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「父上の許可が下りませんでしたからねぇ。一冒険者として、カスタに挑まなくてはなりません。それには、ミナイの紹介所の許可が要るんです。ローハンド子爵は、ミナイの紹介所にカスタ挑戦者の審査を、全面的に任せています」
「じゃあ、ミナイの紹介所の職員に、私達の技量審査をして貰わなきゃ、って事?」
面倒臭そう、と溜め息をついたニーナミーナに、パっドが「仕方ないよ」と優しく声を掛ける。
カスタは、魔物の巣窟だ。
余程腕の立つ冒険者でないと、侵入の許可は下りないだろう。
自分達に問題はない、とは思うものの、ジェイスは一応、クレメントに訊ねた。
「で、審査合格の決め手って、何なんだ?」
クレメントは、しかし少々意外な答えを寄越した。
「お金ですよ」
「……は?」
「お金?」
間の抜けた声で、同時に聞き返したジェイスとニーナミーナに、クレメントは苦笑した。
「貴族とは言え、ローハンド子爵の領地は、ここミナイを中心に半径六キロ、です。極小の領地といっていいでしょう。しかも、領地のすぐ隣が、古代遺跡にして魔物の棲み家のカスタです。
当然ながら土地は痩せていて、満足な作物も出来ません。従って、農民からの税など僅かなもの。
ならば、ロンダヌス国王から直々に得たカスタへの正式通行証の発行を、冒険者に高値で売って稼ごうと考えるでしょう。
また逆を言えば、高額を払って通行証を手に入れられる冒険者なら、それなりに危険な仕事もこなしている訳で、無茶な契約ではありません」
「なるほどな、そりゃそーだ」
ジェイス自身も、ランダスの貴族社会の中で育った。
金に汚い、とまでは言わないが、貴族達は多かれ少なかれ、非合法なやり方で金集めをしていた。
が、それが全て悪ではない。集めた金の大半は、己の領土の維持に使用されるのだ。
当然、領民のためにも使われる。
クレメントは、一同を見渡すと、
「では、これから紹介所へ行きますか」と微笑んだ。
「ちょっと待ってっ」と、シェイラが止める。
「実は、お昼ご飯を飛ばしちゃったのよ。だからこれから何か軽く食べましょうかって」
「うん。もー、お腹空いて死にそう」
ニーナミーナが、本気で死にそうな表情で訴える。
微笑を苦笑に変えて、クレメントは頷いた。
「そうですか。では食事が済んだら行ってみましょう」
ちょっと今回短めでした。すいません。