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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第八章 魔法王国カスタの遺跡
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1

 ミナイの町はロレーヌから遥か西。移動は、日数にして六日程である。

 クレメントに色々な意味で度肝を抜かれたジェイスとシェイラは、その日のうちにロレーヌ城を出た。

 もう2、3日は滞在して行けというレオドール2世に、

「ウォーム神殿で待たせている従者もおりますし」と固辞せざる得なかった事に、少しだけジェイスの良心が痛んだが。

 ウォーム神殿で待機していたパッドとニーナミーナと合流すると、クレメントの言う通り、すぐに旅支度を整えた。

 ロンダヌスは、緩やかな丘陵と森が古代遺跡の近くまで点々と続く。町や村もそれなりに多いため、食料などの荷物は最小限で大丈夫である。

 ただ、何と言っても南国である。夏の日なたは他国の比では無い程の気温であるため、水分の摂取と、日除けの布は欠かせない。

 一行は駅舎で馬を借り、その鞍に水筒などをぶら下げて乗り歩いた。

 なるべく日陰を歩くようにしながら、六日目、漸くミナイへ到着した。

 町は、こじんまりとしてはいるが中々活気があった。

 町の入り口は東側にあり、厚い外壁と一体になった物見の塔が、門の左右に聳えている。

 大通りには店が立ち並び、広場には露店が幾つも出ていた。

 宿屋は比較的大きく、カスタへの冒険者が多く泊まるためであろう、一階には携帯食料やロープやランタンといった、遺跡探索の必需品を扱うスペースまで設けている。

 ジェイス達は、町で二番目に大きい宿屋『巨竜亭』に宿泊する事に決めた。

 案内を頼むと、レンガ造り三階建ての建物の、最上階の部屋へ通された。

 部屋の鍵は三つ。盗難防止だろうが些か多過ぎる気もしながら、ジェイスは鍵を受け取った。

「見て、カスタが見えるわ」

 窓辺に立ったニーナミーナが、硝子の向こうを指差す。

 そこだけどんよりと曇った空の下、商家の倉の高い屋根や物見台の間に、カスタの都の石の郭壁があった。戦いによってか、所々が崩れた壁は、かつての堅牢さを留めつつも、千年という長い歳月風雨に曝され、欠けた石の角が丸みを帯びている。

「凄いな……。本当にここは古代遺跡が近いんだな」

 パッドが、半ば感歎混じりに言う。

 ジェイスも、彼等の隣へ寄った。

「こうして見ると、ミナイの郭壁は分厚いんだな。町の入り口の門を潜った時はさほどとは思わなかったのに」

「でも普通より分厚い理由は、やっぱり遺跡からこの辺りまで妖魔が来るからかしら?」

 シェイラの言葉に、他の三人はぎょっとなる。

「……そういう、事なんだよね、多分」パットが、やや顔面を引き攣らせる。

 ニーナミーナは、ぷるぷると首を振ると、

「うっわー、何があっても夜は町の外へは出ない方がいいかも」と呟いた。

「はー、これからあの中へ冒険しに行こうって人間が、情けねえ」

 わざとらしく頭を抱えてみせたジェイスに、ニーナミーナが抗議した。

「そんな事言ったってっ! トラブルはなるべく少ない方がいいでしょうっ。それに、無駄な力は使わないっ、無駄な犠牲も払わないっ。先は長いんだからっ」

「ニーナミーナが正しいわね。ジェイスの負け」

 シェイラの行事采配で、ジェイスは「へいへい」と謝った。

 到着したのが正午で、宿決めや何やらで昼食を飛ばしていた一行は、夕飯までの繋ぎに軽く食事を採ろうと、階下へと降りた。

いよいよ、古代王国カスタの都市遺跡へ!!

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