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地下迷宮の女神  作者: 林来栖
第十章 地下迷宮
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8

「ところで、ねえ、ララ」

 ニーナミーナはシェイラにお茶を渡して、後ろの二人を振り返る。

「あんたとアーカイエスって、どういう関係?」

 唐突な質問に、ファーレンの巫女である少女はどきまぎする。

「どういう、って……」

「だって不思議じゃない? 魔導師と巫女なんて。神官と巫女ならまだ分かるけど」

「そう言えばそうね」シェイラも口を挟む。

「姻戚、とか?」

 ノルン・アルフルの血を濃く引くアーカイエスの黒い肌と、ララの雪のような白い肌とは違い過ぎる。血の繋がりはないだろう、と踏んで、シェイラは少女の顔を覗いた。

「あ……、いいえ。……アーカイエス様は、私の恩人なんです」

「恩人?」

 尋ねた年上の女二人は、同時に目を丸くする。

「はい。私、孤児で……。ニーナミーナさんが先程、ランダスの冬の厳しさのお話をされましたけど、スピルランドの冬も同じようなんです。

 私も、ニーナミーナさんと同じに、厳しい冬に両親を亡くしました。食べ物も無くなった村で、ただ死を待つばかりだった私を助けて下さったのが、偶然近くを通り掛ったアーカイエス様でした。アーカイエス様は、私と生き残っていた村の何人かの子供達を一緒に王都のファーレン神殿まで連れて行って下さって……。でも、生き残ったのは私だけでした。

 他の子供達は、それまでの飢えで身体が弱り切っていて、神殿に着いてから次々と死にました。

 ……私が巫女になったのも、幼い命を失った友達と両親のためでした。でも、今は……」

 言い掛けて、ララはアーカイエスを見る。

 黒い魔導師は、少女の物言いたげな黒い瞳をじっと見返した。

「そっかー。そーだったんだー」

 ニーナミーナは頷くと、茶器を脇に置いた。

「さっきも言ったけど、私は亡くなった神官様が居なかったら死んでた。ララもおんなじだったんだ。……辛かったね」

「……いいえ」

 少女は、今にも泣き出しそうな表情で無理に笑顔を作る。

 シェイラは、切なくなってそっと顔を俯けた。

「ほんと、大陸北部の国は大変よね……」

 彼女の出身国フィアスは比較的温暖な気候で、真冬でも雪は少ない。

 大雪で村が全滅するような事は無いが、森林が多いため妖魔が出る率が高い。従って、村や町は常にボガードやユガーの襲撃に備えている。

 そのため、傭兵の雇用率が大陸一高い。

 没落した貴族の娘のシェイラが何とか食べて行けたのも、フィアスのそういった国内事情に拠る所が大きい。

「……俺はヴィード生まれだから、北部の豪雪の経験は無いが。何処の国にも多かれ少なかれ厳しい部分はあるとは言っても、やっぱ辛えよなあ」

 しんみりと言うジェイスに、パッドが頷く。

「僕も王都出身です。ですから、ニーナミーナの話を聞いた時には、心底驚きました。同じ国内で、そんな厳しい所があるなんて……」

 束の間、一同の間に重い雰囲気が流れる。

 破ったのはニーナミーナだった。

「やっだもうっ! みんなそんな顔しないでってっ。あたしにしたってララにしたって、今は元気なんだからっ!」

 ねっ? と女性神官に同意を求められた巫女は、「はい」と淡い笑みを浮かべる。

ほんと、元気ですニーナミーナ・・・

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