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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第四章 囮
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6

「では、改めて自己紹介して頂いてよろしいですか?」

 笑顔を深めて、クレメントは自分から始めた。

「僕はクレメント・エディン・ダルタニスです。一応魔導師です。以後はクレメントと呼んで頂いて結構です」

「俺はジェストロッド・キリアン・カーライズ。剣士だ。ジェイスでいい」

「私はシェイラ・ラトランス。傭兵だったけど、今はキリアン伯の従者よ。……って、仲間なら、従者じゃないわね」

 付け加えたシェイラに、皆が軽く苦笑する。

 ニーナミーナが、改まった顔で続いた。

「私はニーナミーナ・ワッツ。先程殿下……、じゃない、クレメントが言ったように、神官戦士よ。あと、イリヤ神特有の魔法も幾つか使えるわ」

 それを聞いて、クレメントが銀の瞳を大きくした。

「では、『勇者の声』が唱えられますね?」

「何だそれ?」

 分からない、と眉を顰めたジェイスに、パッドが説明した。

「『勇者の声』は、敵がその呪文を聞くと震え上がり、味方が聞くと勇気が出るという、特殊な呪文です。妖魔の咆哮と近いですね」

「咆哮——?!」

 この美人が妖魔のように吠えるのかと想像して、ジェイスは思わずのけ反る。

 察したシェイラが、

「そんなことある訳ないでしょ。呪文よ、呪文」

 と、長身を睨み上げた。

「『勇者の声』は妖魔にも効き目があります。カスタの古代遺跡の中は妖魔だらけですから、それを唱えられる人がいるのは助かります」

「じゃあ、カスタの遺跡に行くの?」

 ニーナミーナが、ぱっと顔を輝かせた。

「ええ、最終的には行かなければならないでしょう」

「うわあっ。私一度は行ってみたかったんだ。楽しみー」

「ニーナミーナ……。ピクニックじゃないんだよ」

 嗜めたパッドが、最後に自己紹介した。

「私はパッド・ローエンです。イリヤ神殿警護の騎士です。よろしくお願いします」

 堅いよ、と囃したジェイスに、シェイラは言い過ぎだと小言を言い、パッド本人は金色の頭を掻いた。

 一通り挨拶をし終わり、一同は出口へと向かった。

 門への道を行きながら、ニーナミーナがシェイラに尋ねる。

「これから何処へ?」

「フィルバディアよ。カスガの館に用事があるんですって」

「えー? 魔法石はもう無いのに?」

 ニーナミーナの尤もな意見に、パッドもジェイスを見る。

 ジェイスは溜め息混じりに、

「クレメントが行きたいってんだよ。言い出したら聞かないからな、このご仁は」

「……やっぱ、殿下なんだ」

 小さく揶揄したニーナミーナを、クレメントは「ええ」と恐いにっこり顔で振り返った。

「ま、そういう事ですので、これから出発します」

 先頭を切って歩き出したクレメントの後を、一同は溜め息をひとつ落としてついて行った。

ほんと、ピクニックじゃありませんよー、ニーナミーナ(笑)

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