世界中から嫌われた少女と愛された少年の出会い
あるところに一人の少女が居ました。
その少女は皆から嫌われ、恐れられ、家族も居なく、一人ぼっちでした。
そんな少女の前に一人の少年が現れました。
少年は誰からも愛され、期待され、誰から見ても幸せな子でした。
でもそうは思わない人が2人。
それは少女と少年自身でした。
少女と少年が初めて出会い、少女が少年に言った言葉はこうでした。
『お前、不幸だな。私みたいに嫌われてみろ。体が軽いぞ?』
少女がニヤリとしながらいったその言葉は少年に感動を与えました。
少年は自分が幸せだと思っていません。
皆から愛されている少年。
大人たち、子供たち、様々な人に愛された少年。
でも、少年は自分を幸せと感じず不幸と感じる。それは何故か。
その答えは余りにも簡単すぎて、少年は笑いながら言います。
『誰も俺自身を見ていない。見ているのは地位と顔と才能だけだ』
少年はその国の王の息子。そして完璧な美貌、頭脳を持っておりました。
だからです。だから少年は世界中に愛されたのです。
そんな少年に少女は言いました。
『お前、不幸だな』
と。その言葉に少年は感動しました。
今まで、一度も言われなかった、言って欲しかった言葉を言われたのです。
そして少年は呟きます。
『俺はもう、開放されたい。国民の期待からも、王の期待からも、何もかも。お前の様に自由になる事は俺には叶わない事なのだろうか・・・』
そう呟いた少年に少女は言います。
『その期待から逃れたいか』
少女は少年がその様に答えるのか分かっているのでしょう。
その口元には微かに笑っている様でした。
少年は少女の目を見て言います。
『逃れたい』
そう言った声は強く望む様な声でした。
少女が今度は見て取れる笑いを口元に浮かべながら言います。
『でわ、私と一緒に旅をするか?正し、私についてくる事になればお前さえ、世界中から嫌われる事になるだろう。もう自国には帰れないかも知れないぞ?それでもよいか』
そういう少女の声は少年を試す、その様な声に聞こえました。そして少年は考えてから言います。ハッキリと、決心をした声で。
『いい。俺はこの期待から逃れたい。逃れられるのならば、世界中から嫌われてやる』
その答えに少女は少し驚いた様な顔を見せました。この少年の意志がこれほどまでに強いとは思っていなかったのでしょう。
そして次に面白そうな笑みを見せ言いました。
『面白い。我が名はミサエル。名だけだ。私に家名などない』
そう言いながら少女―ミサエルは少年に手を差し出します。
『俺の名はラードイル・マヌー。家名は捨てるからラードイルだ』
少年―ラードイルはミサエルの手を握りながら言います。そして2人が握手した瞬間、あたり一面闇で見えなくなりました。見えるのはお互いの姿だけ。でもそれに驚くことは無い2人。そして少年が口を開きます。
『家名が無いのは寂しい。どうだ?俺たち2人の家名をつけないか?』
その提案にミサエルは少し考え込み、顔を上げ、言いました。
『いいだろう。家名はお前がつければよい』
その答えにラードイルは微笑み言いました。
『フリーダム』
少女はその言葉に何か深い意味があるのだろうか、と思いました。その様子にラードイルは微笑みながら言います。
『フリーダム。自由という意味だ』
その意味を聞いたミサエルは目を細め笑い、ラードイルの目を確りと見ます。そして言いました。
『フリーダム、か。なかなかいい家名だ。では宜しく元王子のラードイル・フリーダム』
『宜しく現魔王のミサエル・フリーダム』
この日、世界から嫌われている一人の少女と世界から愛されている一人の少年が出会いました。
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