表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第五章 山の民
56/153

11

「ロンダヌスの王侯貴族は、先祖にトール・アルフルを持っている者が多いんです。彼の種族にももちろん王はいましたが、それは、王に選ばれた者が誰よりも一番よく森や精霊達を守れる、強い魔力を持っているからという事に他ならなかったのです。王だからといって他者を支配出来たり、他者から物を徴収していた訳ではない。王に与えられた特権は、

森の全種族からの尊敬、それだけでした」

 ジェイスには、よく分からない。

 もっとも、ジェイスは大陸の歴史や文化について、子供の頃から真面目に勉強していなかったのでかなり疎い。

 おまけに、人間とは違う種族の王の話など、皆目見当がつかない。

 それでも、強い魔力を持つ者、すなわち強者が王位に就く、という図式は理解できる。

 が、王に与えられた特権が、森の支配ではなく、森の住民の尊敬だけというのは、どうしても納得いかない。

 森や、その住民を守れるという事は、返して、森を支配しているという事実ではないのか?

 しかし、クレメントの表情からして、本当にそういった意味合いのものでは無いようだ。

「けど、王位は血統だった訳だろ?」

 納得し兼ねて、さらに尋ねる。

 クレメントは、ジェイスの心の裡を見透かしたように一度柔らかく笑むと、端正な声音で答えた。

「大方は。魔力の強さは血統でほぼ決定されますから。でも王の子でも魔力が弱かったり無かったりすれば、王の血筋ではなくても魔力の強い者が玉座に就く場合もままあったようです。

 それは、王に魔力が求められたカスタでも同じようでした」

「って事は、カスタじゃ王子じゃない奴が王位に就いてた?」

「はい。カスタは一千年、二十二代の王が出ていますが、その中で三人は王族ではない者が王位に就いています。それに、最後の王ライズワースは長子ではありません。長子はロンダヌスの初代の王で、彼はカスタの地方貴族の娘を母に持ち、魔力はありませんでした」

 驚きだった。

 魔法王国カスタでは、代々の王はもちろん、王の子供達も全員、魔導師だと思っていた。

 カスタに魔力の無い王子が存在していたとは。

 ジェイスは、目から鱗の心境でクレメントの美貌を見詰める。

 焦げ茶の目を真ん丸に見開いて自分を見ている大男に、クレメントはもう一度苦笑した。

「まあ、そういう事です。それより、話が大きく逸れちゃいましたが、ジェイスはどうして薬屋がお嫌なんですか?」

「え? ああ。あー……、それは……」

 言い澱んだ時。

 突然、背後の灌木の蔭から鋭い咆哮が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ