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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第五章 山の民
53/153

8

 レクからサゼを抜けフィアス属領ハイライへと至る道は、山道ではあるがよく整備されている。

 馬で急げるだけ急いでレクとサゼを通過すると、いよいよハイライへと入る道になった。

 大きな街があり森も切り開かれているサゼやレクとは違い、ハイライは深い森の中に小さな町や村が点在している。

 良質の木材を育て輸出して生計を立てているハイライは、なるべく森林面積を大きく取るため、町を最小限の大きさに止めているのだ。

 樹木が多く、樹影が濃ければ、妖魔の出没頻度は必然的に高まる。

 ボガードなどは、深い薮や灌木を隠れ蓑にする。

 そういった妖魔の出没を抑えるために、ハイライの林業者は、下草苅りや間伐はまめに行っていた。

 下草や灌木の手入れは、森の木を大きく育てるためにも必要だ。

「こっから先は徒歩で行こう」

 ジェイスの提案で、サゼ最後の駅舎で一行は馬を降りた。

 乗馬で妖魔に襲われた場合、応戦するより先に恐怖で暴れ出す馬の背から落ちる方が恐い。

 国境に到達すると、サッドの男達が言っていた通り、サゼの騎士団に出くわした。

「キリアン伯っ!」

 小さな監視小屋の周辺に集まっていた騎士の一人が、ジェイスを見付けて駆け寄って来た。

 サゼは、古くからランダスとは親密な国である。

 伝説となったティルス王の母も、当時のサゼ大公の姉であった。そういった縁で、両国は互いの国情に非常に詳しい。

 駆け寄って来た騎士と、ジェイスは特に顔見知りではない。が、サゼの騎士ならランダスの騎士団とは頻繁に交流があるので、何処かで出会っているのだろう。

「どちらに行かれるのですか?」

 髭面の屈強そうな騎士は、心配そうに尋ねる。

「ここから先は危険です。最近、妖魔が普段の倍以上出没するようになって——」

「ああ、そのことならレクでも聞いた。でも、ちっと急ぎの用なんだ」

「しかし……」

「通行止めを、しているのですか?」

 横からのクレメントの質問に、騎士は「いいえ」と首を振った。

「特には。しかし危険な事は通行人に話しています。出来れば引き返して頂きたいと」

「それは出来ねえな」

「そうですか……。ならばくれぐれもご用心下さい」

 騎士は一礼して監視小屋へ戻った。

 ジェイス達は街道へ戻り、ハイライへ入った。

 道は急に細くなり、沿道に巨木が並ぶようになる。

「すっごい。サゼとは全く違うわね」

 ニーナミーナが、迫るように生えている巨木を見上げながら言った。

「この道を馬で走るのは、ちょっと勇気がいるわね」

「荷物を運ぶのも一苦労だな。これだけ道がでこぼこだと」

 ジェイスも、道を横切る太い木の根に、感心すると同時に困惑する。

「……それにしても、大きな木ねえ」

「ニーナミーナ、あんまり上ばかり見てると、木の根に躓くよ」

 心配そうに彼女を振り返るパッドが、逆に木の根に足を取られる。

「おっと」

 隣を歩いていたジェイスが、素早く青年の腕を掴む。

「あっ、すいませ……」

「なあによ、私よりパッドの方が危ないじゃない」

 黙って見ていたシェイラとクレメントが、揃って苦笑した。

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