表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第十章 地下迷宮
125/153

13

 長身の魔導師は目を閉じると、小声で静かに魔法陣の文字の詠唱を始める。

 次第に、彼の身体から薄紫色の光が溢れ出し、それが魔法陣全体に移って行く。

 床面の円の中の文字、そして壁の文字、更に天井の円の文字が、同じ紫の光を発し始める。

 アーカイエスが長い詠唱を終えた時。

 部屋中に描かれた全ての文字から光が発し、それが宙に浮かび上がった。まるで光の篭のような立体の魔法陣に、女性達は感歎の声を上げる。

「きっれーいっ」

「幻想的ね」

「素敵……」

「見掛けだけはな」

 浮かれている彼女達を宥めるジェイスの言葉は、だが六つの冷ややかな眼差しに否定された。

 アーカイエスが魔法陣から出て、一同は中央の部屋へと戻った。

「うおっ!」

「ひゃあっ、すっごいっ!」

 光の立体魔法陣は、中央の部屋にも出来上がっていた。それは開いた天井から高く上がり、丁度八つの小塔の水晶がある辺りで上部が止まっていた。

「これは……」

 皆が一斉に巨大な篭を見上げる中、クレメントは不安な声で呟く。

「次は、水晶球だな」

 アーカイエスは、巨大な魔法陣に見蕩れるジェイス達を尻目に、さっさと南の部屋へと向かう。

 彼が動いたのに気付いたララが、その後を追った。

「クレメント?」

 黒い魔導師が動いたのに、天井を睨んだまま動こうとしない王太子に、ジェイスは声を掛けた。

「北側の部屋へ行くか?」

「……ええ。そうですね。行きましょう」

 硬い表情で答えた彼の肩を、ジェイスは掴む。

「何か不安があるんなら言えよ?」

 一瞬、クレメントは怯えたような表情でジェイスを見上げる。が、すぐに薄い笑みを作った。

「大丈夫です。ご心配お掛けしました」

「あのなあ……」

「行きましょう。アーカイエスはもう、南の部屋へ入ったのでしょう?」

 クレメントが歩き出す。心中を中々話してくれない王太子にジェイスは溜め息をつくと、その後に従った。

「あ、私とパッドはロッドの部屋へ行くわっ」

 ニーナミーナが言った。

「何人もで行ってもしょーがないし」

「そうですね。ではそこで待っていて下さい」

 クレメントが笑顔で返し、イリヤの神官は手を挙げて了承した。

 南の部屋へ入ると、ニーナミーナが言っていた通り、中央に台座があり水晶球が乗っていた。

 クレメントは、ゆっくりと台座に近付く。

 ジェイスは、彼の細い背を見詰めながら、隣に立ったシェイラに囁いた。

「何が起きると思うよ?」

「……判らないわ。でも多分、いいことじゃないわね」

「俺も、そう思うんだよなあ。けどクレメントは止めるって言わねえだろうし」

「そう、ね。意地でもこの迷宮の全てを突き止めるでしょうね」

 クレメントが、水晶球に手を翳した。階上のものと同じく、球は彼の魔力に反応しすぐに光り始める。

 一度大きく輝き、それから安定した光を見届けて、王太子は台座から離れる。

 入り口で待っていたジェイスとシェイラに、彼は笑い掛けた。

「行きましょう」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ