無事で良かったと思えるから、今の僕は思い出しながら笑うことができるんだ。


 ほんの少し前のことを思い出してみる。

 あれは、輝夫の言葉に一安心しすぎて、尻餅をついた時のことだ。あの後、冷静に首を横に振って「落ち着け」と自己暗示しながら、改めてその話を聞いた。

「死んでも生き返るのか?」

「そうらしい」

「マジで?」

「不思議なことにマジだった」

 それだけの会話で、胸の中でモヤモヤとしていた不安の大半が、雑巾で拭かれたように消し飛んでいった。

 胸の中が穏やかなものに満たされる。気持ちが楽になっていく。安心して深く息を吐いた。

 なんだか、ホッとした気分だ。

 死んでも生き返る? 〈エルダー・テイル〉と同じだ。でも、どうして、〈冒険者〉が死んでも生き返るってことを知っているんだろう?

「……ソースは?」

 その安心を確かなものにしたくて問いかける。

「……俺の目の前で、自殺してみせたんだよあいつら。ヒャッハーって言いながら、飛び降り自殺しやがった」

 ……予想外の言葉に、なんだかおかしな気分になってきた。アレだ。麻薬でラリってるような感じなのかもしれない。僕は麻薬吸ったことないけど。

「それ、本当?」

 ちょっとだけ聞き間違いであってほしいと思う僕がいた。

「残念ながら本当だ」

 そして、ちょっと残念なことに事実だったらしい。

 僕が言うのもなんだけれど、彼らは頭がおかしいんじゃないだろうか。現実逃避でこの有り様だ。頭の捻子が百本ほど間違ったところに入っているとしか思えない。

「んで、そいつがどうなったかって言うと――」

「――〈大神殿〉で蘇った、と」

「そういうわけだ」

〈大神殿〉は、生死がシステムとして存在するゲームには付き物の復活ポイントだ。死んだら、経験値やアイテムを失って復活する。そういう場所だ。

 ――人体の再構築云々とかが物理法則ではどうなってるのか、色んな意味で気になると言えば気になるけど、気にしたら負けな気がする。

 ともかく、彼らは一度死んで生き返った。つまりは輝夫が殺されても消滅せずに生き返ることを指している。その事実に安堵した。

 ……いや、いやいやいや。経験値やアイテムを失って生き返るだけ? 本当にそれだけで済むのか?

 ゲームだった頃に比べて、色々と増えすぎたこの世界だ。見えないところに罠というか、落とし穴が隠れていそうな気がする。まさか、死んだ〈冒険者〉に例外なく臨死体験が訪れ、以降変な宗教にハマりだすとか、そんなことは起きないよな。そう思いたい。

「……しかしまぁ、そんなに頭がおかしい光景だったのか」

「あぁ、酷かったよ。俺がハッキリこの目で見た。――あいつらは、悪い意味で頭がおかしいんだ」

 吐き捨てるように輝夫が呟く。哀れんだり憎んだりしたところで、頭のおかしいヤツラは直らないんだ。そんなのとっくにわかっている。

 けれども、そんな頭のおかしいヤツラでも、持ってる力は本物だ。人を傷付けれる、人を陵辱できる、人を殺せる。ある意味、不条理で平等の元に生まれたロクでもない存在だ。

「俺は、そいつらと戦わないと駄目なんだ」

「テルオ――」

 そんなヤツラに、輝夫は。

「――俺は、足掻かないといけないんだよ」

 輝夫は、頭のおかしいヤツラと戦うって決めてしまったんだ。僕にしたように。僕を見殺しにしなかったのと同じように。

「シンイチ――しばらく俺のこと、信じてくれ」

 だから、僕はテルオのことを信じた。信じるしかなかった。テルオのそう言うところに救われたことがあるから、それを僕のエゴで邪魔したくなかった。

 僕の『寂しいから』ってエゴで、テルオのエゴを曲げさせたくなかった。

「――信じるさ、テルオ」

「俺も、お前が上手く過ごすことを信じているよ。シンイチ」

 テルオが、僕のことを信じている。今の僕が強いと信じているから、そう言ってくれる。輝夫と麟太郎がこれまで見てきた僕を信じてくれている。

 ――今の僕は、そんなに強くはないかもしれないけど。

「できれば一度も死ぬなよ、テルオ」

「そっちこそな、シンイチ」

 少なくとも、一度も死ぬことなく再会してみせると思える程度には、僕の中に強さが残っているのかもしれなかった。


「……出会い系には気をつけろよ、シンイチ」

「ちげーよっ!!」

「……えっ、出会い系以外でなんかあったのか、お前」

「ノーコメントでっ!」

 最後には、からかったりからかわれたりしながら、僕らは念話を切った。

 輝夫は、目の前の地雷原に足を踏み入れに行った。

 僕は、ナナの元に向かっている。

 正直、彼女の元に行ったところで何がどうなるかはわからない。何をすればいいのか、何をしていいのかもよくわからないままで、彼女に会ったところでハッキリとわかることでもない。

 でも、何もしないよりはマシだ。

 ナナに会ってから、考えることにしよう。僕が何をしたいのか、何が出来るのか、何をすればいいのか。きっと、二人でならすぐに浮かんでくると思う。

 だから、行くんだ。

 僕は、歩みを少しずつ早くする。歩いていたのから、早歩きへ。けれども、それさえもどかしくなって、いてもたってもいられなくなってきて――駆け出し始めた。

 ――今すぐにでも、ナナに会いたかったんだ。


 そうして、ナナの元に辿り着くと――。

「……うへへっ、幼女だ幼女。生だぜ生。ほらほら、お金払っただろ? だから、さ。ほらっ、そろそろ、お兄ちゃんと良いこと……」

「おい、どこのどいつか知らないけど、止めろよ。イエスロリータノータッチだろうが」

「知るかよ、どうせ法なんて無いんだ。好き放題やるっきゃないだろ。というわけで、どうだいナナちゃん? お兄ちゃんと気持ち良いことしないかい? 金なら出すからさ」

「だから、止めろよ。というか、それならもっとボインボインなお姉さんをナンパすれば良いじゃないか」

「俺は巨乳が嫌いなの!」

「……あぁ、そう。……ほらほら、そこのお兄ちゃんとじゃなくて、僕の元に来ないかい。優しくするよ」

「あっ、オイコラ。この不審者デブ! ゴチャゴチャうるせーこと言いやがって! 大体なんで、初対面なヤツにガタガタ言ってるんだテメーは! あと、テメ―も、俺のこと言えねーだろうが!」

「あんっ? ふざけてるのはどっちだって? いたいけな少女に絡んでたヤツはどこのどいつだ! それに僕はデブじゃねーよ! 見りゃわかるだろ! 細身なエルフだよ! ったく、これだからDQNは……」

「んだと、このロリコン!」

「お前こそ、このDQNが!」

 ……なんだか、道のど真ん中で面倒そうなヤツラが湧いていた。客観的に見ると、頭悪そうというか、可哀想な人たちだった。

 そこには、ナナもいて、そのナナを巡って二人の男が何だかんだで言い争っている感じだ。

 ナナの足元には、金を恵んでもらうための帽子が置いてあって、その中にはこんもりとお金が入っている。うん、なんとなく察したよ。

 ナナは、二人へと視線を揺らしながらオロオロとしている。どうしたものかと困っている感じだ。

 やれやれと思いつつ、手を振ってみる。

「――シンイチ……さん!」

 そうして、パッと顔を上げて、僕の姿を確認するといきなり走ってきた。こっちに向かってくる。気が付いてくれたし、名前も覚えてくれてたみたいだ。嬉しいなぁ。

 それにしても、商売道具の帽子まで放置して、僕の元に駆け寄ってくるなんて……ってアレ、なんだかスピードが上がってるような、両手を広げているような、あれ、あれれれれ。

「シンイチさん――っ!」

 抱き締められた。

 ナナの小さな腕が、ギュッと抱き締めてくる。僕のお腹に、彼女の頭がくる感じ。子供だから、どこか必死そうな抱き締め方だけど、抱き締められた箇所がじんわりと温かくなる。

 どうしたの、と問いかける間もなく、湿っぽい声が聞こえてきた。視線を下げる。そこには、僕のお腹に顔を当てて泣きじゃくるナナの姿があった。

「……んっ、ぐすっ……ううっ……」

「えっと、その……」

 ナナが、泣いている。どうしよう。僕はナナにどうすれば良いんだろうか。色々と反応に困る。

「来いよ、かかってこい!」

「DQNなんざ怖くねぇ!」

 一方で、ナナのことなんか眼中にないと言わんばかりに喧嘩している二人組についても、色々と反応に困るところだ。というか、お前らはどっか行け。

「ぐすっ………………って」

 泣き声に混じって、ナナの呟きが聞こえてきた。

 嗚咽混じりに、言葉にならない声が零れていく。擦れたような音が僕のお腹辺りでくぐもる。

 それは、少しずつハッキリと聞こえるようになってきて、言葉になってきて――そして、それは。

「ナナ?」

 反射的に問いかける。

 ナナは、僕を抱き締めたまま泣き続けている。辛かっただとか、怖かったとでも言うように。けれども、安心したように。

「良かった……良かったぁ……」

 零れるように、彼女の口から言葉が漏れる。何が良かったのか。どういうことなのか。

 答えは、すぐに聞こえてきた。

「二度と会えなくなるそうで、怖かった……」

 その言葉に――僕は。

 Sideによる視点変更とか入れてないので、なんだかんだで唐突感が……(次の章辺りとかで補足する予定ではありますが)。

 とりあえず、この章はシンイチ君の視点で一貫したまま、色々なものをひっくるめたまま突っ走る予定です。


 次の更新は……ちょっとどうなるかわからない感じです。早くなるのか、遅くなるのやら。

 次回も気長にお待ちください。

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