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東方二重奏  作者: みずたつ(滝皐)
第二回戦
4/28

氷の化物

阿求「はい始まりました。阿求の駄弁りその三、略してあっきゅんべーその三」


霊夢「その略し方はどうかと思うよ」


阿求「でも、阿求の駄弁りって、少し長くないですか? 東方projectだって、こちら〇〇〇〇〇公園〇〇〇所だって、ちゃんと略し方があるじゃないですか」


霊夢「略すのは本当に長いタイトルだけよ。阿求の駄弁りはそこまで長くないわよ」


阿求「じゃあ略す必要のないJKとかリーマンとかなんなんですか? あれ略す必要ないじゃないですか」


霊夢「確かに……普通に女子高生って書けよ、サラリーマンって書けよ」


阿求「そうですよOKだってそのまま書けばいいのに、なんですかおkって」


霊夢「逆に読み難くなったわよね。オッケーじゃなくて、これじゃオケよね」


阿求「ですよね。読み難いですよね。だったらこの世から略語なんてなくなればいいんですよ!」


霊夢「えっ?」


阿求「とゆう訳でお呼びしました! 慧音先生です!」


慧音「いったいなんなんだ?」


阿求「慧音先生、一つお願いがありまして、略語を歴史から消してくれませんか?」


慧音「別に構わんが……ハッ!」


阿求「特に変わった感じはしませんが……」


慧音「大丈夫だよ、いちよう略しに関することは、この歴史から消してある。用もすんだし、私は戻るぞ」


阿求「はい! ありがとうございました!」


霊夢「それで、略語なんかなくしてどうするのよ」


阿求「どうもしません。でも、世の中が本当の言葉で溢れるんですよ、感動です。おっといけない、今のうちにこの歴史を記録しなきゃ」


霊夢「さすが稗田家当主。こんな時までぶれないわね」


阿求「そりゃあそうですよ。なんてったって私は……」


霊夢「どうしたの?」


阿求「略字が書けない!」


霊夢「はあぁ? 何で」


阿求「私が聞きたいですよ! はっ! まさか!」


霊夢「何かわかったの?」


阿求「慧音さんが言ってたことを思い出してたら、重大なことに気づきました」


霊夢「それはいったい……」


阿求「慧音さんは略しに関する歴史を消したって言ってました。つまり略語だけでなく、略字、略説、略号なんかも使えないということです」


霊夢「あ〜〜。なるほど」


阿求「うわぁ〜ん。これじゃあ執筆作業が進みません。慧音先生に直して貰いに行ってきます」


霊夢「え〜と…………パーソナリティーがいなくなったので、今日はここまでにします。ではまた次回






 私一人でどうしろと? 引き伸ばせ? 無理言わないでよ、私にはそんな技術はない! 大体……」

魔理沙サイド




 魔理沙たちは、妖精の大群を薙ぎ倒して、すでに広い空間に来ていた。が。


「これは何かの冗談か?」


 魔理沙が前方を見ながら呟くと、パチュリーも少し苦い顔をする。


「冗談ではないと思うわよ」


「でもこれは……」


「よくぞ来たな魔理沙! ここであったが一年目! あたいが倒してやる!」


「チルノ、ここであったが百年目だから」


「あへぇ?」


 パチュリーの冷静なツッコミに、頭を悩ませるチルノ。魔理沙は頭を押さえて溜め息を吐いた。


「本当にこいつがボスかよ」


「文句言っても仕方ないでしょ、いくわよ」


 魔理沙たちが戦闘体制に入ると、さすがに⑨でもわかるらしく、チルノも戦闘体制に入った。


「あたいとやる気? あたいは幻想郷最強だぞ!」


「自称な」


「自称じゃないやい!」


 魔理沙の的確なツッコミに、憤慨するチルノ。


「もう怒ったぞ! くらえ! 雪符 ダイヤモンドブリザード!」


 氷のツブテが、乱雑に放たれる。


 それを見て、パチュリーが魔術を発動させようとすると、魔理沙がそれを手で制した。


「私一人で充分だぜ、お前はそこで見物してな!」


 そう言うと、パチュリーを置いて一人で突っ込んで行った。


「そう言うなら、お言葉に甘えましょうか」


 展開しようとした魔術を途中で中断して、魔理沙の後ろ姿を眺めるパチュリー。不安とかの感情は一切ないようだ。


 魔理沙は器用に礫を避けていく。それを見るチルノは、向きになっているようだ。


「くっそ〜〜。なんで当たらないんだよ!」


「このスペルを見るのは二度目だからな。初見以外だったら、躱せなくないぜ」


 躱しながらチルノに接近する魔理沙は、大体十メートルほどの距離になったところで、魔具を取り出した。


「吹き飛びな、マジックミサイル!」


 魔理沙が放った筒上の物は、底から煙が出たかと思ったら、変則的な軌道でチルノに迫った。


「えっ!? うわぁっ!!」


 マジックミサイルの数は六個、その全弾がチルノに命中して、着弾した瞬間に、その六個は派手な爆発をした。ダイヤモンドブリザードも同時に止まる。


「やれやれ、呆気なかったな」


 魔理沙が終わっただろうと、硝煙で見えないチルノに言った。確かに、いつものチルノだったらここで終わっていただろう。だが、今回チルノは一味違った。


 硝煙が晴れると、氷の翼がそこにはあった。鳥のような翼ではなく、竜のようなその翼は、チルノを守っていた。


「なんだ……あれ」


 魔理沙は明らかに驚愕している、それは後ろにいるパチュリーも変わらない。


 翼が広がると、中からチルノが現れた。


「危なかった〜。ドラゴンメイルを使ってなかったらやられてたよ」


 ドラゴンメイル? 始めて聞く名前だな。もしかして、これがチルノの奥の手なのか?


「この技、制御がなかなか効かないんだけど、たまには本気でやりたいし、あたいが幻想郷最強ってことを、思い知らせてやりたいからね」


「魔理沙、気をつけて。チルノの魔力が上がり始めてる」


「言われずもがなだぜ。パチュリー! バックアップ頼む!」


「わかったわ!」


「いくぞ魔理沙〜!」


 チルノは両手を上に挙げて、魔力の塊を作る。それが、巨大な剣に姿を変えた。


「凍刃 アイシクルカリバー!」


 巨大な剣を縦に振ったり横に振ったりする。だが、巨大な分速度が遅いため、初見でも避けるのは容易い。


「まだ甘いな。魔符 スターダストレヴァリエ!」


 魔理沙が前に両手を翳すと、魔法陣が展開する。そこの中心から、色鮮やかな星々がチルノを狙う。


「これならどうだ!」


 チルノは剣を空高く掲げる。すると、剣に罅が入り、砕け散った。かと思えば、散った氷が形をなし、数多くの適度な大きさの剣になった。


「雹刃 ソードスノウ!」


 チルノが掲げたままの手を振り下ろす。すると、剣たちは一斉に魔理沙の方に向き降り灌ぐ。


 剣一本一本の威力は、星一つの威力より勝っていて、簡単に貫かれる。


「やべっ!」


「だから気をつけてって言ったのに」


 パチュリーが溜め息を吐きながら、魔理沙の前に出る。


「火符 アグニシャイン」


 パチュリーは左手を前に出して、魔法陣を展開させる。すると、そこの中心から火球がいくつか放たれる。


 それはチルノの放った剣たちを溶かし、チルノに接近する。しかし。


「氷華 フロストアース!」


 チルノは両手を前にやると、そのまま静止した。


 どうゆうつもり? 氷を作る訳でもなければ、アグニシャインを凍らせる訳でもない。あのままでは当たるわよ。


 パチュリーのその少しの違和感は、次の瞬間晴らされる。確かに、氷を作る訳でもなければ、アグニシャインを凍らせる訳でもない。だが、凍らせるは正解なのだ。ただ違っていたのが、凍らせる対象。


 世界が一瞬真っ白になり、強力な光に二人は目をつむる。次に目を開けると。


「なっ!!」


「嘘だろ!?」


 その空間の全てが、氷ついていた。パチュリーの放ったアグニシャインも、氷塊となっている。


 ありえないわ! たかだか氷妖精程度に、環境そのものを変えるほどの力があるなんて!


 パチュリーが驚くのも当たり前なのだ。妖精は自然そのもの、それ以上に環境そのものなのだ。その環境になることはできても、環境そのものになることはない。故に、環境を自分の思い通りにするなど、けしてあってはならないのだ。


 もうチルノは、妖精ではないかもしれない。これほどの魔力は、もはや上位妖怪にも勝るわ。


「魔理沙……」


 魔理沙はパチュリーの方を向かずに頷いた。その一言だけで、パチュリーの言いたいことがわかったのだ。


「ああ……正直これは、想定外だぜ」


 これだけの規模の術をつかえば、それなりの疲れが確実にあるはずだが、チルノは余裕寂々といった表情だ。


 確かにこれには驚かされた。けど、大妖怪クラスの奴らは、こんなもんじゃない。環境だけでなく、地形までも変えちまう。それだけの力をもってんだ。


 大丈夫。私だって、何度も死線を潜り抜けたんだ。大妖怪にだって、勝ったことはある。大丈夫だ。


 魔理沙は、自分の中で暗示をかける。強い妖怪や敵とやるときは、魔理沙はいつもこうしている。自分の中の恐れを消し去るためだ。


 大丈夫だ。私ならやれる。


 暗示をかけている魔理沙の肩を、パチュリーが叩いた。一度びくりとすると、パチュリーの方に向く。


「大丈夫よ。私もついてる」


 なんだよ、心でも読んだのか? けど、ありがとうな。


「そうだな。信じてるぜ、パチュリー」


「任せなさい」


 そう言うと、パチュリーは両手で魔法陣を展開させた。


「魔理沙。私の攻撃の後に、タイミングを合わせてマスタースパークを使いなさい」


「ああ」


「いくわよ。木符 グリーンストーム!」


 無数の風の矢が、チルノ目がけて四方八方から襲いかかる。


「全部氷つかせてやる! 凍符 パーフェクトフリーズ!」


 チルノが両腕を大きく広げると、波動がチルノの半径十メートル近辺まで流れた。すると、風の矢が凍りづけになってしまった。


「予想以上ね。火符 アグニレイディアンス!」


 アグニシャインより大きい火球が四つ、チルノに迫る。


「氷壁 フロストシェル!」


 チルノを包み込むように、氷の甲羅が出現する。


 丸い球体のようになったチルノに、アグニレイディアンスが直撃する。当たるとすぐに、十字を二つ被らないように重ねた火柱が、フロストシェルを中心に立つ。しかし、フロストシェルを壊すにはいたらなかった。


「てい!」


 チルノの気合いと共に、フロストシェルが砕け散る。自ら壊したのだ。その瞬間、アグニレイディアンスも共に散った。


「まだ終わらないわよ。金符 シルバードラゴン!」


 展開した魔法陣の真ん中から、白銀に輝く竜の頭が、残像を残しながら八つ出現した。その速度は異常で、目で追うことも儘ならない速さだった。


 当然チルノも追うことはできず、なおかつ、フロストシェルを拡散させた反動で、多少体が強張っていて回避がうまくいかない。


「うわっ!」


 一つ一つが直撃するたび、爆発音と共に、白い煙が後ろに流れる。


 だが、パチュリーのこの攻撃でも、チルノを倒すにはいたらなかった。


「くっそ〜。仕返ししてやる!」


「それはダメだぜ」


 チルノがいざパチュリーに攻撃してやる、といった時に、上から魔理沙の声が聞こえた。振り上げて見ると、八卦炉を構えた魔理沙がいた。


「いくぜ。恋符 マスタースパーク!」


 八卦炉を砲台に、強力な電磁砲が放たれた。厳密には電磁砲ではないく魔力レーザーなのだが。しかしその威力は、森の生態系を変えるくらいの力はある。


 それの直撃を受けたチルノは、焼け焦げた地面に横たわっていた。


「やったか?」


「多分……」


 先のこともあるので、いちようパチュリーに確認を取る魔理沙。パチュリーはおずおずと頷く。


 注意深く見ていると、チルノの指先が動いた気がした。すると、ぬるぬると起き上がってきた。背骨でちゃんと立てないのか、軟体動物みたいにぐにゃぐにゃしている。


「おいおい」


「まさか……あの子」


 なんとか立ち上がると、後ろに体を傾けて、首を後ろに傾ける。斜めに見上げるその目は、とても虚ろで、目に光なんかはなかった。


「ドラゴンメイル、セカンドシフト」






「妖精は環境そのもの。それなのに、過去には環境を変えてしまうほどの特別な力を持った妖精が存在した」


 香林堂の居間で、紫は両手で支えている湯呑みの中を見つめながら、全員に聞こえるくらいの大きさで呟いた。


「彼女の力は桁外れで、当時の博麗の巫女も、彼女の力には手を焼いていたの。けれど彼女は、自分の力を悪用することなく、人助けに使っていたわ」


 紫が話ている最中、映姫と阿求と霖乃助は、スキマカメラから写し出された映像を見て、絶句している。


「けれどそんなある日、彼女に不運が訪れた。妖精や妖怪は、一周期の間に魔力が確実に弱くなる日が存在するのだけど、彼女はそんな日は、絶対に力を使わないと決めていたそうなの。だけど、そんな日に限って、ある大型妖怪が村を襲う事件が起きてしまった。


 その日、博麗の巫女は遠出をしていたので、直ぐには帰ってこれない状況だった。このままでは、村が全滅してしまう。そう思った彼女は、迷ったあげく、死んでいく人間たち放っておけずに、力を使って妖怪を退治したらしいわ」


「その記録は存在しています。例にみない死亡数だったようですね」


 映像に釘付けだった阿求が、紫の話に食いついた。


 しかし、阿求の言ったことに、紫は首を横に振った。


「違うわ……死者はそんなにでなかったの。彼女が頑張ったおかげで、被害も想定よりは縮小された」


「なら、どうして?」


 阿求は不安そうな顔をする。紫は目をつむると、嫌なことを思い出したかのように、眉間に皺がよる。


「沢山の死者をだしたのは、彼女なの」


「!!」


「彼女は……魔力が下がっているのに関わらず、力を使ってしまった。結果的に妖怪に勝つことはできたけど、その後、自分の力を押さえられず暴走。大人子供、自然や民家を、見境なく破壊していった。巫女が帰ってくるころには、村はほぼ全壊。私の力で匿われた人間たちはなんとか助かったけど、それ以外の人間は皆死んでしまった。


 巫女は、その惨状に悲しみ、怒ったわ。けど、巫女一人では彼女を止めることができず、私と強力して、なんとか止めるにいたった。


 やられたことで、一時的に正気は取り戻したけど、彼女の力の暴走は止まらなかった。


 また誰かを傷つける前に、私を殺して。


 彼女はそう言ったけど、巫女はそうすることができなかった。もちろん私も。それを見た彼女は、自ら命をたったわ」


「ですが。妖精は死んでも生き返るんじゃ……」


 阿求の言ったことに、紫は頷いた。


「その通りよ。妖精は自然そのもの、自然が存在していれば、必ず生き返るわ。


 けど、生き返らない方法も存在する。外部からの干渉がある場合は、生き返らないこともあるわ」


「封印ですね」


 今まで映像を見ていた映姫が、急に話に割り込んで来た。こちらの話に、興味が沸いたのだろう。


「その通りです。封印は、妖怪もそうだけど、妖精にも効果的なの。ほぼ永久に身動きを封じるから、死ぬことと一緒よ。


 だけど、私たちは封印をすることはなかった。それなのに、彼女は死んだ」


「それは、どうしてですか?」


 阿求の嫌そうな顔を見て、紫はもう一度目をつむる。


「彼女自身の、内包魔力が全損したのよ」


「内包魔力の全損? ですが、本当にそれで妖精は死ぬのですか?」


 映姫の問いに、力なく頷く紫。


「ええ、死にます。先程、妖精は自然そのものと言いましたが、それはあくまで表現です。厳密には、妖精は自然が創りあげた妖怪なんですよ。そして、自然からの魔力供給によって再生するんです。


 ですが、魔力供給を遮断した状態で、魔力を全損させた場合、どんな妖怪も結果は変わりません。ですから彼女は死んだんです」


「なるほど、紫の言うことは一理ありますね。それなら確かに、妖精でも死んでしまいます」


「ええ。こうして、力ある妖精は死にました。ですが、彼女の使っていた力は生き残った。その力は、自然の摂理にしたがい、また別の妖精へと、受け継がれてしまった。そして、その力は、いまだに生き残っている。


 その力の名前は……ドラゴンメイル」






「はぁ……はぁ……」


「これは、どうしようもないかもな」


「……」


 チルノは、地面に跪いている魔理沙とパチュリーを、虚ろな目で見下している。


 チルノの姿は先程とは違っていて。竜の翼はさらに大きくなっていて、右手には、竜の頭を模した氷の彫刻が施されている。いたるところの皮膚には、氷の結晶が張り付いている。


「パチュリー……あれなんだかわかるか?」


「チルノ……」


「今そんなボケは求めてないんだよ! あの魔術がなんなのかって聞いてるんだ」


「わからないわ、私も初めて見るもの。構造は恐らく外装強化魔法だと思うけど、それ以上のものを感じるわ」


「そうか……」

 パチュリーでも知らない魔術、なら対処法もわからないな。どうする、もうチルノは大妖怪クラスの力を持っているか、もしかしたらそれ以上かもしれない。


 するとチルノは、右手を魔理沙立ちに突き出した。すると、竜の頭が口を開きだした。


「ちっ!」


 魔理沙はチルノの動き出しを見て、八卦炉をチルノに向けて構える。


「ダメよ魔理沙!」


「極冷 アブソリュートレイ」


 竜の口からレーザーが放たれた。大きさはマスパと大差ない。


「マスタースパーク!」


 八卦炉を砲台に、レーザーが放たれた。


 ちょうどチルノと魔理沙の間真ん中くらいで、両レーザーがぶつかった。両レーザーは、外側に余波が流れだし、押し合う状態になった。


「ぐっ! くっ!」


 最初は均衡をたもっていたが、次第にマスパが押しやられる。


「魔理沙! マスパをときなさい!」


「はぁ!? 今そんなことしたら」


「いいからときなさい!」


 いつになく剣幕な言いかたのパチュリーに、魔理沙は押し黙り、言われた通りマスパをといた。


「エメラルドメガロポリスト。四倍」


 パチュリーが、魔理沙の前の地面に大きな魔法陣を展開させた。そこから、翡翠色に輝く巨大な宝石の柱が出現させた。


 アブソリュートレイはそれにぶつかり、それを氷つかせる。


「あんなのどうすんだよ」


「ちょっと黙ってなさい!」


 魔理沙が泣きごとをパチュリーに言うが、パチュリーに怒鳴られ黙る。パチュリーは息を切らしながら、真剣にチルノを観察する。


「魔理沙……一つ賭けたいことがあるんだけど」


「賭け?」


 チルノは再度右手を魔理沙に向けると、魔力を高めた。


「あなたは私の前でマスタースパークを使って」


「けど、マスパはさっき押し返されたぜ」


「アブソリュートレイ」


 チルノの呟きと共に、絶対零度ほどの極低温のレーザーが、魔理沙たちに襲いかかる。


「迷ってる暇はないわ! 魔理沙!」


「ちっ! どうにでもなれ!」


 魔理沙が八卦炉をチルノに向けて構える。


「マスタースパーク!」


 かけ声と共に、レーザーがチルノに襲いかかる。


 しかし、互いの攻撃が衝突し、結局マスパが押される形になる。


「くそっ! パチュリー! どうすんだよ!」


「任せなさい」


 そう言うと、後ろから八卦炉を持つ魔理沙の右手に、自分の右手を添える。


「!?」


「いくわよ」


 パチュリーが、魔力を魔理沙と同調させていく。そして。


「転換。極炎 ロイヤルセロ!」


 パチュリーがそう言うと、魔理沙のマスパが一度途切れると、太陽のコロナを思わせる赤いレーザーが放たれた。


 それがアブソリュートレイを溶かし、押しきると、チルノを飲み込んだ。


 レーザーが細くなり、技が終了する。チルノは真っ黒い煙を纏いながら、真っ逆さまに落ちていく。


「今度こそ……」


「終わった……のか?」


 地面に叩きつけられたチルノを注意深く見るも、動く気配がない。


「やった!」


「むきゅ!」


 魔理沙が嬉しさのあまり、パチュリーに抱きつく。しかしパチュリーは魔理沙を支えることができず、そのまま二人は倒れる。


 だが突然、チルノの方から強力な魔力の放出があった。直ぐに振り向くと、なんとチルノは立ち上がり、魔理沙たちを見ていた。


 虚ろな目は変わらないが、髪を結あいていたリボンはほどけ、髪は濃い青に染まる。右手の彫刻は砕けていて、皮膚についていた氷の結晶も取れている。竜の翼も変貌していて、青く輝く粒子の塊のような、鳥の翼になっていた。


「…………」


「なっ…………」


 チルノの変わりように、言葉を失う二人。さらに、その魔力の高さに、かってに体が震える。


「…………」


 チルノが魔理沙たちに向かって歩き出す。その瞬間、翼が弾け飛んで、元の羽に戻った。


「…………」


 まるで、制御を失った人形のように、チルノはその場で倒れた。髪の色も元に戻る。


「…………」


「……いったい、なんだったんだ?」


 魔理沙が沈黙を破り、パチュリーに尋ねた。


「……さぁ? けど、もしあのまま戦っていたら。確実私たちは死んでたわね」


「…………」


 そのままチルノは、ピクリとも動かなかった。


阿求「次回の東方二重奏は!」


霊夢「アリスに襲いかかる刺客。お楽しみに」

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