表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第十章 地下迷宮
126/153

14

 短い通路を、中央の部屋へと戻る。と、部屋の床が消えていた。

「おっわっ!」

 先頭を歩いていたジェイスは、危うく通路から足を出しそうになって引っ込める。

 床面の無くなった部屋に、光の魔法陣と台座が浮いている。下方を覗くと、下の部屋が魔法文字の間から切れ切れに見えた。

 どう考えても、足場が無い。

「どーすんだよこれっ? 階段のある場所へ行かれねえぞっ」

「困りましたねえ」

 苦笑するクレメントに、ジェイスは脱力する。

「って、それだけかよ……」

「にっちもさっちもね。水晶球、止められないの?」

 シェイラの冷静な意見に、クレメントは首を振った。

「無理でしょう。一度発動してしまったら、余程の魔力でないと止まらない仕組みです。恐らく、ここが発動していた時にそれらを全て止めたのは、神々の力だったと思います」

 大いなる神力に匹敵する魔力でしか、この地下迷宮の仕組みは止められない。

 それが判っていて、何故クレメントは最後までアーカイエスに付き合おうとしているのか。

 ジェイスは、本気で頭に来た。

「ちょっと来いっ」

 クレメントの腕を掴むと、通路の奥へと引っ張る。

「危ねえのが判ってて、どうしてみんなに相談しない? 勝手に一人で突っ走っちまいやがって……。ニーナミーナやパッドまで危険に曝す気か?」

 詰られて、王太子は銀色の目を見開く。

「それは……」

「あんたはどう思ってっか知らねえが、シェイラも、ニーナミーナも……、そっ、それにっ、俺だって、あんたを仲間だと思ってんだぞ? それを、何にも言わねえでっ」

「済みません」

 クレメントは、目を伏せた。

「失念していた訳ではありません。僕の悪い癖です、どうしても他人が信用出来なくて。それでつい、一人で何でも決めて動こうとしてしまうのです」

「……判って、たけどよ」

「でも絶対に、皆さんを危険にはしません。それは大丈夫。ちゃんと考えていますから……」

 ジェイスは苛立って、掴んだクレメントの、男にしては細い腕を振り回した。

「そーじゃなくってっ! 話せって言ってんだよっ! 自分だけで抱え込むなってっ!」

 好きな相手の思っていることは、何でも知りたいし、多少無茶なことでも受け止めてやりたい。

「俺らはあんたに庇われたい訳じゃねえっ。一緒に何とかしたいってんだよっ」

「ジェイス……」

 銀の瞳が潤む。クレメントが何か言おうと口を開き掛けた時。

「ジェイスっ、クレメントっ!」

 通路の先からシェイラが二人を呼んだ。

 急いでそちらに向かう。

「あっちっ!」

 シェイラは、反対側、南の部屋の方を指差した。

 そこにはアーカイエスとララが立っている。

「何だよ、あっちも終わって——」

「違うっ、足元よっ」

「え?」

 目線を下げたジェイスに、アーカイエスの、例の人を小馬鹿にしたような声が掛かった。

「何を見ている? さっさと階下へ移動したらどうだ」

 魔導師は、灰色の外套を翻すとララを促して光の魔法陣の上を歩き出した。

「……乗れるんだ」

「そのようですね」

「なあによ、悩む事無かったんじゃないっ。馬鹿みたい」

 言うなりシェイラはぽんっ、と魔法陣の上に片足を乗せた。

「全然、大丈夫」

 彼女はにやりと笑うと、さっさと東の通路へと歩いて行く。

「ほんと、俺らアホだわ……」

 言ちて、ジェイスも紋様に足を乗せた。

ジェイス、ほんとアホです(汗)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ