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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第二章 帰還
22/153

10

「よく、戻られました」

 玉座から、甲高い子供の声が返った。

 ランダス現国王ソルニエスは今年11歳。

 幼いが大人に負けぬ胆力と思慮の持ち主で、補佐役の兄共々、ソルニエスが最もこの国の主にふさわしいと、ジェイスは思っていた。

 ジェイスは「顔をお上げなさい」という国王の言葉に従い、目線を上げた。

 高い背凭れを持つ、大きな肘掛け椅子の玉座にちょこんと腰掛けたソルニエスは、自分と同じ赤毛をした大男の従兄に大きな青い目を細め、愛らしい笑みを作った。

「元気そうで何よりです、伯爵。して、今日はどうしてまた急に戻られたのですか?」

 説明しようとジェイスが口を開く先に、カーライズ公の厳しい声が飛んできた。

「と、いうより、何故戻って来たのだっ!」

 濃紺の長衣を纏った公は、神経質そうな端正な面立ちを険しくして、腹違いの弟を見詰める。

 前カーライズ公の先妻の子である兄ジークリードは、後妻の、先王の末の妹姫の子でランダス王家の血を引くジェイスとは違い、黒い髪をしている。

 肩まで伸ばした真っ直ぐな黒髪と、父譲りの端正だが峻厳な面差しが、如何にも厳格で勤勉な彼の性格を表している。

 兄は、その容貌の通り、自身はもちろん、他人に対しても手抜きやいい加減を許さない。法を厳守しこれを重んじる事を是とし、誰よりも徹底している。

 それは大切であり、決して間違ってはいない。

 だが、根が気楽なジェイスとしては、もう少し気を抜いても良いのではないかと、時々ジークリードを見ていて思う。

 幼い王の補佐という難しい仕事をきっちりこなす兄は、間違いなく誇れる兄であり、弟として全幅の信頼を置いている。

 が、正直言うと、ジェイスはジークリードのこの峻厳な性格が苦手であった。

「私が、あれ程ほとぼりが冷めるまでは戻ってはならぬと言ったのに。おまえは人の話を何と聞いていたのだっ」

 厳しく叱責する摂政を、だがソルニエスが柔らかく嗜めた。

「公、伯爵が危険を冒して戻られたのには、それだけ重大な理由があるのでしょう。まずは伯爵のお話を伺いましょう」

 カーライズ公は、はっとしたように君主を振り返ると、「はっ、申し訳ございません」と、頭を下げ一歩下がった。

 ジェイスは思わず目を見張った。

 半年見ていなかっただけで、ソルニエスはもうこの兄を押さえられるようになっているとは。

 幼い王の才気に、改めて感服する。

 本当に、彼は将来良い王になる。

 そう思ったのは、ジェイスだけではなかった。

「ランダスの国王陛下は、お若いのに物事がよく解っていらっしゃる」

 彼の斜め後ろでシェイラと並び控えていたクレメントが、不意に言った。

 カーライズ公が、初めて気が付いたという表情でそちらへ目を向けた。

「ジェイス、どなただ?」

「あ、えーと……」

 クレメントを、ロンダヌスの宮廷魔導師という怪しげな肩書きで紹介していいのかどうか迷っていると、いきなりソニー王が玉座を飛び下りた。

「陛下っ?」

 カーライズ公が慌てて呼び止めるが、ソルニエスはすたすたとクレメントの方へ歩いて行く。

 そして、若者の前で止まると優雅に手を差し出した。

「ようこそおいで下さいました、ロンダヌスの王太子殿下」

「王太子、殿下?」

王太子、殿下・・・(汗)

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