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東方二重奏  作者: みずたつ(滝皐)
第二回戦
8/28

安息の時間

阿求「始まりました、阿求の駄弁りその七」


霊夢「前回の続きね」


阿求「前回は、フラグをへし折るどうこうってゆう話になってましたね」


霊夢「その通りよ」


阿求「それで霊夢さん、それはいったいどういった物なんですか?」


霊夢「フラグをへし折る力、それは……フラグブレイカー」


阿求「どこぞの右手みたいな力ですね」


霊夢「それとは少し違うけどね」


阿求「それで、そのフラグブレイカーって、どういった力なんですか?」


霊夢「そうね。例えば、こないだ阿求が例に出した、戦地に向かう軍人が、俺、帰ったら結婚するんだ、ってやつあったじゃない」


阿求「はい。明らかに死亡フラグですね」


霊夢「しかし、そこにフラグブレイカーが介入すると、その軍人は死なない!」


阿求「なん……だと」


霊夢「そして恋愛成立フラグは、恋愛が成立しない!」


阿求「馬鹿な!」


霊夢「そして敗北フラグは、けして敗北することはない!」


阿求「なんとゆうこと。恐ろしすぎます」


霊夢「それこそが、フラグブレイカー」


阿求「でも、逆のことも考えられますよね」


霊夢「逆?」


阿求「逆ってゆうか、いい方向に考えられるってことです」


霊夢「どうゆうこと?」


阿求「例えば、死亡フラグをへし折れば、生還フラグじゃないですか」


霊夢「んっ?」


阿求「お別れフラグは、別れないフラグになりますし」


霊夢「……」


阿求「宿題忘れるフラグも、宿題やってるフラグになるじゃないですか」


霊夢「なんだか違う気もするけど」


阿求「違いませんよ。一緒です」


霊夢「そうかな?」


阿求「そうですよ。ああ、素晴らしきフラグブレイカー。私、いつか必ず会得してみせます」


霊夢「ああ……そう。頑張って」


阿求「何言ってるんですか? 霊夢さんも一緒に会得するんですよ」


霊夢「あっごめん。私、今日塾の夏期講習あるから」


阿求「逃がしませんよ。それに今は冬ですよ」


霊夢「言ってしまえば勝ちだ、だから夏だ」


阿求「いいえ、冬です。ね、レティさん」


レティ「そうね」


霊夢「いつの間に! てかそれ出されたら、反論のしようがない!」


阿求「さあ霊夢さん。大人しく一緒に会得しましょう」


霊夢「こうなったら。ドロン!」


阿求「古! 本当に霊夢さん何歳ですか!? って、んなこと言ってる間に逃げられた! 待ってください、霊夢さん」


レティ「…………えっ? 続かないわよ」

「霊夢たち……遅いな」


 魔理沙は、不安そうな顔で辺りを見渡しながら、近くにいたパチュリーに聞いた。


「……そうね」


 パチュリーは椅子に座って読書をしているが、何だか気が気ではなさそうだ。


 ここは、会場ではあるが先程皆がいた空間ではない。まるで屋敷の一室のような豪華な装飾で、大きめのソファが幾つか、大きいカーペットの真ん中には大きなテーブル、端には暖炉なんかもあり、上にはシャンデリアのようなライトがついていた。


 そこの一つのソファに、魔理沙たちは仲良く二人で並んで座っていた。


「確かに……遅いわね」


「アリス……」


 アリスが魔理沙とパチュリーの間の後ろに立って言った。


「霊夢たちだったら、逸早くクリアしてると思ってわ」


「そのてんについては同感です」


 アリスの隣にいる文は、うんうんと頷いて、それ賛同する。


「それなのに……私たちよに遅いなんて」


 アリスの表情にも不安が表れる。実際そうなりたくなるだろう。なんせ相手は博麗の巫女と吸血鬼コンビ、恐らくこれ以上ない程の強さを持ったコンビなのだから。霊夢は異変を解決するスペシャリスト。レミリアは幻想郷で一〜二を争う実力を持っている。その二人がそろって攻略が遅れているのだ。何が起こっているのか不安にもなる。


 霊夢とレミリアを見知っている魔理沙たちは、今か今かと、二人の帰還を待っていた。


 すると、部屋の扉が開いた。


 一斉に皆がそこに注目する。


「ただいま」


 そこに立っていたのはレミリアと傷だらけでレミリアに背をわれた霊夢だった。


「霊夢! レミリア!」


「お嬢様!」


 逸速く駆けつけたのは、魔理沙と咲夜だった。


 魔理沙はレミリアに背をわれた霊夢を見るやいなや、血相をかえて駆け寄った。咲夜も同様に、レミリアに行く衝動を押さえて、霊夢に駆け寄った。


「おい! 霊夢! 大丈夫か!」


 レミリアは霊夢を魔理沙たちに任せた。魔理沙は必死に霊夢に声をかけるが、霊夢は反応が極端に薄い。


「まずい……永琳を呼んでくる! 咲夜! 応急手当だけ頼む!」


「わかったわ」


 魔理沙は慌てて部屋を飛び出す。咲夜は懐中時計を取り出し、時間を停止させる。


 次に時間が動き出した時には、霊夢の体には包帯が巻かれていた。


「取り敢えず、これで出血は押さえられると思います。ですが、早急に手当が必要ですね」


 咲夜は不安そうな顔でレミリアを見る。レミリアは静に頷いた。


「これは酷いですね。見たところ全身からの出血で、血がなく、すでに意識が朦朧としてるみたいですね。デットラインとしては、もって後十分が限度」


 咲夜の後ろから、ウドンゲが除き込んで言った。薬師として永琳の弟子を勤めているウドンゲから言われると、かなりの説得力があった。


 一層の不安感が回りに立ちこめる。霊夢の表情も辛そうで、汗が滝のように流れている。


「けれど、その十分間に助かれば、問題はないわよね」


 そう言って現れたのは、八意永琳ヤゴコロエイリンだった。


「師匠!」


「大丈夫よ。直ぐに良くなるわ」


 そう言って取り出したのは、何の変哲もないカプセル錠剤だった。


 咲夜はそれを見て、反応した。


「これは、私たちがあなたから飲んだのと同じ」


「そう。蓬莱薬マークⅡ」


「回復力を促進させる薬品ですね、師匠」


 ウドンゲが嬉しそうに、説明してくれた。


「これさえ飲めば、忽ちによくなるわ」


 永琳は霊夢の顔を持つと、無理矢理薬を飲ませようとした。それも唇で。


「やめろお前! 私がやる」


 レミリアは永琳の唇から薬を奪い取り、手で霊夢の口に入れる。


 霊夢はそれを飲むと、表情は次第に穏やかになっていった。永琳が確認のためにと、包帯を取る。見ると、傷口が一つ残らず塞がっている。


「……んっ」


 意識が定かになった霊夢は、目を開けて辺りを見渡す。その目に写ったのは、今にも泣き出しそうなアリスと、安心しきった表情の咲夜。そして、誰よりも心配して、泣き出したかったが、それを必死で堪えているレミリアがいた。


「よかった」


「レミリア」


「取り敢えず、これで大丈夫なはずよ。あとは安静にしてなさい。それと、はい」


 永琳はレミリアに、霊夢に飲ませたのと同じ薬を渡した。が、レミリアは訝しげな顔をする。


「私は怪我はしてないわよ」


「復活した時に魔力をそれなりに使ったでしょう? これは怪我だけじゃなくて、魔力も回復するのよ。他の皆も飲んでるから、あなたも飲みなさい」


 そう言われて、レミリアは渋々薬を飲んだ。見た目にはわからないが、確実にレミリアの魔力は回復しているはずだ。


「……そういえば」


 咲夜が何かに思いついたように呟いた。皆の視線が咲夜に向けられ、咲夜はそれに気づくと言った。


「永琳。魔理沙とは擦れ違いにはならなかったの?」


「魔理沙と?」


 皆そういえばとゆうように、辺りを見渡す。しかし、魔理沙の姿はなかった。


「記憶が確かなら、魔理沙はあなたを呼びに飛び出したと思うんだけど」


「擦れ違いもなにも、私は紫にスキマで送られたんだけど……」


「とゆうことはつまり……」


 咲夜は可哀想な想像をして、哀れみの目を、魔理沙が出ていったドアの方に向ける。すると。


「どうしよう! 永琳がいな……い……」


 魔理沙が凄い勢いで部屋に入って来たが、その勢いは、入った瞬間に沈静化させた。


「……どうゆうことだ」


「スキマで先回り」


 魔理沙の問に、咲夜が簡単に答える。


「私の頑張りを返せ〜!!」


 魔理沙の叫びが部屋中に響くと。


「魔理沙……うるさい」


 剥れっつらの霊夢が上体を起こし、魔理沙を睨みつける。


「ああ、わりぃ。でも……よかったよ」


 魔理沙は笑顔で、霊夢を見つめた。霊夢は頬を若干赤く染めながら。そっぽを向いて、ありがとうと言った。


 そんな和やかな雰囲気の中、部屋の真ん中にスキマが出現した。そこから音声だけが流れている。


「第二回戦、お疲れ様です」


 声のトーンを聞く限り、これは紫ではなく阿求の方だ。


「怪我とうしていると思いますが、怪我の治療は全て永琳さんがしてくれます。いくら重傷でも、死なない限りは治してくれると思います」


 それを聞いて、一斉に皆が永琳を見る。永琳は笑顔でピースサイン。


「これより第三回戦に移ります。と言いたいところですが、何分皆さん魔力や霊力が回復しきっていないと思います。ですから、三回戦の開始は今から一時間後にします。その間に服を着替えたり回復に努めてください。では、一時間後にまたご連絡します」


 業務連絡を終えた阿求は、ふぅ、と息を吐くと、恐らく紫に、スキマを閉じていいですよと言った。その言葉を言い終わると同時に、スキマは閉じる。


「思わぬ休憩タイムだな」


 魔理沙は頭の後ろで腕を組むと、パチュリーに笑いながら言った。しかしパチュリーは、そうね、と素っ気なく返した。その対応にちょっと不機嫌になる魔理沙。


「着替えていいなら、霊夢、早めに着替えてきたら? あなたの服が一番ずたぼろだから」


 アリスが指摘すると、霊夢は自分の服を確認しだした。そして、回りと自分を見比べる。


「そうね」


 皆も服はぼろぼろではあるが、一番酷いのは霊夢の服だった。リリーの最後の斬撃攻撃が、服に深刻なダメージを負わしたからだろう。破けかたが酷いから、繕うこともできそうにないので、霊夢は勿体ないと呟いた。


 その言葉の意味を理解したのだろうアリスが、溜め息を吐いた。


「仕方ないわよ。そればっかりは直すことはできないわ」


「アリスでも?」


 霊夢のすがるような目に一瞬怯んで、思わずできると口走りそうになるアリスだが、頭左右に振って考え直した。


「無理なものは無理なの。ほら、早く着替えに行きなさい。着替え場所だったら永琳が知ってるでしょ?」


 そう言ってアリスは永琳を見る。


 永琳は頷くと、霊夢を連れて部屋を出ていった。


 やれやれと息を吐くと、パチュリーがこっちを見ているのに気がついた。


「……何?」


「いいえ、ただ……優しいのね」


「なっ! 違! 私は……」


「私は?」


「……パチュリーの意地悪」


 アリスは頬を真っ赤に染めた。何か反論しようとしたが、プイッとそっぽを向いた。パチュリーは笑顔でアリスを見ている。その後ろで文がニヤニヤしている。


 そんなニヤニヤな展開が起こっている中、咲夜はあたりをキョロキョロしている、それを見た早苗が尋ねた。


「どうしたんですか? 咲夜さん」


 早苗の問に、咲夜は焦ったように言った。


「お嬢様がいないのよ」


 その言葉を聞きつけた魔理沙が、咲夜に何食わぬ顔で言った。


「レミリアだったら、着替えてくるって、霊夢に付いて行ったぞ」


「なん……ですって」


 魔理沙の爆弾? 発言に、咲夜の妄想スイッチがオンになったのを魔理沙は感じ取って、体制を低くして咲夜から離れる。近くにいる早苗は首を傾げて、キョトンとしていた。


「まさか……そんな。そんな奴に付いて行ってしまったら、お嬢様が。着替えの最中に…………」


 その後も続く咲夜の妄想に、早苗は引き気味になっていた。まあ初見では誰しもこうなるでしょう。


 誰も咲夜を止めることなく、レミリアたちが帰って来るまで、咲夜の一人妄想は続いたのだった。

阿求「やっと終わりましたね」


霊夢「そうね……何だか早かったような遅かったような」


阿求「でもまだ序盤ですよ」


霊夢「半分もいってないからね。次回から第三回戦が始動します」


阿求「予想以上のボリュームでお送りします」


阿求と霊夢「お楽しみに」

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