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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第十二章 王女の葬送
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2

「魔法陣がカーナを包み、黒の魔法石に呪文と共にノルオールの魂を注ぐ。その手助けをする杖を、台座に立てるのだっ!」

「あんの野郎っ!」

 ジェイスは手を耳から離し、大剣を構えて二人に駆け寄る。

「駄目っ!」

 アーカイエスに斬り掛かろうとする大柄な男に、ララは飛び着いた。

「離せっ!」

「ララっ!」

 ジェイスの声に驚き娘を見たアーカイエスの手を、クレメントは振り払う。

「なっ……」

「我が祖先の気高き精霊の王よっ、我が血を誓約として我に力を貸し与えよっ!」

 それは呪文ではなかった。

 断固として怒りの女神を復活させまいという己の想いを魔力に変え、クレメントはライズワースの杖を、神気を増幅させている白の魔法石に向ける。

 彼の身体が真っ白な光に包まれる。

 先刻の、光の精霊ものとは明らかに違う。

 クレメント自らが発した光は銀の粉をまぶしたように煌めきながら彼の周囲を螺旋に回り、杖の先に嵌められた宝珠に集まり魔法石へと伸びて行く。

 黒い光を吸い込み増幅させていた白の魔法石は、真反対の質を持つ魔力を受けて鳴動を止める。

 黒い魔法陣に囲まれていた室内が、光の精霊を召還した時同様、白い光に包まれた。

「やったっ!」

 悲鳴のような音に悩まされていたニーナミーナは、鳴動が止まったのに手を打って喜ぶ。

 このままでは神気が霧散してしまうと判断したアーカイエスは、己の負の魔力でクレメントの力を排除しようと呪文を唱える。

「光を駆逐し闇に変えよっ。玄光弾っ!」

 闇の神気と同質のノルン・アルフル特有の魔力が、魔法石にぶつかる。

 一瞬、クレメントの魔力が弾き飛ばされた。

「くっ!」

 しかし彼は、再び杖を握り直し魔力を注ぐ。

 白い光と黒い光が、魔法石の中と外でせめぎあう。

 石が細動し、それに連動して魔法陣も揺れ始める。

「何か、やばくねえかっ?」

 クリスタル・パレス全体が先程とは違った鳴動をし始めて、不安になったジェイスがシェイラを振り返ったその時。

 部屋のみならず、塔全体が間延びするような奇妙な感覚が全員を襲う。

 細動していた魔法石が二、三度大きく揺れ、音も無く砕け散る。

 石が吸い込んでいた神気とクレメントの白の魔力、そしてアーカイエスの黒の魔法が、猛烈な勢いで周囲に広がる。

 それは、硝子の塔のほぼ全てを破壊し、カスタの四分の三にまで広がった。

 後に『カスタの閃光』と語り伝えられるようになる魔力の爆発は、塔から北西、南西、南東の位置の遺跡に残っていた三個の赤の魔法石を破壊し、徘徊していた妖魔の大半を消し去った。

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