表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第三章 ノルオールの子たち
27/153

3

「『怒りの女神』ノルオールがノルン・アルフルを造ったのは分かった。で、その生き残りだか血を継いだ奴が、カスタ最後の王の呪文を完成させてノルオールを復活させようとしてるのも分かった。けどよ、どうしてノルン・アルフルは、ノルオールを復活させたい訳? 何が奴らの得になるんだ?」

 彼の問いに、クレメントは少なからず拍子抜けした。

 騎士であるジェイスが、魔法を知らないのはいい。が、子供でも知っている『怒りの女神』ノルオールの伝説や、その恐怖を知らないとは。

 拍子抜けしただけでなく、キレた人物が部屋の中にもう一人居た。

「……ジェイス、それ、本気で言ってるの?」

 シェイラは、カーライズ公には聞こえないよう小さな声で唸った。

「あのですねっ、ノルオールはノルン・アルフルの生みの親なんですの。という事は、女神が復活すれば、ノルン・アルフルの闇の魔力も強くなるんです。再びウォームの勢力、つまり我々ですね、を退け大陸を制圧出来るかも知れないんです。お分かりですか? ご主人様」

 シェイラが怒っている時に出る、普段絶対使わない丁寧な言葉遣いでこんこんと言われ、ジェイスは、黙ってこくこくと頷いた。

「けれどどうして、カスタ王のライズワースがノルオールの復活を望んだのでしょう?」

 ソルニエスが、心配そうに言った。

「殿下は先程、ライズワース王がノルン・アルフルの血を継いでいるとおっしゃいましたけど、それに関係あるのですか?」

「ええ」

 クレメントは、美しい顔に憂いを履く。

「それが一因である事は推測出来ます。しかし、彼とカスタに関する古文書には、彼がスピルランドの姫を母に持っており、ノルン・アルフルの血を濃く継いでいた事と、それまでのカスタ王を遥かに凌駕する強大な魔力を有していた事、それ以上の詳細は書かれていません。ただ……」

 ふっと、クレメントは口を閉ざした。

 その先は、自分を投影した憶測に過ぎない。ライズワースが、その魔力故に、己と同じ辛さを抱えていたかどうかは、定かではないのだ。

 言い掛けて止めたクレメントの横顔を、ジェイスはそっと覗いた。

 やや俯けていた顔を、クレメントはいつもの笑顔と共に上げる。

「いえ。まあ、ライズワースの動機は、今回の件に直接関係ありませんし。要は早いところ盗賊を見付けて石を取り戻せば大丈夫です」

「そりゃ、そうだけどさ……」

 急に話を変えた王太子に、いまいちすっきりしないものをジェイスは感じた。

「賊がライズワースの呪文を発動させるために魔法石を集めているのなら、やはり神殿の一件も無関係ではないでしょうな……」

 カーライズ公は、苦いものを舐めたような表情で言った。

「では、先程の神殿からの使者は、やはりそれに関係しているのですか?」

 クレメントは公を見る。

「はい。……実は我が国には王家に伝わる石とは別に、もうひとつ魔法石がありました」

「それは……?」

 ジェイスも初耳である。彼とシェイラ、クレメントの三人は、カーライズ公の次の言葉を緊張の面持ちで待った。

「イリヤ神殿に、七賢者の一人カルクトゥース・カスガの魔法石『颯』がありました。先程の使者は、その魔法石が何者かに持ち去られたとの火急の報告です」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ