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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第八章 魔法王国カスタの遺跡
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2

 食堂は、四時という半端な時間だけに客はまばらである。いつも通り、パッドが先に席取りに出向いた。

 涼しい窓側の席を押さえようと、足早にそちらへと向かい掛けた時。

「こちらも空席ですよ? いかがです?」

 呼び掛けに振り向いたパッドは、相手を見て驚いた。

「クレメントっ!」

 パッドの声に、ジェイス達は慌ててそちらへ行った。

「やっと来たわねっ!」

「遅かったじゃなーいっ」

「済みません。予想通りというか、予想外というか、父上が僕に四六時中の見張りを付けてしまいまして。その護衛二人を巻くのに手こずりました」

「巻くって……。どうやったの?」

 ミナイまでの道中、ニーナミーナとパッドには、クレメントが父王と仲が悪い事や、そのために半ば強制的にロレーヌ城に閉じ込められる可能性もある事などは、話しておいた。

 勿論、ジェイスと結婚したいと王太子がほざいた件は、しっかり伏せた。

 クレメントなら、どれ程レオドール2世が閉じ込めようと図っても、まず間違いなく城から脱出するだろうとは、間近でその魔力を見ていたので疑いはしなかったが、何となく脱出方法に不穏なものを感じたニーナミーナが訊く。

 大胆な王太子は、殊更にっこり笑って答えた。

「ええ。ちょっと魔法をね。まあ、カエルになった程度ですし、4、5時間もすれば解ける魔法ですから」

 やっぱりそういう事か、と、一同は一瞬引き攣り笑いをする。

 たかが5時間でも、カエルの姿にはなりたくない。

 これからクレメントへの言動は十分注意しようと、全員心に誓った。

「ところで、紹介所にはみなさんもう行かれましたか?」

「いや、さっきついたばっかりだし」

 答えたジェイスに、クレメントはそうですか、と頷く。

 紹介所とは、職業斡旋所の事である。各国主要の街や村には大体あり、様々な職業の斡旋をしている。

 特に多いのが傭兵の斡旋で、傭兵を雇おうと言う貴族や商人は必ずここを通す。というのも、傭兵は殆どが流れ者で身分が定かではない。無闇に雇い入れて盗賊であった場合など堪ったものではない。

 紹介所では傭兵の素性や経歴をなるべく詳しく調べ、ある程度人柄を見た上で推薦状を書く。紹介所が身許引受け人になるのである。

 そのため、紹介所での審査は厳しい。傭兵の場合剣の腕も審査されるし、貴族などの私兵を希望する者には知識や教養の審査もする。

 逆に、幾つかの紹介所で審査を受け身分保障がされている傭兵は、仕事が的確で信用がおけると判断され、何処へ行ってもすぐに良い雇い主にありつける。

 ジェイスとシェイラは、フィアスの首都フィスの紹介所で一度審査を受け、一週間だったが荷運びの護衛をした。

「紹介所になんて、一体何の用があるんだ?」

 自分達は、これから古代遺跡の中へ入るのだ。今更仕事を請け負う暇などない。

 ジェイスの疑問に、クレメントは薄く笑った。

カエルって・・・(汗)

見張り役のロンダヌス兵も、災難でした・・・

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