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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第八章 魔法王国カスタの遺跡
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13

 夕食後。

 ジェイス達パーティはもう一度、男性陣の部屋で打ち合わせをした。

「さっき言ってた魔法陣だけど、あれは使えねえのか?」

 ジェイスは、昼間のアーカイエスの情報を蒸し返した。

「ちゃんとは調べていないが……。恐らく選別の呪文が記されていると思う」

 ララから余程小言を言われたのか、昼の態度を少し改めたアーカイエスが、淡々と答える。

「ってことは、ノルン・アルフルの血を継いでなきゃダメとかか?」

「その可能性は高い。そうなると、あちらを出口にした場合、こちらで描いた魔法陣から出られなくなる危険が出て来る」

「それに」と、クレメントが受け取った。

「選別の魔法陣は、解くのに時間の掛かるものもあります。ですが、今回は何とかしてそれを使うしかないでしょう。何せ、この大人数ですし」

「でも、どうやって……?」

 ララが不安そうにアーカイエスを見上げる。

「抜け穴はある。選別の魔法の裏をかく方法がな」

「えっ、そんなものあるの?」

 ニーナミーナが目を丸くしてアーカイエスを、次にクレメントを見た。

 ロンダヌスの王太子は小首を傾げる。

「僕も詳しい事は知りませんが……。確か、真名を使う方法があったかと」

「真名って、なんだよ?」

「王族や王位継承権のある貴族には、本名の他に帰属の神々に捧げた神聖名があります。それが真名です」

「あーあの、変な象形文字で書かれた名前か」

 ジェイスはぽん、と手を打った。

「でもあれって、何も意味ねえって親父からは言われてたけど。魔法に関係あんの?」

「ええ、大いにあります。真名はその名を持つ人の全てです。それを使えば、力のある魔導師、もしくは神官ならば、真名の人物を呪詛で殺す事も可能です」

「げっ! そんな大事なもんを魔法陣に書いちまって大丈夫なのか?」

 ジェイスはちょっと不安になって、二人の魔導師を交互に見た。

「力のある魔導師って、どの程度?」

 シェイラも、主の安全への配慮半分、自身の興味半分で尋ねる。

「真名を使った呪詛は、魔導師の場合七賢者クラスでも難しい技です。何故なら、呪詛に自分の真名なり血族名を使わなければならず、下手をすれば自分の命をも取られ兼ねないというリスクがありますから」

「って事は、力はあってもまずはやらないって訳ね」

 余程の恨み辛みがなければ、己の命と引き換えてまで相手を呪詛する馬鹿者はいない。また神官は、その職務の性質上、呪詛などすればたちどころに神聖魔法を使えなくなるだろう。

 ジェイスには、呪詛など出来る魔導師の恨みなど、今のところ買った覚えが無かった。

 尤も、惚れた覚えは大いにあるが。

 クレメントの説明に、シェイラとジェイスはひとまず安堵する。

「で、その真名はどういうふうに使う訳?」

 ニーナミーナが眉を寄せる。

「真名は、神との誓約、つまり神の加護を受けた名です。それには当然、神力というものがあります。神力は魔力や精霊力より遥かに強い力です。ですので、真名を入り口の魔法陣に書き込めば、出口の魔法陣の制約を打ち破る事が出来る、筈です」

「ただし、それにはその真名を持つ者が通過する時のみという制約が掛かる。真名の者が魔法陣を潜ると、書かれた真名は同時に消滅する」

 アーカイエスの補足に、魔法をよく知らない面々は「ほー」という声を漏らした。

「まてよ? ってことは真名を持っていない人間は魔法陣は使えねえってことか?」

「残念ながら、そうなります」

「じゃあ、この中じゃ使えるのは?」

 シェイラが、くるりと一同を見回す。

「真名を持っているのは、僕とジェイスの二人でしょう。それから、真名と同じ効力を持つ名前、聖名をお持ちの方が、二人」

 ニーナミーナが「あっ」と声を上げた。

「そっか。私はイリヤの神官だから、聖名を持ってるわ。それと……」

 彼女はララを振り返る。大人しい少女は、小さな声で「はい」と言った。

「私も、ファーレンの巫女の聖名があります……」

「ということで、魔法陣を通れるのは四人。で、残りをどうするかですが……」

「二人くらいなら、私が飛翔の魔法で運べばいいだろう」

 面倒くさそうに言うアーカイエスに、

「荷物じゃないわよ」とシェイラは口の中で呟いた。

「さて、魔法陣を使う事は決まりですが、それを描く場所が問題ですね」

「あ、それなんですけど」

 パッドが言った。

「町の北側の外れに、廃屋の民家がありました。あそこなら人目にもつきにくいんじゃないでしょうか?」

「なるほど。では明日にでも行ってみましょう。大丈夫ならそこで。もしダメなら、他の場所を考えましょう」

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