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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第十一章 怒りの女神
131/153

5

「ねえっ、ここの階って、下への階段って何処にあるの?」

「知るかっ!」

「さっきちらっと見たら、通路は上からの階段の部屋のと、この部屋へ入る二つ、それと妖魔が入って来たのとでしょ。で、二つは、見たら先に部屋が無いから、残るは妖魔が入って来た部屋じゃない?」

 この乱戦のさ中に、よくそんなものを見てられたなと、ジェイスは呆れる。

 呆れながら、ボガード三匹を大剣で薙ぎ払った。

「じゃ、妖魔が沸いて出て来たとこに階段があるってのかっ?」

 ニーナミーナは、モーニングスターの鎖でライカンスロープの首を絞めながら答えた。

「多分。だって他に無いでしょ」

「ニーナミーナっ、ジェイスっ!」

 台座の脇でユガー相手に奮戦していたパッドが言った。

「判りましたっ! 石ですっ。多分、妖魔がこんなに出て来たのは、アーカイエスが言っていた赤い魔法石が原因ですっ!」

「そうかっ!」

 後方から来る妖魔に火球を連続で浴びせて、シェイラが手を打った。

「魔法石よっ! それを壊せば妖魔は出て来なくなるわっ!」

「どーやって壊すんだよっ! 七賢者だって、強力な魔法でやっと壊したって……。うわっ!」

 ユガーの斧が肩先を掠り、ジェイスは咄嗟に壁際に逃れる。

 二撃目の斧が壁に食い込み外れなくなった妖魔の首を、彼は大剣で突き通した。

 どうっと、大型の妖魔が床に倒れる。

 それを避けつつ、ニーナミーナが言った。

「ランダスの大剣、使ってみたら?」

「……あ?」

 入り口に殺到し過ぎて入って来られない妖魔達を睨みながら、ジェイスは言い返した。

「この剣で斬れってか?」

「伝説では、アーバイン王はファーレン・レイムの魔法の炎をその剣で斬ったって言われてるわよ? もしかして頑張れば魔法石も斬れちゃうかも」

「ってもなあ、さっきクレメントがここの仕掛けは神々の力じゃねえと止まんないって……」

「じゃあどうすんのよっ!」

 ニーナミーナに怒鳴られて、ジェイスは唸った。

 混雑から抜け出したボガード数匹が、突進して来た。

 そのすぐ後ろから、ライカンスロープとユガーが入って来る。

 予断無く構えながら、ジェイスは考えた。

 ニーナミーナの言う通り、魔法石の力なら魔法石を割れるかも知れない。

 だが、どうやって?

 自分は魔導師ではない。

 ライカンスロープの鋭い牙を避け、胴を叩き斬る。

 右隣で戦っていたパッドが、妖魔の血で滑って膝を着いた。

「大丈夫かっ?」

 声を掛けると、騎士は振り向いて笑って頷く。

 が、気が付くと台座近くで戦っているシェイラも、息が上がり始めている。

 これ以上、迷っていてはみんな殺られる。

 上の階へ逃れる手もあるが、そうすれば下へ行ったクレメントを助ける事は不可能だ。

 何よりも、彼にもしものことがあったら、きっと、自分は自分を許せなくなる。

 ジェイスは決心した。

「ニーナミーナっ!」

 彼は左の壁の方で戦っていたイリヤの神官を呼んだ。

「なにっ?」

「『勇者の声』を唱えてくれっ。南西の通路へ突っ込むっ!」

 ジェイスの言葉に、一瞬ニーナミーナは何か言い掛ける。が、大きく頷いた。

「判ったっ! ——始めるわよっ!」

 それは、朗々とした歌声だった。

 戦士として鍛えられた彼女の肉体は、歌曲の歌手さながらの声を大きく反響させ、この階一杯にその歌声が響く。

 高く低く流れる旋律はジェイス達の中に勇気を奮い起こし、逆に妖魔達はその音に怯え始める。

 ライカンスロープすら、歌が始まると同時に動きを止めた。

 それを見計らって、シェイラが火球を三発、妖魔の群れに投げ込む。

 火に焼かれ、また爆風に飛ばされた仲間を見て、ボガードもユガーも恐れをなして通路へと下がる。

 ジェイスはランダス王の大剣を高々と振り上げた。

「俺に力を貸してくれっ! 歴代の王よっ!イリヤ神よっ!」

 彼の気迫に呼応するように、柄に嵌った魔法石が輝き出す。

「行くぜっ!」

 ジェイスは振り上げた剣を前へ突き出すと、妖魔の群れへ向かって突進した。

ちょっとかっこいいぞジェイス・・・

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