表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第七章 王と王子
80/153

9

「たかだか魔導師一人捕えるのに、何故一国の王太子が出向くのだ? 大体、魔法が何だというのだ。七賢者の時代ならいざ知らず、今は武器も軍も当時と比べ物にならない程進んでおる。

 我が国の兵が探索に乗り出せば、そのような族、程なく捕える事が出来よう」

 父のその言葉を聞いて、クレメントは、まるで作り物のような笑みを浮かべた。

「なるほど、斬新な父上のお考えです。

 ですが、僕は承服し兼ねます。兵に最新の武器を持たせ賊の探索をさせても、恐らく戻って来るのは、最悪の場合兵の死体だけでしょう。そうなる前に、僕が賊を追い詰めると申し上げているのです。

 どうか、探索のご許可を——」

「何度言わせれば分かるっ!」

 ついに切れた国王が、大声と共に玉座から立ち上がった。

「ならぬと申したら、ならぬっ! そうまで申すならそなたは幽閉するっ!」

「父上っ!」

「陛下っ!」

 これにはさすがに、ユフィニア姫も廷臣達も顔色を変えた。

「兄上は王太子ですっ! たかが盗人の探索うんぬんで、王太子を幽閉などとは、言語道断ですわっ」

「国の面子にも関わります。陛下、どうかお考え直しをっ」

 両方から止められて、レオドール2世は両手の拳を握り締め、唸った。

 熱くなる父を前に、当のクレメントは涼しい顔で更に挑発する。

「父上は、何を恐れておいでなのです?」

「……何だと?」

 再び、レオドール2世の額に青筋が浮かぶ。

「僕の魔力ですか? それとも魔力などというろくでもないものを持った人間が、将来王位を継ぐという事実ですか?」

「おまえは……っ」

「二言目には、僕を幽閉なさるという。もし僕が王太子であるのが問題ならば、廃嫡なさればよいでしょう?」

「あっ、兄上っ!」

 血相を変えたユフィニア姫が声を上げる。

 更に言い募ろうとする妹を片手で制し、クレメントは続けた。

「さもなくば、僕が王位継承権を捨てればよいのです。……そうですね、降嫁してしまえば、ロンダヌスの法により継承権は無くなりますね」

 ジェイスは耳を疑った。

 降嫁? 男が?

「キリアン伯」

 名を呼ばれて、ジェイスは「はい?」とクレメントを見た。

 王太子はいつもの笑みを三倍増しにして、こちらを向いている。

「僕と結婚して頂けますか?」

「——……あ?」

 言われた言葉の意味がすぐに理解出来ず、ジェイスは思わず、頓狂な声を出す。

 一拍置いて。

 ユフィニア姫と居並ぶロンダヌスの廷臣、それにシェイラまでもが叫んだ。

こ、降嫁ーーっ!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ