春を告げる者2
阿求「始まりました、阿求の駄弁りその六」
霊夢「前回はゲストを呼んだわけだけど、今回も呼ぶの?」
阿求「あのですね、実はスタッフがゲストにアポとるの忘れてて、予定していたゲストのかたが来られないみたいなんです」
霊夢「何やってのよスタッフ」
阿求「テロップですいません。って書いてありますね」
霊夢「しかたないわね。今回は私たちでなんとかするしかないわね」
阿求「テロップで、ありがとうございます、さすが霊夢さん。って書いてあります」
霊夢「当たり前よ。それはそうと阿求」
阿求「はい」
霊夢「いつからこれは、ラジオみたいなことになってるの?」
阿求「あっ、そこツッコンじゃいます?」
霊夢「いや〜。最初の方に散々音声入ってないよ。ってゆうネタをやって来たのに、パーソナリティや、ゲスト云々とかやっちゃってるし、今回にいたってはスタッフがどうこうとか普通に言ってるし。完全にラジオ番組みたいなことやってるわよね」
阿求「お察しの通り。実はこれは、ラジオ番組として最初っから作られています。ですから、最初のあれは実はこの話に持ってくるためのフラグだったんですよ」
霊夢「一回のフラグを回収するのに、もう六回もやってるわよ」
阿求「大丈夫ですよ。これ以上は多分立ちませんから」
霊夢「ある意味でフラグを立てたわね」
阿求「そう言えば思ったのですが、フラグって何だかんだ容易に立ちますよね」
霊夢「……例えば?」
阿求「そうですね。代表的なのは、戦地に行こうとしている軍人が、俺、帰ったら結婚するだ。って言うこと」
霊夢「死亡フラグ……」
阿求「あとは、片思い中の人が、今年のクリスマスは、やっぱり一人かな? って言ったりすることですかね?」
霊夢「恋愛成立フラグか」
阿求「後は……スポーツ漫画とかである。こんな新米学校に敗ける訳ねえじゃん。とか」
霊夢「敗北フラグ」
阿求「フラグなんて、こんなに易々と成立するんですよ」
霊夢「本当にそうかしら?」
阿求「どうゆうことですか?」
霊夢「世の中はそんなに甘くない、フラグが例え立とうと、それをへし折ってしまえば問題ない」
阿求「そんなことが……本当にできるんですか?」
霊夢「そんな力が、確かに存在するわ。但し、今日はこれだけでいいので、次回に回します」
阿求「続くの!」
魔理沙とアリスの戦闘が調度終わる頃、その他の皆も戦闘に終わりをつげ、皆先ほどの空間に戻っていた。
しかし、霊夢たちだけはまだ戻っていない。それ以前に、第二回戦を勝ち抜けるかも、怪しいところになってしまった。
「……」
「はぁ……はぁ……」
霊夢は地面に両膝両手をついて息を切らしながら、斜め上に浮いているリリーを見た。
一瞬だけ視線を交わすと、リリーの後ろに視線を移す。
そこにいたのは、胸に桜色の光の十字架を刺されて、壁に張り付けにされているレミリアがいた。刺されたところからは血が滴っていて、その後ろの壁には、血が飛び散っていた。そこから一筋の線のように、血が下に流れている。
そして、レミリアが動く気配はなかった。
それを再確認した霊夢は、苦虫を噛み潰したような表情をする。
それを見たリリーは、口元をニヤリと緩めると、霊夢を見下す感じに言った。
「あの吸血鬼ですらこのざまや。あんたが私に勝てるか?」
「さあ? どうかしらね?」
勝てるか? そんなの決まってるじゃない。
勝てないわよ。
確かに私は、紅霧異変でレミリアに打ち勝った。けれどあれは、レミリア自身が最後まで本気を出さなかったからだ。本気のレミリアは、人間が勝てるレベルじゃない。なんてったって、幻想郷で一〜二を争う強さを誇っているんだから。
けれどこいつは、そんなレミリアを戦闘不能にした。レミリアが今まで手を抜いていたようには見えなかったし、恐らく本気だったんだろう。とゆうことは、実力は私なんかより数段上。さすがにそんなやつ相手に、勝てるなんて思わない。
……何や? 力の差ははっきりとわかったはずや。せやのに。
リリーは不適な笑みを浮かべる。
勝てると信じとる目をしとるやんけ。
「……ええで、さすがは博麗の巫女や。そうでなくちゃ面白みがあらへん」
リリーは右手を空高く掲げる。すると魔力でできた桜の花びらが、リリーの掌に集まり、刀を精製した。
必ず突破口はあるはずだ。それまで、何とか持ちこたえるんだ。
霊夢はお払い棒を取り出し、それに霊力を籠める。
「いくで」
リリーは桜色の魔力を纏う刀を上段に構えると、一気に振り下ろした。
「春刃 桜華斬刃!」
その魔力が三日月の弧のようになり、霊夢に迫った。
霊夢はそれを飛ぶことで躱すが。
「甘いで!」
一瞬の内に後ろに回り込んでいたリリーが、刀を振り下ろした。
しかし、霊夢は超反応のそれを防ぐが。
重い!
完璧に防ぎきれず、吹っ飛ばされてしまった。そのまま地面に叩きつけられる。
「がっ!」
背中を打ち付けるが、それだけでは止まらず、一度バウンドすると、転がって俯せで倒れた。
駄目だ。これじゃあ、突破口を見つける前に敗ける。あまり使いたくはなかったけど、やるしかない。
「さて。止めや」
手に持つ刀にまた魔力を纏わせる。それを横薙ぎに振り、三日月型の攻撃が霊夢に迫る。
それが着弾し、ハデな爆発をおこす。
「呆気ないもんやな、博麗の巫女もこないなもんか」
リリーは残念そうな表情で首を回すと、刀を肩にかけた。
「誰が呆気ないって」
不意に、後ろから声が聞こえた。背筋に寒気を感じ、言い知れぬ恐怖にかられる。
リリーは振り向きざまに刀を盾のように構えるが、腹に激痛が走る。
刀は破壊され、リリーはそのまま壁に叩きつけられた。
「ぐっ!」
何や? いったい何が起こったんや?
壁を押して体を起こし、自分を吹っ飛ばした張本人を見る。
「なっ……何や? あれ?」
リリーが見たのは、左手の掌低を出した構えのままの霊夢だった。十中八九、リリーは霊夢に殴られたのだろう。
そしてリリーが驚いたのは、なぜか霊夢の体に、黒い炎のようなオーラが纏っていたからだ。纏うとゆうより、服そのものがオーラに変わったかのような一体感があった。
そのせいなのか、霊夢の服は黒を基調とした色に変わっていて、所々赤の装飾がおこなわれているだけになっていた。
いったい、何が起こった?
「今回はこっちか」
霊夢は謎の呟きをして、困惑しているリリーを他所に、特攻を仕掛けた。
しかし、困惑していても、リリーは冷静に霊夢の攻撃を予測し、防御の体勢に入る。
しかし、霊夢は常軌を逸していた。普通、人間が妖怪を吹っ飛ばすだけでも離れ業なのに、霊夢の放った回し蹴りはリリーの防御を崩し、そのままリリーを蹴り飛ばした。
空中で何とか体勢を整えるが、上から霊夢の追撃が来る。
速い! さっきまでとは段違いや! それにこの力、いったい何やねん!?
地面に叩きつけられることなく着地するが、霊夢の姿を見失った。
どこや!? どこから来る!?
リリーは辺りを見渡すが、霊夢の姿は映らない。
「終わりよ」
後ろから耳元で呟かれた。ゾクリとする寒気と鳥肌が立ち、冷や汗をかく。振り向こうとするが、それを許すこともなく、拳打が脇腹に入った。
「がっ!」
体が宙に浮いた。そこから途方もない追撃が来る。
四方八方から高速で動く霊夢に、メッタ打ちにされるリリー。ラストに打ち上げられたと思ったら、上から拳打をくらう。地面に叩きつけられると、だめ押しの一撃で、強烈は踵落としが腹にきた。地面に罅が入り抉れ、リリーは吐血した。
そこから捻りながら回転して跳躍し、霊夢は地面に着地した。着地すると同時にオーラがとける。服の色も元に戻る。
「やった?」
霊夢は不安そうに見るが、リリーは動く気配がなかった。
よかった、この夢想天成は霊力の消費が激しすぎるから、やられてくれないと困る。
この夢想天生は、反射神経、感覚神経、筋力とうの、霊力以外のステータスを爆発的上げる霊力の衣を纏うスペルなのだ。その分霊力昇華し纏うため、消費は著しい。
安堵の溜め息を吐き、レミリアのところに行こうとした時、急に回りの空気が変わった気がした。
「……桜だ」
霊夢は目を見開いてそれを見る。
桜の花びらが、霊夢の回りに散っている、そして。
霊夢の全身が切り刻まれた。
「あっ……」
切られたところから血が吹き出し、霊夢は俯せに倒れる。直ぐに霊夢の回りは血溜まりになった。
「こんなもんかいな? あんたの力は」
顔だけリリーの方に向けると、口から血を垂らしながら、ゆらゆらと起き上がるリリーが目に入った。
「なら残念やわ。あんたの奥の手は、私を倒すにはいたらんかったわ」
そんな……私の全力でも、倒せないの?
「もう終わりにしようや。これで、最後や」
リリーは右手を上に掲げると、レミリアを刺したのと同じ、桜色の光の十字架を出現させた。
もう……終わりなの? ここで……終わっちゃうの?
「嫌だ……」
まだ、敗けたくない。私は、勝ちたい!
「ほなな」
リリーは腕を振り下ろす。十字架が霊夢に向かって放たれる瞬間。十字架は硝子のように粉砕された。
「なっ!」
リリーは驚きの声をあげ、自分の後ろに立っている人を見た。
「さてと、反撃といくか」
そこに立っていたのは、レミリアだった。霊夢はレミリアを見ると、笑顔が綻んだ。
リリーは、先ほどまでレミリアが張り付けにされていた場所を見るが、当たり前だが、そこにレミリアはいない。
レミリアに視線を戻すと、自分が刺した傷を見る。服の胸の部分に穴は空いているが、体に傷はない。だが、穴はの回りに付着した血が、先程までそこに傷があったことを証明している。
「復活したんか」
「お陰様でね」
「……レミリア」
互いに睨みあっていたが、霊夢に呼ばれて、レミリアはそっちに顔を向ける。すると、優しい笑みを浮かべて。
「大丈夫よ。直ぐに終わる」
そう言って、リリーを再度睨む。
「なめられなもんや。一度は敗けた身やろ? 勝てると思うたらあかんやん」
「そっちこそ、なめてかかんない方がいいわよ。私はこれから、お前を一撃で倒す」
そう宣言したレミリアの目に、まったくの慢心はなかった。
しかし、それはリリーを怒らせる結果となった。一度敗けたくせに、態度がデカイのが気に触ったのだろう。
「粋がるのも大概にせぇ! 逆に私が一撃で倒したる!」
リリーは後ろに飛び上がると、右手を前に出した。掌を広げると、桜の花びらの魔方陣が展開した。
あれは! 最初に撃ったレーザー!
霊夢は動こうとするが、体がゆうことを利かない。レミリアをそれを視界の端で見ていて。
「大丈夫よ霊夢。そこで見てなさい」
レミリアの言うことには、まったく説得力がないはずなのに、信用ができた。レミリアなら、なんとかしてくれる、そんな気になった。
「桜華 春を告げる花!」
花びらの中心から、桜色のレーザーが放出された。
「神槍 スピア・ザ・グングニル!」
レミリアは右手を横に翳すと、紅色の魔力が巨大な槍姿を変えた。
「はああぁぁぁ!」
しかし、レミリアはそれを投げることなく、掴んだまま突進した。
両攻撃が衝突すると、レーザーは外に流れ、槍は先っぽが削れていく。
「夜王 ドラキュラクレイドル!」
槍を両手で持って、翼を最大に広げて大きく羽ばたく。そこからスクリュー回転を加えて、貫通力を高めた。
「嘘や! 私の全力を!」
レミリアの攻撃はレーザーを押し退け、魔方陣を打ち破った。
「終わりだぁぁ!」
槍はリリーを飲み込み貫く。レミリアも勢いのまま、リリーの後ろに行き、槍を振り抜く。
リリーは魔力に焼かれ、黒い煙が体から立つ。翼は元に戻り、地面に落ちた。
「一度敗けようが、最後に勝てば文句はあるまい」
レミリアは勝ち誇った顔でリリーを見下ろした。
その様子に、霊夢は苦笑いをした。
阿求「やっと第二回戦戦闘パートが終わりを告げました」
霊夢「次回で第二回戦は終わりです」
阿求「早かったですね」
霊夢「以外にね」