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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第三章 ノルオールの子たち
30/153

6

 ジェイスとシェイラは、二人の背後に立った。

 神官長の隣に座った騎士団長が、一同を改めて見回した。

「しかし、ロンダヌスの王太子殿下にキリアン伯とは、こう申し上げてよいのか、そうそうたるお顔触れですが……」

「さて、その事です」

 公は、ひとつ咳払いをした。

「本日午後、ロンダヌスでも魔法石盗難の騒ぎがあったのです」

 公は、先程クレメントから聞いた経緯を、かいつまんで神官長と騎士団長に語った。

 静かに聞いていた神官長は、公が言葉を切ると心痛な面持ちで言った。

「……そのような事件が。では、殿下はその賊を追ってランダスへ参られましたのですか」

「ええ。ですが、相手の方が一枚上手だったようですね」

 答えて、クレメントは苦笑した。

「僕は神殿にも魔法石があるのを、知りませんでした」

「それが、私どもも不思議でならないのです。カスガの石は、賢者のたっての頼みで所在を極力外部に漏らさぬようにしておったのです。恐らく、今度のような事を賢者は懸念なさって、そうおっしゃられたのだと推察されます。さて、それがどうして……」

「で、石のあった場所は?」

「この部屋の、右隣の部屋です」

 神官長の案内で、一同は隣室へと移った。

 普段は使用されず、鍵が掛けられているという部屋だが、今は開けられ、四、五人の騎士と神官が中と外を見張っている。

 神官長は、中で調査の指揮を執っていた年配の神官に断り、ジェイス達を招き入れた。

「ここです」

 先に入った騎士団長が、室内西側の壁を指差した。

 そこには五十センチ四方の大きさの鉄の扉があった。扉は左側に輪の形の取っ手があり、鉄枠に取り付けられた同じ輪と太い錠前で括られ開かないようにされている。

 だが、賊は錠前は壊さず、扉の中央に男の拳より少し大きい穴を空けていた。

「こりゃすげえ」

 ジェイスは思わず前へ出て、扉を触ろうとした。

 と、足先に堅い物が当たった。

「あり?」

 二十号程の大きさの、金箔張りの額縁に収まった風景画である。

「この扉の上には、その絵が常に掛けられてあります。絵は、我々が連絡を受けて部屋に入った時にはそのように——」

「外されて下にあったのですか?」

 クレメントの質問に、騎士団長は頷いた。

「この絵の裏に隠し扉がある事は、神殿内の者しか知りません。他の場所を荒らした形跡も無く、賊は真っすぐこの部屋の、この扉だけを目指して来ております。という事は……」

「では、騎士団長は、神殿内の誰かの仕業とお考えですか?」

「……残念ながら」

 カーライズ公が小さく唸った。

「この大穴、ユガーの戦斧でも鉄扉をこんな風には出来ないぜ?」

 ジェイスは絵を足で左の方へ押して、穴を覗く。

「火薬で爆破したのか?」

 に、しては、硫黄の臭いがしない。

「魔法です。破壊の術は、やはりそれなりに魔力が無いと使えない魔法です」

 クレメントの言葉に、ジェイスは「ほおぉ」と感心する。

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