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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第十二章 王女の葬送
145/153

5

「はっ!」

 女剣士がジェイスの背に飛び掛かるのと、ジェイスの剣がアーカイエスの頭上を掠めるのが、同時だった。

 空を切った剣に、シェイラは、あっ、と声を上げる。

「ジェイスっ?」

「ばあかっ!」

 背に回した彼の剣帯を掴んでいるシェイラに向き直り、ジェイスはべろっと舌を出した。

「俺が本気で斬るかよっ」

「え?」

 大きな悪ガキに驚いているシェイラににやりと笑うと、彼はいきなりアーカイエスの外套の襟を掴んだ。

「ふざけんなってのっ! なあにが残ったのが罪だけだっ? あんたの目は節穴かっ! 今誰があんたを庇ったよっ! 誰も自分を怖がって近付かなかったなんてっ、じゃあ、今あんたを必死で助けようとしていた、この可憐な娘は何なんだっ! こんなに心配してくれる人が居て、これ以上何が不満だってんだっ!」

 きょとんとする魔導師に、更に捲し立てる。

「大体、あんた本気でノルオールを復活させようって思ってたのかよっ? だったらどーして、俺らと手なんか組んだっ? ほんとはクレメントに止めて貰いたくて、いろんなとこに自分の影バラ撒いてたんだろーがっ!」

 さあどうだ、と睨むジェイスに、アーカイエスは目を伏せた。

「そう……、かもしれない。私は、自分の愚行を誰かに止めて貰いたかったのだ」

「本気じゃねえあんたを止めるために、みろっ、クレメントは全身全霊、自分の力を使い果たした。あんたにあいつ以上の覚悟があったか? 無かったんだろ? 無いのに、死にたいなんてぬかすんじゃねえっ」

 突き飛ばすように、ジェイスはアーカイエスを放す。床に手を付いた魔導師は、力無く上体を崩した。

「アーカイエス様っ」

 ララが、脱力した彼の肩を心配そうに抱く。

「ったくよっ」

 ジェイスは短く吐き捨てると、大剣を鞘に戻した。

 シェイラは、普段はぼーっとして掴みどころがないが、いざという時にはこうしてどえらい啖呵が切れる主を、改めて見直す。

 口元を緩めて自分を見ている女剣士に、ジェイスは肩眉を上げた。

「んだよ?」

「いえ。大したものだと思って」

「何だよ、俺だってたまにはいいことするんだぜ?」

「そうね。忘れてたわ」

 おいおい、と渋面になるジェイスに、シェイラは軽く笑った。

「さて、こっちは何とかなったけど……。問題はあれだな」

 ジェイスは足早にクレメントの側へ戻ると、もう一度王太子の貌を覗く。

 美しい貌は、だが長い睫の先すらも、ぴくりとも動かない。

「参ったな……」

 暗胆たる思いで呟くジェイスに、シェイラも「そうね」と頷いた。

「とにかく、ここから出なけりゃ。——って言っても、何もかも壊れちゃってるけど」

 シェイラは立ち上がり、ぽっかり開いた大穴を見上げる。

「……何だか、巨大なスープの深皿の底に居る気分ね。ちょっと強い雨でも降って来たら、私達溺れるわよ」

「そいつぁ不味いなあ」

 ジェイスは渋い顔で言った。

「足掛かりがありそうなら、仕方ねえ、俺がクレメントを背負って上がるか」

「僕、周囲を見て来ますっ!」

 ジェイスにクレメントを預けパッドが駆け出そうとした時。

 すっかり打ち萎れていたかに見えたアーカイエスが、声を上げた。

ジェイスもたまには頼りになる・・・?

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