空気の遣い2
阿求「はい始まりました。阿求の駄弁りその五」
霊夢「いまだに終わらず続いてます」
阿求「そう簡単には終わりませんよ。そのためのテコ入れですから」
霊夢「そうね……はぁ。とゆう訳で、今回はゲストとして、霧雨魔理沙さんがいらしてます」
魔理沙「私の紹介の前に溜め息吐くのやめてくれないか?」
霊夢「別にあんたに吐いた訳じゃないわよ」
魔理沙「いや、わかってるけど。でもなんか嫌じゃん」
霊夢「わかったから、早く自己紹介して、意外としゃくがないのよこれ」
魔理沙「わかったよ。よっ、お前ら。わかってると思うけど霧雨魔理沙だ。今回はよろしくな」
阿求「はい、霧雨魔理沙さんでした。大きな拍手をどうぞ〜」
魔理沙「開始そうそうゲストを帰すなよ!」
阿求「さすが魔理沙さん、鋭いツッコミ。これなら二人ともボケられますね、霊夢さん」
霊夢「そうね、普段は、ボケとツッコミが入れ替わる感じだったけど、魔理沙だったらツッコミいらないわね」
魔理沙「お前ら……」
阿求「さてと、そろそろ質問タイムにしますか」
霊夢「私たちが、疑問に思っていることなんかをあんたに聞くから、正直に答えてね」
魔理沙「何だか悪い予感が……」
阿求「じゃあ私からいきますね。魔理沙さんはバー〇ンですか?」
魔理沙「いきなり何聞いてんだ! セクハラだぞ!」
阿求「気になります!」
魔理沙「気にすんな! これはノーコメントだ!」
阿求「ちっ!」
魔理沙「あさらさまに舌打ちしてんじゃねえよ」
阿求「何のことですか〜?」
魔理沙「……」
霊夢「次は私ね」
魔理沙「まともなの頼むぜ」
霊夢「大丈夫よ。それじゃあ聞くけど。いつからウフフってやめたの?」
魔理沙「黒歴史引っ張ってくんな!!」
霊夢「前はなんだか、どこぞのお嬢様って感じが強かったんだけど、今は雑草並みの生命力だからさ」
魔理沙「いや……まぁ…………大人の事情だよ」
阿求「あの頃の魔理沙さんって、何だかタカビーでしたが、それが何か可愛かったですよね」
魔理沙「なっ!」
霊夢「乙女だったからね。今もだけど」
魔理沙「そっ! そんなことねぇよ!」
霊夢「本当に?」
魔理沙「えっ?」
霊夢「本当にそうかしら?」
魔理沙「霊夢……顔……近い」
霊夢「……」
魔理沙「……」
阿求「スト〜プ!」
霊夢「ちょっと阿求」
阿求「そうゆうのは家でやってください。目の前でやられると迷惑です」
魔理沙「別に私は……」
霊夢「仕方ないわね。わかったわ、じゃあお疲れ様」
魔理沙「ひゃあ! ちょ、霊夢! そんな強引に」
阿求「…………ええ……リア充たちが退場したところで、今回はここまでです。ではまた次回。
まじ爆発しろ」
「はぁ……はぁ……」
「ここまで……一方的になるとは……思いませんでした」
アリスは、額から血を流し、右腕を左手で押さえている。文は、右脇腹を左手で押さえながら、そこから流れる血を見ていた。
「皆さん、色々と何か勘違いしてるみたいですね。私が弱いだとか、段幕戦闘が苦手だとか、そんな感じに」
大妖精は、右手の指先についた血を舐めて、不気味な目付きで、アリスたちを見る。
「けれど実際、そんなことないんですよ。本気で戦ったら、妖精も人間も妖怪も、私に勝てる奴なんて、指で数えるくらいしかいないんですから」
相手を見下す目で、二人を見る大妖精。二人はそれに寒気を感じながらも、ギリギリ闘志を保っていた。けれど。
大妖精が勢いよく拳を前に突き出すと、空気が揺れた。それが波状となり、アリスたちに直撃した。
「ぐっ!」
「うわっ!」
二人は錐揉みしながら飛ばされ、壁に激突する。
「ごはっ!」
「……アリスさん」
アリスは叩きつけられた衝撃に耐えられず、吐血した。
右手で口を押さえて、口元を拭う。明らかに顔色が悪く、目も揺らいでいる。
これ以上は危険過ぎる、私もそうだが、アリスさんも血を流し過ぎている。
「どうしますか? 敗けを認めるのなら、これ以上は攻撃しませんけど」
大妖精は、愚民を見るような目付きで、アリスたちを見下した。
願ったり叶ったりの申し出だけど……。
「誰が……敗けを認めるもんですか」
アリスは何とか声を絞り出し、はっきりとそう言った。
アリスさんだって諦めていない。そんな中で、私が諦める訳にはいかない!
「バカですね。けれど、嫌いじゃないですよ」
やだな、まだやらなきゃいけないのかな? もう、傷つけたくないよ。
私も、昔は戦いが楽しかったと思ってた。心が踊り、爽快な気分にさせてくれたから。
けれどある日、中の良かった妖怪と遊びで戦っている時に、ある事件が起こった。
私は戦いに熱くなって、今まで使うのを禁止していた攻撃を、解禁してしまったのだ。その結果、私はその子の殺してしまった。
私が誰かを殺めたことは、私以外の誰も知らない。私だけの秘密。
けれど、そのことが起きてから、戦いが楽しくなくなった。むしろ、耐え難い喪失感と、拒否反応を起こすようになった。
また戦いだしたのはここ最近、段幕戦闘が使われだした頃だ。
能力を使わなければ、拒否反応は起こらなかったし。私が手加減をすれば、誰も死ぬことはない。これなら、誰かを殺すことはない。もう二度と、能力を使わなくてすむ。そう思っていた。
けれど今、私は能力を使って、また友達を傷つけている。
「二度と使わないと思ってたけど……世の中、どうなるかわからないな」
大妖精はボソリと呟くと、感情を心の奥底に仕舞い込んだ。
けれど、それでも私は。
「やらなくちゃいけないんですよ」
くそ、どうする? このままじゃ敗けちゃう。何としても、勝ちたいのに。
アリスはギリッと歯を鳴らした。悔しさが全身から溢れている。
体を壁から離して、空中に浮かぶ。頭の中で何通りの考えを浮かべるが、決定打となる作戦が思いつかなかった。
「……アリスさん」
「……何?」
「これから私の言う通りに動いてくれませんか?」
「何か勝算があるの?」
「わかりません。でも、もうこれくらいしか、私には思いつかないです」
「……わかった。やりましょう」
文は頷くと、アリスの近くに寄った。大妖精に聞こえないようにボソボソと呟く。
何をしてるんでしょうか? 今更作戦会議?
「そんなことしても、無意味なのに」
大妖精はそう呟くと、両腕両手を大きく広げた。
「その手筈でお願いします」
「わかったわ」
「仏滅合掌!」
大妖精は、そこから両手を勢いよく合わせる。
すると、アリスたちがいるところに、左右から巨大な空気の圧力が迫った。
「天孫降臨の道しるべ!」
文は団扇を下から上に勢いよく振るうと、自分とアリスの間を中心に、巨大な竜巻が巻き起こった。それが、空圧を散らす。
「天狗報即日限」
高速移動スペルを唱えた文は、目視できぬ程の速度で上昇した。
しかし、それを空気の流れで察知した大妖精は、文の進んだ方向を目で追う。しかし。
「戦操 ドールズウォー!」
十人の人形たちは、ランスや剣を握り締め、四方八方から大妖精に迫る。が。
「まだ甘いです」
両掌をクロスさせるように、左右に突き出す。すると、大妖精を中心に、球体の空圧が外に放出された。
それが人形たちを押し退けると。
「爆散!」
人形たちは光出すと、瞬時に爆発した。硝煙が大妖精を包むが、直ぐに空圧で晴れ、硝煙で所々黒ずんだ姿を見せる。顔を上げると、鋭い目つきでアリスを見る。
アリスはそれにたじろいだが、ニヤリと口許を緩めた。
「いきますよ!」
不意に上空から声が聞こえた、瞬時に上を向くと、文が大妖精の真上にいた。
「鴉符 暗夜のデイメア!」
文の黒い翼をはためかせると、幾つか羽が散った。それが鴉の形になると、幾数の鴉になった羽は、大妖精目掛けて連続で突進していった。
「これは」
大妖精は焦ったように呟く、額からは汗が一筋流れる。
これだけの数と時間さ攻撃があれば、それに集中している間は無防備。その間にアリスさんが止めをさせる。
「けれど、大丈夫」
大妖精は口だけで笑うと、姿を消した。
「えっ?」
突然の出来事に、二人とも目を疑った。今の今までそこにいたのに、まるで、存在その物が空気になったみたいだ。
大妖精が消えて困ったのか、鴉たちは突進をやめて、空中に静止する。
「いったい、どこに?」
次の瞬間、鴉たちは横に吹き飛ばされた。そしてただの羽に戻る。
「なっ!」
いったい何が起こってるんですか? 大妖精さんはいないのに、攻撃がくる。
「文! しゃがんで!」
「えっ!? うわっ!!」
アリスの言葉に一瞬考えてしまったが、目の前から蓬莱人形がランス片手に突進して来たので、瞬間的に頭を下げる。すると。
「くっ!」
文の後ろから声がした。その方向に振り向くと、半透明の大妖精が、蓬莱のランスを白刃取りをしていた。
「大妖精さん!?」
文は大妖精と間を取る。
「どうしてわかったんですか?」
下の方にいるアリスに、下目使いで睨むと、アリスは無表情のまま答えた。
「簡単な罠よ。ドールズウォーの時、攻撃に移る前にワイヤーをそこいらに仕込んどいたの。今あなたたちがいるとこには、それなりの数のワイヤーが存在する。それの一本一本の微妙な揺れを感知して、あなたの居場所を割り出した」
簡単に言ってくれるけど、とんでもない集中力ですね。たかだかワイヤーの動きで、位置を予測するなんて。
「……そうゆうことでしたか。ですが、それだけでは私は捕らえられませんよ」
大妖精は蓬莱を力任せに放り投げると、勝ち誇った顔をする。
確かにその通りだ、空気をそこら中に放てば、簡単に感知を狂わすことができる。
しかし、アリスは笑みを浮かべ。
「知ってるわよ、そんなの」
そう言った瞬間、ワイヤーに魔力が流れ、それが電力を帯びた。
「これは!?」
「注力 トリップワイヤー。これであなたの技は封じられたに等しい」
なんだこの量は? 普通に考えて、この量はありえない。さっきまで気になる程度ではなかったのに、今になって増えた。
ハッとして飛ばした蓬莱の方を見る。蓬莱は両手にワイヤーを握り締めていた。
「これだけの包囲網があれば、あなたがどこに行こうと関係ないわ。そして」
「これは! 上海!」
いつの間にか後ろに回り込んでいた上海が、ワイヤーを使って大妖精の両手首を縛った。
「くっ!」
ほどけない! それに。
「あまり動かない方がいいと思うわよ。動けば動くほど、これは縛りが強くなる仕組みになってるから」
「もしかして、私の弱点がわかったんですか?」
「限定条件があるんでしょ? 掌で何かアクションを起こさなければ、空気を操れないってゆう。それともう一つ、さっきの消えたように見えた技は、あなた自身の存在を空気に変える技」
「なんでわかったんですか?」
「最初に可笑しいと思ったのは、あなたが何食わぬ顔で文の横に現れた時。あの時、まさにあなたは、空気みたいに現れたと思った。だからこの可能性にいきついたのよ」
まるわかりか。けれど、まだ終わってない。
大妖精は覇気の籠った目をしてアリスを見るが、あることに気づいて辺りを見渡す。
「種明かしもしたことだし。これで、終わりよ」
「天乱 速天落下襲!」
上空から脅威的速度で、ライダーキックの形のまま大妖精目掛けて落ちてくる文。
このままじゃ!
「いっけぇぇぇぇーー!!」
文の蹴りが大妖精の腹に当たると、威力で大妖精は吹っ飛び、両手首を縛っていたワイヤーが急速に絞まると、大妖精の手首を切り落とした。
そのまま血を撒き散らしながら、大妖精は地面に向かって落ちていく。
文も当てた勢いのまま落下していたが、何とか空中で勢いを殺せた。
大妖精は地面に叩きつけられ、そこが抉れ、岩が飛び散る。数秒置いて、大妖精の手が落ちてくる。砂塵が晴れると、大の字で仰向けになっている大妖精の回りには、血が飛び散っていて、腹は緋色の染まり、口からは血が滴り落ちていた。手首からは血が吹き出している。
「……私の……敗けですね」
アリスと文は粗い息遣いをしながら、大妖精の側に寄った。
「また……回復できるんじゃない」
大妖精は自嘲めいた笑みを浮かべると、ボソボソと言った。
「復活と違って、あれは……かなりの魔力を……使うんです。ですから……一日に二回も……重傷は治せません」
「なら、素直に一度、あの時死んでおけばよかったんじゃないの?」
アリスのその問いかけに、大妖精は首を横に振った。
「復活は……意識と記憶が、十分近くなくなってしまいますから。戦闘中の即時回復には……向いていません」
「そう」
「……アリスさん、文さん」
「……なんですか?」
大妖精は泣きそうな声で。
「このことは……皆には……内緒にしてください。絶対に…………知らせないでください」
「……わかったわ」
「アリスさん……」
アリスは一つ溜め息をつくと、後ろ髪をかいて大妖精を見た。
「チルノにも、皆にも言わない。なんだか知らないけど、あなたは自分の能力が嫌いみたいだしね」
「!!」
大妖精は目を見開くと、アリスは膝をついて、顔を上から除き込んだ。
「けれど、いつかあなたの本気を、最強の技をみたいわ」
「お見通しですか」
アリスは優しい笑みを浮かべると、大妖精の額を人差し指でつついた。
「当たり前でしょ」
アリスは立ち上がり、大妖精に背を向けると。
「だから、また戦いましょう。私たちは、あなたにはやられないから」
「…………はい」
大妖精は目を閉じると、そこから一滴の涙が零れた。
阿求「次回は霊夢さんですね」
霊夢「がんばりま〜す」