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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第六章 山の民2
68/153

9

 翌日。

 ジェイス達は朝食を貰うと、再び猟りに出るというリムについて長老の館を後にした。

 来た時とはまた違う通路を通り、今度は谷の南側へと出る。

 深い渓谷に掛かる吊り橋を渡り、リムは一行を、渓谷から森へ少し入った場所にある廃墟の神殿へと導いた。

「ここは?」

 シェイラが、首を傾げつつリムに尋ねる。

 リムはシェイラを見ずに、答えた。

「古い神殿だ」

 足早に中へと進むリムについて、ジェイス達も神殿内へと入った。

 かつては相当大きな神殿であったらしい。

 現在はドーム型の屋根は無惨に崩れ落ち、礼拝堂の壁を飾っていたらしい壁画も、何の絵が描かれていたのか判別出来ないくらいに欠け落ちている。

「何なんだ? ここ」

 辛うじて残っている床のタイルを見ながら、ジェイスは、先を行くリムに、シェイラと同じ問いを投げ掛けた。

「……古い、神殿だ」

 聞きたいのは、どういう謂れの神殿かということなのだ。

 リムが口下手らしいのは、ここ数日の付き合いでよく分かったが、それにしても素っ気ない返答に、

「そりゃ、見れば分かるよ」と、ジェイスは小さく突っ込みを入れた。

 祭壇の跡らしき場所の右の壁面に扉の残骸があり、その先は更に奥へ続く通路になっていた。通路の突き当たりに、地下へ降りる階段の入り口があった。

 リムが無言のまま、持参した松明に火を点けようとする。意図を察したクレメントがリムを制し、代わりに魔法で小さな火の玉を作り、宙に浮かべた。

 階段を下りるリムを先導して、火の玉がふわふわと暗闇を照らす。ついて下りたジェイス達は、いきなり広い空間が現れたのに驚いた。

「これは……」

 クレメントが魔法で小さな火の玉を更に幾つか作り、周囲に飛ばす。

 淡い明かりに浮かび上がった地下室の周囲には、見事な壁画が描かれていた。

「創世神話……。ウォーム誕生からパンドール降臨までの物語ですね」

「この部屋が何に使われていたのかは、俺には分からない。だが、ここの真ん中にあるものが何なのかは、幾らか分かる」

 リムは足早に部屋の中心へと進んだ。

 リムについていた火の玉が、リムが止まった足下を照らした。

「これは、王子、あんたなら使える筈だ」

 クレメントはリムの側へ寄ると、自らの魔法で照らされた床面を覗く。

「魔法陣、ですね」

「ええ?」

 ニーナミーナが小走りに彼等の所へ行く。

「あ、ほんと。魔法陣だわ」

 シェイラ、ジェイス、パッドもその床を覗き込んだ。

 小さな炎数個の明かりに浮かび上がったその床面は、周囲が白い石で埋められているのに対し、色タイルが嵌め込まれている。

 タイルは丁度大人の男が両腕を広げた程の半径の円を形作っていた。

「ふうん。中の模様っていうか、文字は、ロンダヌスで見たのと違うな?」

「当たり前でしょジェイスっ。あっちのはノルン・アルフル特有の魔法陣、こっちのは……」

 啖呵を切ったのはいいが、ものが分からなくてシェイラはクレメントを思わず見た。

 シェイラの困惑顔が面白かったらしく、ロンダヌスの王太子はくすくすっ、と笑う。

「これは、ウォーム神殿の魔法陣です。でも神聖文字ではなく、古代カスタの魔法文字で描かれていますね。この神殿は多分、カスタ時代に建てられたものでしょう。神々との戦でか、その後にか、利用されなくなって廃墟になったようです。けれど、この魔法陣はまだ立派に使えます。

 それを知っていたから、僕らをここへ連れてらしたんでしょう?」

 クレメントがリムを振り向く。サッドの若者は頷いた。

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