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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第七章 王と王子
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5

 ロンダヌスの現国王レオドール2世は、今年で五十八、銀の長い顎髭と髪、それに水色の目を持つ大柄な人物である。

 若い頃は武芸に打ち込み、とりわけ剣技の腕をかなり磨いたという。

 その証拠に、壮年の現在でもよく鍛えられた肉体であることは、王の豪奢な衣装の上からでもよく判る。

 圧倒的な覇気を纏っている。

 その、覇気の塊のような国王は、一段高い御座から不機嫌も露に息子である王太子を睨み付けた。

「一体何時になったら、そなたは自分が大国ロンダヌスの王太子であると自覚するのだ?」

 クレメントは、頭を下げたまま動かない。

 が、後ろのジェイスとシェイラには、彼が小刻みに肩を揺らしているのが分かった。

 どうやら、忍び笑いをしているらしい。

 この状況で、よくも父親の勘気を笑えるものだと、ジェイスは呆れる。

「クレメントっ」

 レオドール2世が、答えぬ王子に焦れて怒鳴った。

 漸く、クレメントは顔を上げた。

「はあ。自覚はしているのですが、どうも好奇心の方が強くて、勝手に身体が動いてしまいます」

「……ようも、そんなとぼけた答えが返せるものだな。

 自覚しておれば、王太子が盗人を追い掛けて大陸の反対側にまで飛んで行くなどというバカな行為は出来ないと思うが?」

「そのお話し振りですと、もう父上のお耳にウォーム神殿の一件は入ってらっしゃるのですね?」

「入らいでかっ、ばか者がっ!」

 雷鳴のような怒鳴り声に、重臣達が首を竦める。

 ジェイスも、目を丸くした。

 だが、怒鳴られた当の王太子は涼しい表情で笑っていた。

「で、何処までお調べになったのです?」

「我が放蕩息子が、魔法石強奪の犯人と間違われ神殿兵と乱戦を行った挙げ句、遁走したというところまでだ」

「おや。では真犯人の情報は、全く?」

 あくまでとぼけるクレメントに、ロンダヌス王は大きく溜め息をついた。

「……そなたの、その厚顔無恥な態度は一体誰に似たものか。

 よいか、そなたは国の至宝とも言うべき魔法石を盗んだ嫌疑を掛けられた挙げ句、弁明もせずに出奔したのだぞっ。その上、ウォーム神殿の間抜け共は、王太子がよもやその様な大罪を犯す事は無いと、何度言っても聞き分けぬ。それを漸く説得し、昨日やっと新たに捜索隊を編制したのだ。

 わしの苦労が少しでも分かるなら、反省の態度を表さぬかっ」

「それは、申し訳ありませんでした」

 悪びれずに言う王太子に、居並んだ重臣も呆れたとばかり頭を振る。

 レオドール2世はもう一度大きく溜め息をつくと、ふと、クレメントの背後へ目を移した。

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