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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第十一章 怒りの女神
137/153

11

 踊り場から下の階段は長い螺旋状になっていた。ジェイス達は、一挙に下まで駆け降りる。

 下に着くと、上階と同じく短い通路を挟んだ先に、中央の部屋があった。

 だが、部屋の前には黒い大きな扉が立ち塞がっている。

 ジェイスは、金具の取っ手を掴み前へ押した。が、重そうな扉はびくともしない。

「ちっくしょうっ。また魔法かよっ」

「どうする? シェイラ」

 ニーナミーナが不安な表情で年長の彼女に尋ねる。

「そうね、押してダメなら引いてみたら?」

 言われて、ジェイスは今度は取っ手を引いた。しかし、結果は同じである。

「開けっ、て怒鳴っても開きませんよね……」

 パッドが金色の頭を掻く。

「おもしれー事言うな。言ってみるか?」

 ジェイスは大きく息を吸い込むと、思い切りよく怒鳴った。

「開けっ!」

 と。

 ぎいっという金属の蝶番を軋ませて、内側から扉が開いた。

「うそっ、マジに開いたわ」

 ニーナミーナは、半分笑って口に手を当てる。

 ゆっくり開く戸に焦れて、ジェイスは肩で押すようにして中へと入る。

 円形の部屋の真ん中に台座のようなものがあり、その近くにアーカイエスが立っていた。

 彼の正面にはクレメントが、身動き出来ない状態で蹲っている。

 彼の周囲には、何やら黒いもやのような物が、薄く取り巻いていた。

「クレメントっ!」

「これは。さすがランダス一の豪傑。見事妖魔の大群を蹴散らして来られたな」

「きっさまっ! クレメントに何やったっ?」

 アーカイエスは、勢い込むジェイスに低く笑う。

「私の言う事を聞いて頂けないのでね。ちょっと困らせているだけだ」

「んだとおっ?」

 寄ろうとするジェイスを、だがクレメントは苦しみながらも大声で止めた。

「来てはなりませんっ! これは、バンシーですっ!」

「バンシー……?」

 きょとんとするジェイスに、シェイラが言った。

「取り憑いた人間に絶望と悲しみを味わわせるという、悪しき精霊よっ」

「近付いたらジェイスも取り憑かれるわっ!」

 ニーナミーナが、悲鳴に近い声で叫んだ。

「だったらどーすりゃいいんだってのっ!」

 苛立って、ジェイスは片足を踏み鳴らす。

「精霊は、術者が死ねばその術から解放されるって聞いてるわっ」

「なんだって?」

「悪しき精霊を操れるのは、ノルン・アルフルのみよっ」

「ってことは……っ!」

 シェイラの説明を聞いて、ジェイスは王の大剣を構えアーカイエスを睨む。

 自分に切っ先を向けた剣士に、黒い魔導師は不適な笑みを見せた。

「ほう? 私を斬るというのか。ランダスの英雄伯爵殿は」

「おうっ、斬られたくないなら、クレメントから精霊を退けろっ!」

 ジェイスは、相手の赤い目を睨んだまま、じりっ、と前へ出る。

 アーカイエスの背後に立つララが、今にも悲鳴を上げそうな表情になっている。

 黒い魔導師の右手が、ゆっくりと上がった。

 魔法が来ると踏んだジェイスは、気合いを込めて柄を握り直す。途端、柄の先端に嵌められた魔法石がジェイスの闘気に反応し、王の大剣の刀身が白く輝き出す。

 アーカイエスの掌から、鋭い閃光が迸った。

 同時に、ララが悲鳴を上げる。

「逃げてっ!」

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