空気の遣い
阿求「阿求の駄弁りその四。はっじまっるよー」
霊夢「子供番組か!」
阿求「私、歌のお姉さんに憧れてたんです」
霊夢「知るか! それはそうと、あっきゅんべーはどうなったの?」
阿求「略語は……もういいです」
霊夢「ああ……さすがに懲りたか」
阿求「もう私は、生涯あっきゅんべーは封印します」
霊夢「まあ、略し方なんて、やってればいつか思いつくわよ。それまでこれがやってればの話だけど」
阿求「不穏なこと言わないでくれますか。大丈夫ですよ、シリーズ中はやってますから」
霊夢「それならいいんだけど。でも、いい加減話す内容なくなってきたわよ。私はボキャブラリーが多い方じゃないし。あんただって、けしてある方じゃないでしょ?」
阿求「確かにそうですね」
霊夢「だったら、ここら辺で潮時じゃないかなって思うんだけど。面倒臭いし」
阿求「そんなこと言わないでくださいよ。それと、本心隠す気がないでしょ?」
霊夢「なんのことかしら?」
阿求「しら切ったよこの人」
霊夢「私のことはどうでもいいのよ。それよりどうなの?」
阿求「確かに霊夢さんが言ったみたいに、たった四回目にして題材不足はきついですね。このまま行けば後三回で終ります。ご察しの通り、ほぼ隠居生活な私は、あまりボキャブラリーが豊富な方ではないですから」
霊夢「だったらやめちゃおうよ」
阿求「やめる前提で話を進めるのやめません? 一応存続する設定で打開案を出しましょうよ。いわゆる、テコ入れです!」
霊夢「なん……だと」
阿求「どんだけやりたくないんですか。それよりテコ入れです。僅か四回しかやっていませんが、ここいらで一端、新しい方向性を見せた方がいいと思うんです」
霊夢「例えばどんな?」
阿求「この前書きのコンセプト、私の可愛さを知らせるですから……」
霊夢「そんなコンセプトが……。てか、どんだけ身勝手なコンセプト?」
阿求「そのコンセプトを守りつつ、今までにないことをすればいいんです!」
霊夢「今までコンセプト守ったことあったっけ?」
阿求「細かいことは言いっこなしです。霊夢さん、何か案はありませんか?」
霊夢「え〜。う〜ん、そうねぇ。例えば、いつも私たちだけだけど、偶にはゲストを交えたトークなんかも、面白いんじゃない?」
阿求「…………」
霊夢「…………阿求?」
阿求「天才です! それいいですね! 次回はそうしましょう!」
霊夢「あっさり決まった!?」
阿求「では次回からは、ちょくちょくゲストをお呼びするんで、改めてよろしくお願いしま〜す」
霊夢「こんなんで良かったのかな?」
アリスサイド
「それで、どうなんですか? 実際」
アリスの隣を並空する文は、手帳と万年筆を手に、アリスに取材している。
妖精に攻撃はしないが、くる攻撃は避けている。
「なんにもないわよ……」
当のアリスは、人形たちを駆使して、妖精を倒していく。文の取材には、さっきからはぐらかしてばかりいる。
それもそのはず、取材の内容が。
「またまた〜。噂は聞いてますよ〜。とゆうか、カップリングが多すぎませんか? 魔理沙さん、霊夢さん、パチュリーさんなどなど……」
「カップリングってなんの話よ。私には恋人はいないわよ」
アリスが否定すると、文はおばちゃんのノリでさらに否定する。
「何をおっしゃいますか。魔理沙さんに始まり、ついには霊夢さんにまでフラグを建てて。アリスさんは行く所々でフラグ建ててますね。ある意味才能じゃないですか?」
「そんな才能私にはないわよ。それに、別にあの二人は私のことなんか、なんとも思ってないわ」
そこまで言って、アリスは自分が墓穴を掘ったことに気づいた。
「あの二人? 私が例に出したのは三人のはずですが、まさか、その中にアリスさんを思っている人がいるんですか?」
「なっ! 何言ってるの! そんなのないわよ!」
だがその取り乱しように、文の目がキラーンと光ったように見えた。
「いるんですね! そしてその方をアリスさんも想っていると! そうゆうことですね!!」
「ちっ、違うわよ! そんなんじゃ……」
「いったい誰なんですか? まさか、魔理沙さん? しかし、最近はパチュリーさんに会っていると情報がありますし、やはりパチュリーさんですか?」
「違うったら違う!」
「観念して本当のことを喋ったほうが楽になりますよ。今回私は、とことんまでアリスさんの情報を聞き出しますから!」
「私の情報なんて聞いても、皆喜ばないわよ!」
「何をおっしゃる! アリスさん程の人の情報は、かなり値段がつくんですよ! アリスのことを知りたいって妖怪も人間も多いんですから!」
「そうですよ。私も知りたいです」
「ほら見てください、ここにもアリスファンが……」
文がそこまで言って、おかしなことに気づいた。今まで二人で会話をしていたはずなのに、いつの間にか、一人増えている。
文がその声の方向を向くと、大妖精が何くわぬ顔で並空していた。
「ぬわっ! びっくりした〜」
「大妖精、あなたいつの間に?」
「文さんの、それでどうなんですか? あたりからいました」
ほぼ初っぱなじゃない!
存在感がないにも程がある、まるで空気ね。
「大妖精さん、どう思います?」
「やっぱりパチュリーさんの線が妥当だと思います。最近は紅魔館に入り浸りなんで」
「おい、何やってんだ?」
文が大妖精にアリスの目の前で堂々と聞いていたので、さすがのアリスも怒ったみたいです。
しかし文は。
「何って……情報収集……」
グサッ。
「いったぁぁぁ!!」
アリスが操作した蓬莱人形のランスの先端が、文のでこに命中。
「まったく。……そういえば、なんで大妖精がこんなところにいるの?」
今まで疑問にもしてなかったけど、こんなところにいるのは不自然よね?
「ああ、そのことですか。それは私が……」
大妖精がそこまで言うと、圧力が横から襲ってきた。それに押しやられる、アリスは吹っ飛ぶ。しかし、文が瞬時に助けに入り、なんとか壁に叩きつけられずにすんだ。
「ここのボスを任されているからです」
感情が読めにくい笑顔をする大妖精。その表情が、とても恐ろしく感じる。
「まさか不意討ちとはいえ、アリスさんに一撃入れるなんて。大妖精さんは、そんなに強かったでしたっけ?」
「そんなはずないわよ。彼女は弾幕勝負は苦手なはず」
文が苦笑いしながらアリスに聞く、アリスは驚きを隠せない表情で、文に返した。
それもそのはず、なんせ相手は大妖精。スペルカードも所持していなければ、能力も存在しない存在なのだ。それに上位妖怪であるアリスが、避けることも防ぐこともできずに、ダメージを負わされたのだ。
いったい何が起こったっていうの? まるで、何かぶつかったみたいに吹っ飛ばされた。
アリスがまだ考えていると、大妖精が右手を前に出して、掌で空を握り潰した。
すると、文が瞬時に反応して、アリスを脇にかかえて後方に飛んだ。
「えっ!?」
その直ぐ後、アリスたちが先程いた場所で、強力な破裂音が聞こえた。
「さすがに天狗だけのことはありますね。あの一回のやり取りで、私の能力がわかったんですね」
「いや〜、厳密にはわかってなかったですよ。けど、今のでわかりましたよ。私と同種の能力なんですね」
文は大妖精の能力がわかったみたいだが、いまだに文にかかえられているアリスは、疑問に満ちた顔をしている。
それを見かねた文が、アリスに説明をする。
「アリスさん、大妖精さんの能力は、空気を操る……いや、扱う程度の能力なんですよ」
「空気を扱う?」
「とどのつまり。大妖精さんは、空気で攻撃してくるんです」
空気で攻撃……そんなの。
「反則じみてるわね」
アリスは、大妖精の能力での、最悪の攻撃を想定して、冷や汗を垂らす。
「ええ。私の風とも、相性最悪です」
自分で最悪と言いつつ、文は苦い顔一つしないで、冷静に大妖精を見る。それはアリスも一緒だった。
大妖精は、いまだに感情の読めない笑顔をする。
「正直、皆さんの前で能力を使うのは控えていたかったんですが。まあ仕方ありませんね」
大妖精はクスクスと笑うと、右手を上に掲げた。
「文。取り敢えず、大妖精の能力がどこまでのものか、それを調べるわよ」
「了解です。アリスさん」
さて、お手並み拝見させてもらいましょうか。
アリスは笑みを浮かべると、上海と蓬莱人形だけ取り出し、戦闘体制に入る。文も天狗の団扇を取り出し、自身の回りに風を纏った。
「いきますよ」
大妖精は手を振り落とし。
「空尖 クロードスピア!」
大妖精がスペルを唱えると、アリスと文目掛けて、目視でしない、空気の槍が降り注いだ。
「上海!」
アリスがそう言うと、上海はアリスの前に出て、巨大な盾を出現させた。
「風符 天狗報即日限」
文は高速移動スペルを唱え、姿を消した。
空気の槍は盾に阻まれ、姿を消した文には当たらなかった。
「空圧 手合わせ潰し」
大妖精は体の前で両手を合わせる。すると、目に見えない空気の圧力が、アリスの両側から襲ってきた。
しかし、アリスは焦ることなく、上に上がってそれを避ける。
「? 爆散 エアーボム」
右手を前に出して、空を握り潰す。空気がアリスの所に集約されていく。それが爆発する寸前。
「あまい」
アリスは後ろに飛んでそれを躱した。
どうゆうこと? なんで攻撃を避けられるの?
「だいたいどうやって攻撃するのかがわかったわ。今度はこっちの番よ。上海!」
上海は前で両手を突き出すと、そこから紫色のレーザーが放たれた。
「くっ!」
大妖精は両手を突き出すと、空気の壁を造った。それに阻まれレーザーは当たらなかったが。
「私も忘れないでくださいね!」
後ろから不意に声が聞こえた。振り向くと。
「風符 天狗道の開風! +蓬莱!」
横殴りの旋風が大妖精に襲いかかる。その旋風の真ん中に、自分の身の丈以上のランスを持った蓬莱人形が、スクリュー回転しながら迫っていた。
「拡散!」
大妖精が前に出した手を、グーからパーに広げると、旋風が消失した。しかし。
「まだ蓬莱がいるわよ」
「空圧」
蓬莱人形のランスが大妖精に当たる瞬間、蓬莱人形が押し返されてしまった。
「いきますよ!」
いつの間にか下に移動した文が、脇に団扇を構える。
「旋符 紅葉扇風!」
「+リトルレギオン!」
文が放った竜巻に、人形たちが自ら巻き込まれていく。すると、風の中で身の丈程の剣を風に任せて振っていた。
「落ちろ!」
大妖精が、両手を上から下に叩きつけるように振るうと、風は散り、人形たちは地面に叩きつけられた。
しかし、その瞬間、大妖精に一瞬の隙が生まれた。
アリスはその瞬間を逃さず。
「蓬莱!」
いつの間にか大妖精の後ろに回り込んでいた蓬莱人形は、ランスを大きく引き絞り、もの凄い速度で突き出した。
それが、大妖精の体を貫く。貫くと同時に、血が吹き出した。
「がっ!」
勝負あった。その時二人はそう思った。とゆうより、誰が予想するだろう、たかだか妖精風情が、これ程の意地を見せるなど。
大妖精は、体に刺さったランスをその両手で掴むと、ランスに罅が入った。
蓬莱とアリスは驚いてランスを抜こうとするが、大妖精の力に勝てず。結局、ランスは破壊されてしまった。
大妖精の体からランスは消えたが、傷は生々しく残っていて、腹には風穴が空いている。そこから血が滴り落ちている。
「うっ……っ」
いくら自然の助力があるからといって、直後に今すぐ治る訳ないと思っていたが。次の瞬間、風穴は外側から中心に向かって、回復していった。傷口は完全に塞がり、痕も残らない。
「なっ!」
「そんな!」
アリスと文は互いに驚愕の顔をする。
「さあ。まだ終わりじゃありませんよ」
大妖精は感情の籠らない目をすると、薄気味悪く微笑んだ。
阿求「次回もアリスさんです」
霊夢「明日にでも投稿してるかもね」