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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第十一章 怒りの女神
134/153

8

 ニーナミーナの『勇者の声』の援護を受けて妖魔の群れに突っ込んだジェイスは、閃光の如き動きで通路の奥の魔物を悉く切り捨てた。

 最後に、小部屋の入り口で頑張っていたライカンスロープを叩き伏せ、中へと飛び込む。

「うっげえっ!」

「どうしたのよっ?」

 急に足を止め妙な声を上げた主を、彼の背後を守っていたシェイラが振り返った。

「何だこいつはっ?」

 女剣士は、ジェイスの脇からひょいと中を覗いた。

 そこには、八つの首を持つ巨大な蛇が部屋一杯に蠢いていた。

「ヒドラっ!」

 シェイラは悲鳴に近い声で叫んだ。

「さっきから出て来る魔物の数が急に減ったと思ってたら、こんなのが居座ってたからかっ!」

 ジェイスとシェイラの声に気付いたヒドラは、八つの首を一斉にこちらへ向ける。

「ちゃーっ、しょーがねえっ。一個ずつちょんぎるかっ!」

 ジェイスは大剣を構えると、大蛇に躍り掛かろうと身構えた。が。

「ダメよっ!」

 シェイラが慌てて彼を止めた。

 それと同時に、ヒドラが大きく口を開き、黄色い息を吐く。

「息止めてっ!」

 シェイラは後ろを向いて、息を止めた。

 ジェイスも咄嗟にそれに習う。

 ニーナミーナが通路へと駈けて来た。

「我が聖なる盟主イリヤよ、御身の力持て邪悪なる気を浄めたまえっ! 光砂聖浄っ」

 神聖魔法が発動し、金色の砂粒のような光がヒドラの毒の息の上に撒かれる。と、瞬く間に黄色い毒が消え室内の空気が清浄になった。

 己の攻撃を無効化されて、怒ったヒドラが中央の頭の口を大きく開けた。

「もう一発来るわっ」

「任せてっ!」

 シェイラが魔法を唱えた。

「火球っ!」

 彼女はヒドラの口の中目掛けて火の球を投げ込む。口を焼かれた中央の頭は、奇怪な甲高い咆哮を放ってのたうち回る。

 その隙に、ジェイスの剣が他の頭部を斬り飛ばした。

「ヒドラの頭は、斬られてもまた生えるわっ」

 シェイラが注意する。

「じゃどーすりゃいいんだってっ!」

「斬ったら焼くのっ!」

 透かさず、シェイラは火炎でジェイスの切り口を焼いた。

 再び、ヒドラが毒を吐く。今度はニーナミーナが先に神聖魔法を唱えた。

 皆が息を止める間も無く、空気は浄化される。

 後方で控えて、ヒドラの動きを観察していたパッドが叫んだ。

「そうかっ! ヒドラは大き過ぎて身体が全部魔法石から出ていませんっ! そのせいで他の魔物が出て来られないんじゃないでしょうかっ?」

 彼の言葉に、ジェイスは動きを牽制しながら妖魔の背後を見た。

「なるほどっ! 確かにこいつ、尻が魔法石の作る空間の裂け目から出てねえわっ!」

「ジェイスっ、ヒドラごと魔法石を斬っちゃってっ!」

 ニーナミーナが、噛み付きに首を伸ばして来た頭に光球弾をお見舞いする。

「っつってもなあっ」魔法石を斬るだけでも大変なのに、こんな大物の魔物まで同時に斬れるものなのか……?

 暫し逡巡するジェイスに向かって、四つ目の首が突進して来る。

 気が付いたジェイスは、柄を握り直すと、大きく口を開けて自分に食らい付こうとしていた首を寸でで落とした。

 シェイラが傷口を焼こうと呪文を唱える。

 だが、魔物もさるもの、そのパターンに気が付いて、彼女の詠唱を邪魔するべく、別な頭がシェイラだけを狙って毒を吐く。

 呪文のために息を吸い込んだシェイラは、撒き散らされたヒドラの毒息をもろに吸い込み、その場に倒れた。

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