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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第七章 王と王子
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2

「結局、ウォーム神殿以降、賊とは遭遇しなかったなあ。奴さん、もうカスタへ入っちまったかな?」

 ジェイスは、明かり取りのためのレースのカーテンを引いた。

「魔法陣をあっちこっちに描いておきゃ、何処からでも自由に飛べるしな」

 ランダスではそれらしいものはついに発見出来なかったが、もしかしたらジェイス達が探していない場所に描かれていたかもしれない。

 コルーガに予想以上の妖魔が徘徊していた事から見ても、魔法石泥棒はまず徒歩でのロンダヌス入りはしていないだろう。

 ジェイスのその意見を、だがクレメントは否定した。

「それはどうでしょう。ノルン・アルフルは妖魔の使い手です。純血ではないにしても、ノルオールの子の血を継いでいれば、妖魔を操るのは可能かもしれません。それに、盗人は相当頭の良い魔導師です。魔力の配分については考えて動いている筈。ライズワースの女神復活呪文がどれ程の魔力を要するかは分かりませんが、恐らく飛んでもない力を必要とする筈です。

 とすると、簡単に魔力を消耗するような動きは、まず避けるでしょう」

「あの『血の標』ってのも、魔力を消耗するのか?」

「はい」

 クレメントは真面目な表情で答えた。

「剣士のあなたならお分かりでしょうが、傷付いて大量に血を流すと意識が薄らいで気力が萎えます。それと同じ、『血の標』を無闇にあちこちに描けばその分だけ己の血を流す事になり、必然的に魔力を低下させてしまいます。

 僕なら、ロンダヌスとランダスという、一番遠い距離の間だけを使って、後は徒歩か馬で移動しますね。その方が魔力を温存出来ますから」

「あんたが使ったあの魔法……。飛翔の魔法つったっけ。あれは?」

「ああ。あれもかなり消耗します」

「でも、一日二日休めば元に戻るもんじゃねえのか?」

 現に、クレメントは大陸の南から北を魔法で横断しても、そんなに消耗した感じはしなかった。

「それは、個人差がありますね」

 クレメントは笑った。

「僕は飛翔の魔法を使い慣れているせいか、割とあれで消耗はしませんが。でも滅多に使わない、あるいは苦手という魔導師なら、やはり消耗は激しいでしょう。魔法と言うのは、多分に精神的な所も大きいのです」

「へえ。そういうもんなんだ」

 コンコン、と、馬車の窓を叩く音がした。

「もうすぐ王宮です」

 警護の騎士の報告に、クレメントはありがとうと窓越しに微笑んだ。

クレメントがジェイスに魔法の講義をしただけで終わっちゃいました・・・


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